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曠野より の商品レビュー

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2012/03/25
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中国・奉天で生まれ、4歳で引揚。九州の父の実家に身を寄せるも、落ち着く間もなく母の父母が住む新潟へ。そして北海道の石狩平野のど真ん中の集落で小学校に入学した著者。 引揚者そして父を亡くした母子家庭の刻印。でも同居していた農民の祖父から教えられた自然と人間の関わり方は、本当に読みすすめる毎に、こころをしみじみとさせる。 「爺さんは自分でにぎりめしを作って5時前には畑に向かった。畑には昼寝が出来るように小さな風通しのいい小屋があった。(中略)誰もやってこない畑の真ん中で土と話し、作物と話し、空や風と話しているような人だった。(中略)ぼくは祖父は大地に立つ影のような人物だと思った。ある時、爺さんがジャガイモの種子をいけるのを手伝ってみろと言われた。爺さんに認められた気持ちになって、一生懸命種イモをいけた。やがて、ぼくのイモに白い花が咲いた。飛び上がりたいほど嬉しかった」。 人間にとって記憶は、今を生きる糧になる。 幼少時代をこのような文章にできる人ってステキだ。読み終えるのが惜しいほどの名文だよ。

Posted byブクログ