名もなき毒 の商品レビュー
シリーズ2作目。起こる事件はシリアスでも主人公の杉村をはじめとしたキャラ達が心をなごませる。 杉村の去就はどうなるんだろう、と彼の行く先を見守れる のがシリーズもののよいところ。 自分はもっとできる、もっといい生活を送れるはず、という自己の理想像と、突きつけられる現実の間のな...
シリーズ2作目。起こる事件はシリアスでも主人公の杉村をはじめとしたキャラ達が心をなごませる。 杉村の去就はどうなるんだろう、と彼の行く先を見守れる のがシリーズもののよいところ。 自分はもっとできる、もっといい生活を送れるはず、という自己の理想像と、突きつけられる現実の間のなかで葛藤する現代人が成れの果てに行き着いてしまうと原田いずみになるのかな。
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おもしろく、先へ先へと読んだけど、長かった! この本のキーパーソンである「原田いずみ」。 トラブルっていうより、事件を起こしまくるんだけど、 ここまでくるともはや「かわいそうな人」。 (もし、身近にこんな人がいたらそんなぬるいこと言えないけど。) 原田が杉村ファミリーに嫉妬する...
おもしろく、先へ先へと読んだけど、長かった! この本のキーパーソンである「原田いずみ」。 トラブルっていうより、事件を起こしまくるんだけど、 ここまでくるともはや「かわいそうな人」。 (もし、身近にこんな人がいたらそんなぬるいこと言えないけど。) 原田が杉村ファミリーに嫉妬する気持ちも、まあ誰しも少しはあるだろう。 杉村ファミリーは、老後2000万とか考える必要もないだろうな~とかね。 そんな、私の中の「毒」も自覚しながら読みました。 人間の中には、みんな名もなき毒を持っている。 「名もなき毒」って、すごくしっくりくる表現でね。 生きていると、人の毒にあたることも、自分の毒を感じることもたくさんある。 これは杉村三郎の物語だけど、 他の登場人物の視点で見たら、また別の話になるんだろう。 毒殺事件の犯人が、「少しのズルをすることができなくて、大きな罪を犯した」という理不尽さには、やるせない、悲しい気持ちになりました。 北見さんは、きっとそんなことの連続に疲弊してしまって、警察を辞めたのかな・・・。 私も、自分の仕事についてむなしさや悲しさを感じることが多いから、北見さんが警察を辞めたエピソードのところは、ぐっと、じーんときた。 実際、色々考えすぎるとしんどくなるから、思考停止して生きて行かなきゃいけないときもある。 だから私にとっては、北見さんのような生き方はファンタジーであり、物語の中の英雄のようにも感じた。
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このページ数を一気に読ませる力はさすがです。今回はハウスシックや土壌汚染など自分でかなり勉強した話題もありましたが、土壌については売主にそれほどの負担がかかるとは知らず驚かされました。いろいろな人が出てきましたが基本みないい人で、起こってしまったことや結果を考えるといたたまれない...
このページ数を一気に読ませる力はさすがです。今回はハウスシックや土壌汚染など自分でかなり勉強した話題もありましたが、土壌については売主にそれほどの負担がかかるとは知らず驚かされました。いろいろな人が出てきましたが基本みないい人で、起こってしまったことや結果を考えるといたたまれないです。そんな中、原田いずみだけは全く理解できず本当に恐ろしかった。何か彼女をこうした理由があったのだと思いたいです。サンダルでタクシーを追いかけながらの社長の叫び、美智香のすべてを飛び越えた犯人への言葉がとても印象的でした。
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再読。原田いずみは本当に恐ろしい。こんな人、正直付き合ってあげられる優しさは私にはない。ほんと家族が殺してしまってもおかしくないと思う。それでも頭を下げるお父さんの気の毒なこと。ほんとに杉村は優しい。お兄さんの結婚を壊した話は読むだけで辛かった。そして外立君は切なかった。ばあちゃんのことは心配するなと叫んだ社長には涙が出た。ほんと、この人もいい人だ。外立君は孤独ではない。それでも他人がやれることには限界がある。杉村の母親が電話をかけてきたのも泣けた。巷で騒いでいる無差別殺人事件とか、あの自殺した人とかも原田みたいな気持ちだったんだろうか。自分だけが不幸であると思っていたのだろうか。ほんと毒があるのは人間なのだ。
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毒はその時点で人を死に追いやることもあるし、長い時間をかけて蓄積していくものでもある。 解毒されても、ふとその恐怖や痛みを思い出すこともある…。 意識していなくても私たちは日々毒に触れながら生活している。 そういうことを考え出したらゾワゾワと嫌な気分になってきた。 でも、作品自体...
