名もなき毒 の商品レビュー
眠れない夜に読んだ、というより、読み始めたら眠れなくなった。冬休みまで待つべきだった・・・朝、胸焼けがした。 気の抜けた表紙を全力で裏切る、強烈な毒気。 手の中にあるものに幸せを感じられる人の目には見えない毒が、人と人の間には漂ってる。 一人よがりな怒りを育てて、正当性をうたっ...
眠れない夜に読んだ、というより、読み始めたら眠れなくなった。冬休みまで待つべきだった・・・朝、胸焼けがした。 気の抜けた表紙を全力で裏切る、強烈な毒気。 手の中にあるものに幸せを感じられる人の目には見えない毒が、人と人の間には漂ってる。 一人よがりな怒りを育てて、正当性をうたって毒を撒き散らす人の姿が色んな形で目に付く最近(時代的な意味での「最近」ではなく、私の意識の成長に伴った「最近」)、「こちらに責任はなかっただろうか?」とまじめな人は考える。 その目線は確かに必要で、でもどこかで打ち切るべきだと私は思う。相手が目線を交換してくれる状態にない限り、一方的な問いかけにしかならないから。 自分の中で毒の芽が頭を出しそうになったら、早めに感知する自戒の目線が強化された気はします。毒出す時って、なぜか自分で「吐く権利がある」と思ってることが多いからなぁ。 あと、本作のトラブルメーカーは分かりやすく爆発的に毒を吐いていて、その威力も確かに怖いけれど、私は、もっと周到にうまく毒を吐ける人々のほうが怖いかな。 宮部作品は10年ぶりぐらいでしたが、読まなくなった理由を思いだしました。 話の終わりにご都合主義的に用意される「希望の光」を、当時の私は「うさんくさい」と感じたんだった。そんなに綺麗に終わらないでしょう実際、と。 こんなに「人の毒気」を見つめてきた人が、それでも敢えて希望を差し込む勇気の意味を、当時の私はあまり考えなかったんだろう。 そういうわけで宮部作品へのアレルギーは克服されたような気はしますが、本作の前作らしい「誰か」を読む気にはあまりならない。本作の題材は好みだったけれど、主人公含め設定に特段惹かれるものがないのです。薄くて2時間ドラマみたい。 これ読みながら、「上から目線の構図」の内容を連想しました。
Posted by
大筋で、二つの事件が描かれている。一つは個人的なトラブルである、アルバイト社員の対応の問題。もう一つは、社会を賑わす無差別毒殺事件。 この二つ、どちらも動機は違うし背景も違うけど、根っこには同じ問題が横たわっている。それが名もなき毒の意味である。 何より、登場人物達の息づかい...
大筋で、二つの事件が描かれている。一つは個人的なトラブルである、アルバイト社員の対応の問題。もう一つは、社会を賑わす無差別毒殺事件。 この二つ、どちらも動機は違うし背景も違うけど、根っこには同じ問題が横たわっている。それが名もなき毒の意味である。 何より、登場人物達の息づかいまで感じられそうなリアルさとフィクションのバランスが宮部みゆきらしくて、楽しめた。
Posted by
今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く吉川英治文学賞受...
今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く吉川英治文学賞受賞作。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
2011/12/6 Amazonより届く。 2020/11/19〜11/23 「誰か」に続く、杉村三郎シリーズの第2弾。杉村が勤める今多コンツェルンの社内報編集部はトラブルメーカーの原田いずみにひっっかき回される。また杉村の周りで連続毒殺事件も発生。二つの事件が複雑に絡み合い、宮部さんらしいキャラの立った登場人物たちが「名もなき毒」に振り回される。やっぱり、上手いなぁ。シリーズ第3作にも期待。
Posted by