スパイス、爆薬、医薬品 の商品レビュー
世界史(文明史)を化学物質に注目してみた一風変わった本。 世界史を大きく変動させたと思われる17の化学物質について化学構造式を使って読み解こうという試み。 取り上げられている物質はビタミンC,砂糖、ナイロン、ゴムなどといった一見すると地味なものが多いのだけれど、たしかにそれらの...
世界史(文明史)を化学物質に注目してみた一風変わった本。 世界史を大きく変動させたと思われる17の化学物質について化学構造式を使って読み解こうという試み。 取り上げられている物質はビタミンC,砂糖、ナイロン、ゴムなどといった一見すると地味なものが多いのだけれど、たしかにそれらの物質一般化する前と後では世界の状況は大きく変わったものが多いことに驚かされる。 それらの物質について化学構造式の説明を踏まえて歴史にどのような影響があったのかを考察している。 この化学構造式の説明が秀逸で、学生時代意味も分からずただ覚えるしかなかった構造式がこんなに魅力的に見えるとは想像もつかなかったです。 高校の授業でもこういうクロスオーバー的なものが主流になれば実になる知識となるんじゃないかなーと強く思う。 なぜ魔女には箒が付き物かというと、箒の柄に薬剤を塗って頭でない毛の生えた部分に(ry といった感じで雑学ネタも豊富。統一性はあるといえないけれど呼んでてとても面白い本でした。
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化学の本としても、読み物としてもなかなかよく出来ている。話のつながり具合がうまく、各章のボリュームもちょうどよい。いろんなレベルの人が読んでも、なるほど、と思える部分があると思う。
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化学式は出てくるが化学物質にまつわる歴史の本と言った方が良いか、17の化学物質は重なりながら次の章へと続いている。 出だしは①スパイス、胡椒のピペリン、唐辛子のカプサイシン、生姜のジンゲロンは似た様な骨格を持ちこれが辛さに共通するのではないかと言う。ちなみに辛みは痛覚で感じる。...
化学式は出てくるが化学物質にまつわる歴史の本と言った方が良いか、17の化学物質は重なりながら次の章へと続いている。 出だしは①スパイス、胡椒のピペリン、唐辛子のカプサイシン、生姜のジンゲロンは似た様な骨格を持ちこれが辛さに共通するのではないかと言う。ちなみに辛みは痛覚で感じる。クローブとナツメグを支配するためオランダはイギリスが支配するバンダ諸島のルン島をマンハッタンと交換する。そしてニューアムステルダムはニューヨークとなった。 スパイスへの探求が大航海時代の始まりならばそれを支えた化学物質は?②アスコルビン酸=ビタミンCである。イギリスのキャプテン・クックは記録に残る中では壊血病を克服した最初の船長だと紹介されている(明の鄭和の方が先だろう)。もしポルトガル人がビタミンCの効能を発見していたらポルトガル語が世界をしはいしていたかも。 ビタミンは③糖から合成される。サトウキビの栽培は奴隷制を伴いヨーロッパに莫大な利益をもたらした。糖がつながったものが④セルロースで綿の主成分である。紡績業が産業革命の原動力であった。セルロースを溶かす方法が見つかった後もう一度糸に戻すのがビスコースレーヨンでフィルムにしたのがセロファン、合成繊維ではなく天然繊維である。セルロースを硝酸にひたすとニトロセルロースができる。 ⑤火薬の発見は古い、硝酸塩、硫黄、炭を混ぜると黒色火薬ができるが紀元1000年頃までは配合は秘密にされていたようだ。ニトロセルロースの発見と同時期に硝酸と有機化合物の反応をさせる研究が進みニトログリセリンが発見された。ニトログリセリンは爆発しやすく扱いが難しい。珪藻土に吸わせると言うアイデア=ダイナマイトを見つけたのがノーベルだが本人は狭心症の治療薬としてのニトログリセリンは拒んだらしい。ダイナマイトは破壊力が強すぎ銃の火薬としては適さず新たな化合物としてピクリン酸とトリニトロトルエンが発見される。この二つはほぼ同じ骨格をしている。ニトロ化合物を作るための新たな合成法として空気中の酸素と窒素からアンモニアを作る方法が発明される。このアンモニアによる肥料の増産が農業の生産力を高めた。化学肥料の発見である。 ⑥シルクは天然のタンパク質からできているが人工のシルクを作る試みとしては爆薬の原料でもあるニトロセルロースが使われた。作ったのはパスツールの弟子シャルドネでカイコの病気の研究から模造したシャルドネシルクは元が爆薬だけに燃えやすくやがてレーヨンに取って代わられた。レーヨン製造から始まったデュポン人絹会社は次いでナイロンを作り出す。ナイロンとシルクは共にアミド結合でつながったポリマーである。 この後も紹介しきれないが最初のプラスチック原料⑦フェノールは外科手術用の殺菌剤にもなり⑧イソプレンは天然ゴムの原料で合成ゴムの製造法の研究がプラスチックを発展させる。爆薬の⑨ピクリン酸は染料になり染料化学は⑩アスピリンから始まる医薬品の基礎となる。他にもホルモンの研究から⑪ピル、⑫植物アルカロイドからの天然毒、⑬麻薬、オリーブオイルの成分で石けんの原料となる⑭オレイン酸、⑮塩、⑯塩素化合物、⑰マラリア特効薬の期ニーネとDDTとトリビア満載。
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化学と歴史は思いの外、関係が深い。 いくつもの大きな歴史の転換点に化学物質が関わってきた。 大航海時代に求められたスパイスの香料成分、航海とビタミンC、等々。 この本は、あえて化学式をきちんと示し、何がその機能を分けているのかを解説する。 エピソードとしてだけでも十分面白いけれど...
