不愉快な本の続編 の商品レビュー
スピン3号の「絲山秋子 デビュー20周年」で改めて、著者の作品に向き合う。 中期の作品、意外に知らないものも多く、その中の本作を選ぶ。 退廃的な中に本来の優しさが潜んでいる、著者独特の人間観。 登場人物みんなどこかアウトローでいて、人間臭くて、見放せない、そんな日常でもあり非凡...
スピン3号の「絲山秋子 デビュー20周年」で改めて、著者の作品に向き合う。 中期の作品、意外に知らないものも多く、その中の本作を選ぶ。 退廃的な中に本来の優しさが潜んでいる、著者独特の人間観。 登場人物みんなどこかアウトローでいて、人間臭くて、見放せない、そんな日常でもあり非凡な世界でもある。
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絲山秋子「不愉快な本の続編」、2011.9発行。広島に生まれた乾ケンジロウは、東京の予備校で1年浪人し大学に。フランス留学はして自慢だが、大学を中退。以後各地を放浪。最後のパトロンは吉祥寺に住んでる10歳上の大学の先生、成田ひろみさん。変態のヒモだった。新潟ではユミコ32歳と結婚するも浮気されて2年で離婚。富山では泥棒が趣味の杉村明日香の誘いを断る。実家のあった呉に帰り弟が死んだことを知る。そして、この不愉快な本を閉じるとあるが、本人はどうなったのか・・・。なんとも不思議な世界でした。
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“ボクは言葉を捨てることの快さを初めて知った。言葉によって規定された自分自身も冬の服みたいに脱ぎ捨てて、裸の物質になるってことが、こんなに気持ちいいとはまさか知らなかった。そこにはボクの倒錯した過去もなく、ろくでもない未来もなかった。”(p.97)
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あれ、『異邦人』読んどかないとダメですか。 宙ぶらりんな人生とか、地方が舞台とか、このまえ読んだのと似てはいる。だいぶ暗くなったけれど。
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数ある絲山作品の中でも、特に観念的。 流されるままに流れ、先々で周りに寂しい思いをさせる主人公。 でも何故かちょっと好かれたり。 とにかく寂しい。
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主人公が呉出身というだけで手にした作品。 クズのような男が、東京、新潟、富山と渡り歩きながら、余所者として生きていく。彼はクズなんだけど、「考えるクズ」だ。だから、不思議と憎めない。 だけど余所者はどこに行っても余所者だった。 逃げるように故郷の呉に帰っても、唯一の拠り所であった弟が亡くなっていたことで、余所者であることから抜け出せなくなった哀しさ… 不思議な読後感だった。
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絲山さんの小説が好きだったんだっけ…と、久しぶりに思い出して手に取った一冊。 久しぶりに読むには、結構な作品でした。緑茶でも飲むかーと思ったら、抹茶出てきた感じ。 淡々としているのに、物語の印象が強く残ります。文章のタッチが変わらないのは、出戻り読者である私には何となく嬉しく、懐...
絲山さんの小説が好きだったんだっけ…と、久しぶりに思い出して手に取った一冊。 久しぶりに読むには、結構な作品でした。緑茶でも飲むかーと思ったら、抹茶出てきた感じ。 淡々としているのに、物語の印象が強く残ります。文章のタッチが変わらないのは、出戻り読者である私には何となく嬉しく、懐かしい。
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主人公を駄目男とは思わなかった。 どうしようもない人間なのに、目が離せない、 おせっかいをしてしまう人。 そういう人の、時間の流れが 地域の温度や匂いを伴って ページから浮かんでくる。
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他者との関係を断ち切ってしまって、そして自分からの発信は嘘なのか本当なのかのキワにある。そうした時に、どんどんと自分というものの形がなくなってしまって、いつどこでなにをやっていてなにをこれからやろうとしているのか、全部なくなっていってしまうようなヤツの話。最後には時間も止まっちゃう。 変態、乾、、、なんか記憶の片隅にあると思ったら、絲山氏の別の作品「愛なんていらねー」の主人公だった。って、絲山氏が対談で言っていた。
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とんでもないだめ男の話が書かれているが、実は主人公は今本を読んでいるあなたのではと思わせるような小説手法にトライしている。ページ数は多くはないが、後を引く物語だ。 芥川賞をとってから大分時間が経ってきたが、今後がますます楽しみな作家だ。
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