部屋 の商品レビュー
かわいい5歳の子のモノローグは、ママとの会話で始まる。 ごくごく普通の仲のよい親子に見える2人が、実は非常に特殊な状況に置かれていることに気がつくのに、さほど時間は掛からない。 幼児の語りは、つたなく、時に背伸びした表現が混じり、微笑ましい。 ある意味、たどたどしいその語り口から...
かわいい5歳の子のモノローグは、ママとの会話で始まる。 ごくごく普通の仲のよい親子に見える2人が、実は非常に特殊な状況に置かれていることに気がつくのに、さほど時間は掛からない。 幼児の語りは、つたなく、時に背伸びした表現が混じり、微笑ましい。 ある意味、たどたどしいその語り口から、親子の置かれた状況や、母親の苛立ち・焦りがあぶり出されていくさまは、ただ驚嘆するしかなく、作者の卓抜した力量を感じさせて余りある。 やがて最初の閉塞した状況は打破され、物語は次の舞台に移る。 第2幕は、おとぎ話のその後を読むようでもある。 囚われの身であったお姫さまは、助け出されたのだが、そのまま幸せに暮らす(happily ever after)わけではないのである。 おとぎ話の中ならば、善は善、悪は悪と割り切れる。が、現実はそれほどわかりやすくない。そもそもが、この物語の姫(=母親)の王子様(=幼子)は、訣別したはずの怪物にゆかりのものなのだ。 物語の発端は、やや特異な、誰もが経験するわけではない犯罪なのだが、徐々に浮き彫りにされていくのは、立場を異にする者同士の行き違いである。始まりが何であれ、人と人がどのようにすれ違うのか、どのようにそれぞれの思惑に齟齬をきたすのかが、普遍的に描かれていると言ってもよい。 それらの顛末が、純粋培養の幼子の目を通して、残酷なまでに鮮やかにすくい取られていく。 誰の思いも無理はない。誰も悪意があるわけでもない。それが確かにすれ違っていく。 それを描き出していくのは、作者の恐ろしいほどの技の冴えだ。 480ページのボリュームは、なんとも重く、長い。この苦く、痛ましい物語の中盤は、読者にも苦痛を強いる。おそらくは、作者の技量がぬきんでているだけに、余計。個人的には、正直、読み通せないかと思った。 しかし、ゴールしてみれば、これは希望と再生の物語でもあったことに気付く。 希望とは、魔法のように、夢のように、何の曇りもなく一瞬で訪れるものではない。困難でも、一歩ずつ進み続けたその先に、希望はある。いや、困難の中、一歩ずつ進み続けること自体が、希望そのものなのだ。 5歳の幼子の前にも、26歳の若い母の前にも、50代の祖母の前にも、その連れ合いの前にも、何も描かれていない未来は、ある。互いを思う気持ちも、確かにある。 しんどいが、読み通す価値のある傑作である。 *訳者さんにも敬意を払いたい。 *<ぎりじい>がよかった。
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5歳の男の子が語る日常。たどたどしく語られるそれは、母と密着した生活に満ち足りていることがうかがえるのに、読んでいる私は所々で、何か不穏を感じる。その理由がだんだん判っていくほどに、満ち足りた生活の、恐ろしい背景に背筋が寒くなる。 異常な生活であっても、それしか知らないのであれば...
5歳の男の子が語る日常。たどたどしく語られるそれは、母と密着した生活に満ち足りていることがうかがえるのに、読んでいる私は所々で、何か不穏を感じる。その理由がだんだん判っていくほどに、満ち足りた生活の、恐ろしい背景に背筋が寒くなる。 異常な生活であっても、それしか知らないのであれば、幸せを感じられるのだ。母にとってはおぞましい暮らしであっても。 幸せを感じていたその生活から、人が本来の日常と感じる生活に変わっても、彼はなかなかそれを幸せとは感じられない。変化は不安を呼ぶから。 人は「部屋」での生活を哀れむかもしれないけれど、そこで感じていた幸せは揺るがない。ただ、もっと大きい幸せがあるだけだ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
恐ろしい話ですよ 何の罪もない子がさらわれて、人生の何年間を監禁されて 生かされるとか 逃げ出すシーンは本当に手に汗握った… あとはまあグダグダと続いてしまって。 フィクションですよねこれ ジャックとお母さんが健やかに育ってくれますように
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監禁された女性が子供を産んだら… 母と子供の"部屋"での生活、脱出、その後社会に適応できるのか… すべて5歳の子供の視点で書かれているので言葉が子供言葉のままなのでそれに慣れるまで読みにくかった。でも子供言葉のままだから閉鎖的な空間での生活の異常さなどにリア...
監禁された女性が子供を産んだら… 母と子供の"部屋"での生活、脱出、その後社会に適応できるのか… すべて5歳の子供の視点で書かれているので言葉が子供言葉のままなのでそれに慣れるまで読みにくかった。でも子供言葉のままだから閉鎖的な空間での生活の異常さなどにリアリティがあったと思う。
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今日はジャックの5歳の誕生日。ジャックはママと部屋に住んでいます。鍵付きのドアに天窓のある部屋。テレビを見るのが大好きで、アニメの主人公が友だちです。でもジャックは知っています。テレビに映るモノはホントのことではないことを。自分とママと部屋だけがホントのことです―ママが外の世界が...
今日はジャックの5歳の誕生日。ジャックはママと部屋に住んでいます。鍵付きのドアに天窓のある部屋。テレビを見るのが大好きで、アニメの主人公が友だちです。でもジャックは知っています。テレビに映るモノはホントのことではないことを。自分とママと部屋だけがホントのことです―ママが外の世界があることを教えてくれるまでは。誘拐され、監禁された少女に、子供ができてしまったら…。
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ママと二人きりで部屋に暮らす5才の男の子の視点で語られる物語。 ある男が訪ねてくるとクローゼットの中に入らなくてはいけなかったり、しょっぱなから色々とおかしな点があり、男の子を巡る環境が次第に明かされるんだけど、何しろ5才の視点なので文体がすごく読みづらく、慣れるまで時間がかかる...
ママと二人きりで部屋に暮らす5才の男の子の視点で語られる物語。 ある男が訪ねてくるとクローゼットの中に入らなくてはいけなかったり、しょっぱなから色々とおかしな点があり、男の子を巡る環境が次第に明かされるんだけど、何しろ5才の視点なので文体がすごく読みづらく、慣れるまで時間がかかる。しかし中盤からの展開にはいろんな意味で驚く。 フィクションだということだが、モデルにした実在の事件がいくつもあるから恐ろしい。(※ホラーではありません)
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原書を半分で投げてしまったので(私の英語力では無理!!)、待望の邦訳でてよかったです。自店での配本1とかいうわけわからん数だったので他のお店にかけこみました。 いや…これ洋書読み始めて一年じゃむりだよ。なるほどこいう翻訳か!!翻訳家ってすげーな!!とか思いながらもとにかくハラハラ...
原書を半分で投げてしまったので(私の英語力では無理!!)、待望の邦訳でてよかったです。自店での配本1とかいうわけわからん数だったので他のお店にかけこみました。 いや…これ洋書読み始めて一年じゃむりだよ。なるほどこいう翻訳か!!翻訳家ってすげーな!!とか思いながらもとにかくハラハラドキドキの展開、そして後半は…なんか…色々考えてしまいますよね。 これ電車で読みながらふと家の窓を見ると、色んなドラマがあるんだよなぁってぞっとしてしまいました。 ともすれば設定のおぞましさに拒否反応示す人いるでしょうが、読んで損はありません。お勧めです!!
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