化学と歴史は思いの外、関係が深い。 いくつもの大きな歴史の転換点に化学物質が関わってきた。 大航海時代に求められたスパイスの香料成分、航海とビタミンC、等々。 この本は、あえて化学式をきちんと示し、何がその機能を分けているのかを解説する。 エピソードとしてだけでも十分面白いけれど、何故そうなのかを理解すれことでより深い理解が得られる。 登場する物質は有機化学系が中心だが、塩のような基本的な物質も取り上げられる。 興味深かったのは、染料の話。 その開発がやがて、医薬品の発達につながってゆくというという展開が面白かった。 化学と政治の関係を考察する材料にも事欠かない。
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あまり普段の生活で意識されることが無いが、化学は人類の生活の基盤を形作っている。この本で紹介されているのはごく一部でしかないが、化学によって見いだされた素材が無ければ現代の生活は全くと言って成り立たない。インターネットが世界を変えるなどと言ってみても、それは化学が人類の歴史に与え...
あまり普段の生活で意識されることが無いが、化学は人類の生活の基盤を形作っている。この本で紹介されているのはごく一部でしかないが、化学によって見いだされた素材が無ければ現代の生活は全くと言って成り立たない。インターネットが世界を変えるなどと言ってみても、それは化学が人類の歴史に与えた影響に比べたら、ほんの表層的なことにすぎない。そんなことをいくつかの事例とともにわからせてくれる本。
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・ノーベルは真に恐ろしい兵器こそ抑止力として、世界に平和をもたらすと固く信じていた。軍需品製造者でありながら、平和主義者であるという矛盾。 ・研究⇒発見⇒特許化⇒商品化 PCのない時代に凄いや‼と思うが、PCがない時代の方がはるかに長いのに、想像すらできない。これは退化なんじ...
・ノーベルは真に恐ろしい兵器こそ抑止力として、世界に平和をもたらすと固く信じていた。軍需品製造者でありながら、平和主義者であるという矛盾。 ・研究⇒発見⇒特許化⇒商品化 PCのない時代に凄いや‼と思うが、PCがない時代の方がはるかに長いのに、想像すらできない。これは退化なんじゃないか。 ・ペニシリンの化学構造が明らかになり、さらに合成に成功したのは、なんと1957年。今からわずか56年前。 ・化学の構造式というもっとも苦手なものが、まるで絵本の絵のように描かれている本を手に取ってしまった。しかし、構造式によって本質が明かされてゆく。それは今後の人類を救うことになるのは明白。 薬草やスパイス、爆薬などにより人口が変動し奴隷が作られ、戦争が起きてきた。 あとがきもよかった。
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ある化学物質がこんな歴史を作った・・・! この切り口は本当に面白かった。 新たな化学物質が生み出される度に様々な歴史も同時に生まれるんだなぁとしみじみ。作られる物質は時には環境への負の遺産になることもあるし、沢山の命を奪うこともある。でも、化学物質が悪いのではなくて、それを使用す...
ある化学物質がこんな歴史を作った・・・! この切り口は本当に面白かった。 新たな化学物質が生み出される度に様々な歴史も同時に生まれるんだなぁとしみじみ。作られる物質は時には環境への負の遺産になることもあるし、沢山の命を奪うこともある。でも、化学物質が悪いのではなくて、それを使用する人間の心が悪いのだと思う。そう感じました。化学者達の生き様に関するくだりも面白かった。 構造がそっくりでほんの少しだけ官能基が違う物質が、全く性質の異なる物質になることを構造式を交えて解りやすく解説してあった。 もしかすると理系じゃない人には取っつき難さを感じるかもしれない。けど、解説が詳しく書かれているので、専門用語がちんぷんかんぷん!みたいなことにはならないと思う。 私自身は理系だからかもしれないが、出てくる物質や反応過程の構造式が全部書いていたので、すっごく読みやすかった!
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人類の歴史は戦争は歴史。そのほとんどは資源の争奪が引き起こしている。スパイス、ゴム、ニコチン、モルヒネ、カフェイン、塩、砂糖。 戦争をしない化学物質の発見はいつになるのか?
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タイトルは「銃・病原菌・鉄」の二番煎じっぽいけど、全然違う。世界史の本と思いきや、完全に有機化学の入門書。簡単な構造式から説明していて手取り足取りに見えるけど、急に専門的なことを言い出して初心者を置き去りにしてくれるので油断ならない。
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歴史上で大きな役割を果たしたと思われる有機化合物を20種ほど選び,その発見や,歴史について簡単に触れた後,その物質の科学的特性を化学式を使って解説している. 前後の関連も意識して配列してあるが,基本的にはどの章も独立で興味のある章から読み始めるのがいいと思う.私にはとても面白いい...
歴史上で大きな役割を果たしたと思われる有機化合物を20種ほど選び,その発見や,歴史について簡単に触れた後,その物質の科学的特性を化学式を使って解説している. 前後の関連も意識して配列してあるが,基本的にはどの章も独立で興味のある章から読み始めるのがいいと思う.私にはとても面白いいくつかの章(例えば避妊薬をはじめとするステロイドを扱った11章など)と,あまり興味がわかない章が混在していた. 歴史の解説は概して軽めで,化学的な解説により重点がある.その物質自体の歴史(つまり,単離,構造決定,合成などの歴史)もふれられている.分子構造からくる物質の特性の解説が似たような構造や性質をもつ物質へ広がっていくのがとてもおもしろかった.
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