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西洋近代絵画の見方・学び方 の商品レビュー

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2011/09/21

 放送大学の講義「美術史と美術理論」の教科書を改訂したもの。第1部は「西洋近代絵画の見方」で、絵画の主題は何か、同じ主題で書かれた複数の絵画を比較したり、どのような画家によって書かれたか、どのような様式で書かれているか、絵画に現れる事物にどのような意味があるのか、といった事柄に関...

 放送大学の講義「美術史と美術理論」の教科書を改訂したもの。第1部は「西洋近代絵画の見方」で、絵画の主題は何か、同じ主題で書かれた複数の絵画を比較したり、どのような画家によって書かれたか、どのような様式で書かれているか、絵画に現れる事物にどのような意味があるのか、といった事柄に関する基本が、実際の絵とともに解説されている。第2部は「西洋近代絵画の学び方」で、どのように記録を残すか、情報を整理するか、文献を参照するか、といった、美術史を研究するための基本的なワークショップ的な事柄が書かれている。  第1部は多くの人が知っている、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」や「モナ・リザ」やミケランジェロの「最後の審判」などの絵画も含まれていて、興味を持って読むことができる。また、たとえ知らない絵についてであっても、実際にその絵画を見ながら読むことができるので、内容は分かりやすい。  第1部の「図像学」の部分が面白かった。第2部には、「人間には『知っていることしか見えてこない』という心理学上の原理ともいうべきものがある」(p.155)とも書いてあるが、特に「アトリビュート」を知っているのと知らないのとでは、絵画の見方は全然変わると思った。また、「抽象的な概念を表す擬人像」というのも、初めて知った。絵画の主題(典拠)についてもそうだが、こういった「コード」を知らないと、絵画が訴えるものを受け止めることができず、結果としてピンとこない作品が多いことがよく分かる。また、pp.79-80には、「デコルーム理論という視点から絵画をながめていた当時の人々の見方を学ぶべき」と書かれており、美術史に限らず、文化や歴史を学ぶ意義がここにあると思った。ただ。第2部は、実際に美術を研究しようとする人に向けた内容で、カメラの操作法やファイルの使い方など、あまりにも具体的な内容が多かったり、「学問のための学問」的な内容に、ちょっと興味が持てなかった。(例えば英語学を研究するつもりのない人や英語学に全く馴染みのない人にとって、「英語学史」はピンとこないし興味も持ちにくい、といった感じで。)バランス的にも、第2部はいっそのこと全部カットして別の本にし、第1部を充実させた方が、初心者には興味が持てる内容になったと思う。(11/09/20)

Posted byブクログ