溝畑流・日本列島観光論 逆転こそNippon! の商品レビュー
大分トリニータの社長から観光庁長官に転身(平成27年現在は大阪観光局長)した異能の人物、溝畑宏氏による観光論。出版されたのが東日本大震災から間もない平成23年11月ということもあり、観光を通じての震災からの復興というテーマに多くのページが割かれている。 観光は災害等の二次被害を受...
大分トリニータの社長から観光庁長官に転身(平成27年現在は大阪観光局長)した異能の人物、溝畑宏氏による観光論。出版されたのが東日本大震災から間もない平成23年11月ということもあり、観光を通じての震災からの復興というテーマに多くのページが割かれている。 観光は災害等の二次被害を受けやすく危機管理が重要であるという指摘や、観光は第一次産業から第三次産業まであらゆる業種がからむ総合産業で非常に裾野が広いという指摘、観光庁の使命は営業がすべてという指摘、スポーツや文化と観光が融合したときの可能性の指摘、「旅行需要の平準化」のための休暇取得の分散化の提案など、観光政策を考えるうえで参考になる点が少なからずあった。また、著者の現場重視で常に前向きな姿勢にも感銘を受けた。 しかし、本書は全体的に、日本観光のポジティブな面に記述が偏りすぎで、現在、どのような課題があり、それをどう解決していくかという観点が乏しいように感じた。 また、著者が観光庁長官ということで仕方ない面はあるが、本書では、観光庁の役割ばかりで、地方自治体についての記述がほとんどないのも気になった。国としてのインバウンド促進策はともかく、基本的に、観光は地域固有の資源を活かすものであり、観光政策の主たる役割は観光庁ではなく地方自治体が担うべきだろう。
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