長い終わりが始まる の商品レビュー
即物的な日常を生きる精神の在りようとして、「長い終わり」は純粋さと同型だ。「長い終わり」という純粋さは、決して終わらない。それは、自らの純粋性それ自体をも否定しうるほどの徹底さによって、逆説的に「長い終わり」を終わらせる機制を自らの内に欠いているからだ。それが終わるとすれば、その...
即物的な日常を生きる精神の在りようとして、「長い終わり」は純粋さと同型だ。「長い終わり」という純粋さは、決して終わらない。それは、自らの純粋性それ自体をも否定しうるほどの徹底さによって、逆説的に「長い終わり」を終わらせる機制を自らの内に欠いているからだ。それが終わるとすれば、その純粋さが否定によって押し出した外部からの圧力によって終焉を迎えるしかない。その時、純粋さを生きてきたその人間の美的感性そのものが消滅する。 ところで、「長い終わり」という純粋さが、その実、外部に対して自らの「弱さ」が精神に取らせる防衛的構えでないと、証明することはできるだろうか。できないだろう。この問いは、純粋さの内に於いては決定不可能な命題であり、それを決定する機制も自らの内に欠いているのであるからして。 純粋さの強張った脆さが、淡々とした筆致の中に描き出されている。 「人間も[水と]同じようなもので、この街に溢れる男女は、それぞれの肌が区別され、各々歩き回っているが、ひとりの指先がどこまでなのか実は曖昧であり、この人形[ひとがた]はいっときの仮の姿でしかなく、誰かと触り合えばすぐに境目が溶けてしまい、自分というものを意識するのが難しくなるのではないか・・・。自分の体がどこまで伸びるのかが分からない」 「セックスって、いつが終わりなのか、分からない。小笠原が田中のことを好きな間は、日々を越えて続いていく行為なのだろうか。まだ終わっていない、と小笠原は感じる」 「男の生理感覚に偏って成立しているセックス文化は、おかしい。射精でなんか、セックスは終わらない」 なお、批評家による巻末の解説は、蛇足の典型。
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短い文の中に、たまにきらりとひかるフレーズがあってはっとさせられた。主人公の小笠原にちょっとだけ共感する。
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ビレヴァンに置いてあって、ナオコーラだからと、手に取った本。 期待を裏切らず。 「抑制のない会話は、休符のない音楽と、同じだ」 素敵な表現です。
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ちょっと前の自分だったらいろいろ共感したかも。。 残念ながら今はちょっと外向きな自分なので。。
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これは!ナオコーラさんの中でもかなり好きかもしれない。私と小笠原のリンク率がすごい。 いや、すいません。吹奏楽とかやってません。 長い終わりの終わりがすごく良い。
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うまく言葉にできない、もどかしさを感じる。ちょっと淋しかったり。でも気にしないふりしたり。 確立してるつもりでいたあの頃。そして今現在。後から振り返ればいつまでも「まだまだ」なんだろうなぁ。
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なんてことはない小説だけど、これだけ抵抗なく体に染みるのは、やっぱり彼女のお話が好きなんだなと思ったりする。
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この舞台になってる場所を知っていて、そればっかり気になってしまった。 この主人公のひねくれ感、なんかわかるような気がする。どうせひねくれてるならこういう風に素直にさらけ出せる人間になりたい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ネットで購入して、 カバーもつけてもらったまま読んでいたので 読み終わった後にカバーを外して 初めて表紙を見ました。 「あぁ」とぎゅーっとされた気分。 切ない、 苦しい、 ただただ好きなだけ。 なのに 猛烈にひとりぼっち。 求めてやまないのに。 それだけのに。 強烈にさみしい。 大学のマンドリンサークルで 音楽に奉げようとする小笠原。 小笠原が恋するのは ぼさぼさで決してカッコ良くない指揮者の田中。 遊びとか自由とか就職とか すべてが曖昧な集まりになるサークル。 ともだち、恋、音楽、 どこまで本気で それをどこまで伝えていいのか。 小笠原は 自分の音楽を疑わないし、 誠実にいようとするからこそ容赦なくぶつけてしまうため 誤解や相手を傷つけ うまく溶け込んでいくことができない。 私は私、と思いながらも ポジションや状況にこだわったり 自分自身の評価を気にしていたり。 振り切れない。 「でも、左右非対称って、セクシーなんだよ」 大好きな田中もずるいよ。 いっかい引っ叩きたい。 ただ、私も似たような経験があるだけに 田中に投げかける小笠原の疑問符はもう、他人事ぢゃない。苦笑 好きぢゃないのに、 勘違いでセックスするな、ボケ!怒 はー、もう。苦笑 激しい抑揚もないし、 日常もバッサバッサと進んでいくんだけど このグレーな感じが好き。 終わりの予感。 「でも、なかなか終わらないから」 「これはまだ、終わりが始まったばかりなんだよ」
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大学時代の青春な雰囲気のお話を期待して買いましたが、あんまり好きになれませんでした。 全体的に、登場人物の性格や心理的描写が雑。 一貫性があまりなく、よくつかみきれないまま終わりました。 そこが著者の持ち味なのだとは思いますが、私には合わなかったようです。
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