毒はその時点で人を死に追いやることもあるし、長い時間をかけて蓄積していくものでもある。 解毒されても、ふとその恐怖や痛みを思い出すこともある…。 意識していなくても私たちは日々毒に触れながら生活している。 そういうことを考え出したらゾワゾワと嫌な気分になってきた。 でも、作品自体は前作に続き面白い!
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前作よりも伏線がはっきりしていたような気がして先が予測できてしまったのが少しだけ残念だが、それでも大変面白かった。 杉村三郎シリーズ2作目にして、中毒になりそうなくらい、素敵だなぁと実感している。厚めの本だがするすると読めてしまう。続編への欲求が止まらない。 残された家に杉村さんがごめんよと呟くシーンが、個人的には1番心温まった。お人好しで良い人すぎる。 彼と同じくらい秋山さんも魅力的な人物で、ぜひ今後も登場してほしいと期待してしまう。 とんとんと死人がでた今作で、幸せとはなにか、毒とはなにか、解のない問いに悩んでみた。 "人は皆、幸せの最中にあるよりも、これから幸せがやってくるという確信と期待に満ちたひと時をこそ望むものではあるまいか。" 漠然と抱いている深層心理をこうやって文字に起こされると、染みるなぁ。
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テレビドラマとして放映されていた際、ドラマのタイトルとしては『名もなき毒』だけれど、内容は前作『誰か』を前半、本作を後半のお話としたもの。 小泉孝太郎さんの穏やかな雰囲気がよく合っている。 ***** 今多コンツェルン広報室に勤めている杉村三郎。 彼はいたって平凡な人物だが、彼の妻は今多コンツェルン会長の娘であり、結婚と同時にこの職場に就くことになった。 会長の娘婿ということもあり、社内での扱いは特殊ではあったが、三郎なりに広報室で頑張っている。 そんな中、アルバイトとして雇った女性がとんでもないトラブルメーカーであり、彼はその事後処理に追われる。 そして、巷では連続無差別毒殺事件が起こっており、ふとしたことをきっかけに彼は事件の核に迫ってゆくのだ が…。 ***** 主人公の人柄のおかげとところどころコミカルな雰囲気もあり、読みやすい。 そして、分厚くてもしっかりのめり込んで読み切ってしまう。 今回は2つの別々の事件がそれぞれ膨らんでいき、終盤へ向けてぐぐっと収束する。 会社の中でトラブルを起こす原田さん、怖い。 どうやってもお互い円満に納得する術が思いつかない…こういうケースが一番胃が痛いかもしれない、同僚としては。 そして、もうひとつの事件。 美智香ちゃんも可愛い子なんだけれど、事件をきっかけに知り合う秋山さんとゴンちゃんが魅力的。 秋山さんは最初嫌な奴なんだろうかと思いきやぶっきらぼうながら頭の回転も速く、気配りもできる男気のある人でかっこいい。 ゴンちゃんは真っ直ぐで誰からも好かれるタイプの女の子。 この2人の関係も面白くて好きだなぁ。 事件の真相は少し辛い。 絶対絶対やっちゃいけないことなんだよ。 だけど、辛い。 でも、周囲の人間があったかくて、それが希望となってくれることを願ってしまう。 そして、今回の作品を機にいよいよ三郎が本格的に色々と足を突っ込むんだろうか?と次回作にも期待。
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2〜3年前に宮部みゆきの「誰かSomebody」を読んで、今年「希望荘」を読もうとしたら、これも杉村三郎が主人公の小説で、既に杉村三郎シリーズの4作目ということがわかりました。それなら2作目と3作目を先に読まなくてはと思って、2作目の「名もなき毒」を急遽買って一気に読み終えました...
