自殺12章 の商品レビュー
自殺していく人たちは、人生最期の瞬間に何を考え、誰を想い、何を目にして死んでいくのだろう。 日本で自殺者が3万人を超えた1998年から2009年までの間に、実際に起きた自殺報道をもとにフィクションを織り交ぜて書かれた12の短編集。 近年、自殺の報道といったら学生のいじ...
自殺していく人たちは、人生最期の瞬間に何を考え、誰を想い、何を目にして死んでいくのだろう。 日本で自殺者が3万人を超えた1998年から2009年までの間に、実際に起きた自殺報道をもとにフィクションを織り交ぜて書かれた12の短編集。 近年、自殺の報道といったら学生のいじめによるものがよく取り上げられるが、この小説の自殺者たちは、 ネット心中、好きな歌手の解散、 鬱、ひきこもり、担任によるいじめ、 妻に先立たれた夫の後追い、 事故によって恋人を失った人の後追い、 AV女優、倒産、死刑囚、 高齢者同士の介護疲れ、産後鬱 によって自ら生涯を終わらせています。 作者の早坂さんは、新聞報道をもとに、実際の事故現場に行って取材をして彼らの想いを想像したそうです。 私は自殺と聞くと、耐えられない悩みや苦しみをまといながら死んでいくのかと思うが、 早坂さんが描く自殺者のうち何人かは、死ぬ瞬間を「解放」という言葉であらわしている。 どきっとしてしまった。 見つけてはいけない言葉を見つけてしまったような気がした。 自殺=解放、という心地の良い言葉を、私や私の大切な人たちが見つけぬよう、自らも選ばぬよう、胸の奥で常に強く願って生きていかねば、思った。
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“死は隠される。自死であればなおさらに。” この作品は、わが国で自殺者が三万人を超えた一九九八年から二〇〇九年の間に報道された出来事を題材にフィクション化したものです。-巻末より 枡野浩一さんのツイッターにこの本に関する情報が流れていたことから気になった作品。 ノンフィクションをフィクションで包んで紡がれた12の短編集。 共通項は“自殺”。 普段なら自分から選ばないタイプの内容で、読み始めようとしたその時になって「私に読めるかな…」と不安になったけれど、1ページの下方に解説が入りそうなくらい余白を設けてあり、ひとつひとつのお話の文章量自体は多くなかったので読むことができた。 このテーマで上から下までみっちり字が詰まっていたらきっと途中で耐えられなくなっただろう。 個人名は“創作”し、場所なども少々変えてあるらしいが、おおよそは本当のこと…。 自殺を自らの意志で、また、偶発的に選んだ人々。 自分の考えや経験を顧みて、読み終わってからしばらくへこむ。 私にとって、“自殺”は悔しいものだから。 “自殺”を肯定したり否定したりするものではない。 この選択をする人々が増え続けてしまっている現代だからこそ生まれた作品であり、著者が捧げた“レクイエム”。 ほとんどの人々が3万人の死を数字としてしか知ることも感じることもできない、そんなことを改めて感じた。
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図書館で借りました。帯の「年間3万人へのレクイエム」というのに惹かれて。人は、どうして自殺という道を選んでしまうんだろう。自分を殺す。年間に、とても多くの人たちが、自分の知らないところで、静かに、人生を終わらせていることを知ったとき、何とも言えない気持ちになりました。この作者のあ...
図書館で借りました。帯の「年間3万人へのレクイエム」というのに惹かれて。人は、どうして自殺という道を選んでしまうんだろう。自分を殺す。年間に、とても多くの人たちが、自分の知らないところで、静かに、人生を終わらせていることを知ったとき、何とも言えない気持ちになりました。この作者のあとがきに、見えない人災、とあって、ああそのとおりだなあと。しっくりきてしまいました。いろんなことを考えた、一冊。
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「自殺」がテーマの短編集。報道を元に創作されたフィクションなので、自殺者本人の葛藤など深い部分にはあえて踏み込まかったのだろう。小説というよりも、言葉の空気を汲む作品だと感じた。なお、この本の印税の一部は自死遺族の会に寄付するとのこと。
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