2〜3年前に宮部みゆきの「誰かSomebody」を読んで、今年「希望荘」を読もうとしたら、これも杉村三郎が主人公の小説で、既に杉村三郎シリーズの4作目ということがわかりました。それなら2作目と3作目を先に読まなくてはと思って、2作目の「名もなき毒」を急遽買って一気に読み終えました。 今多コンツェルン会長の娘婿で社内報の編集が仕事だと言うのは変わってなく、事件に巻き込まれて探偵のように解決するというパターンも同じですが、事件の内容は色んな絡みがあって、前作よりだいぶスケールアップしています。 全く関連のない二つの事件に関わることになった杉村が、最終的には二つの事件を同時に解決することになる結末が用意されているとは凄い展開です。 一つは杉村の部下になるアルバイトの女性が起こす逆恨みの事件、もう一つは青酸カリによる連続殺人事件。両方の事件に複雑に絡んでいく経緯も面白い。 この2作目までは少なくとも、夫婦仲も問題なく、会社での仕事も問題なく、会長との関係も問題ない。奥さんがあまり丈夫でないようで、今回の事件に巻き込まれたストレスが少し気になるところはある。4作目では離婚して会社も退職しているらしいので、次の3作目「ペテロの葬列」では夫婦仲がどんな展開になるのかも楽しみの一つだ。
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今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。『誰か Somebody』から約一年後の出来事を...
今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。『誰か Somebody』から約一年後の出来事を描き、テレビドラマ化でも話題となった人気の杉村三郎シリーズ第二弾。人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く吉川英治文学賞受賞作。 毒というものが侵食されていく過程が描かれている。毒とは悪意に近いもののように思えるし、違うものなのかもしれない。ただ、侵食されてしまえば触れたくもないものになってしまいものだと思う。 次の機会では恐らく主人公の境遇も変わっているであろうことが予想される。 やはり、あの老探偵の影響は凄い。
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幸せになりたい、こんなはずではなかった、私はこんな人間じゃない。 〈こうあるべき〉、そういう毒に侵され苦しめられる。 現実は優しくはない。 しかし自分がナニモノにもなれなくとも、自分は自分であると認めてあげたい。 否定し、絶望することはない。 こんな毒に身を滅ぼすことはない。 ...
幸せになりたい、こんなはずではなかった、私はこんな人間じゃない。 〈こうあるべき〉、そういう毒に侵され苦しめられる。 現実は優しくはない。 しかし自分がナニモノにもなれなくとも、自分は自分であると認めてあげたい。 否定し、絶望することはない。 こんな毒に身を滅ぼすことはない。 美味しいご飯を食べたときに笑顔になる。 それだけで幸せになれるのだから、 どこかに希望はあるはずだ。そう信じて生きていきたい。 __________ 「究極の権力は、人を殺すことだ」 「君らにとって抗いようのない権力者だった。死ななかった、殺さなかったんだから違うという言い訳は通用しない。他人を意のままにしたという点では同じなのだから」 そうだ。我々はそういう人間を指して“権力者”と呼ぶ。 「禁忌を犯してふるわれる権力には、対抗する策がないんだ」 「私は、我々の内にある毒の名前を知りたい。誰か私に教えてほしい。我々が内包する毒の名前は何というのだ。」
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