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リトル・ピープルの時代 の商品レビュー

3.8

71件のお客様レビュー

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2012/05/16

ヒーローと公共性について語られる長い第2部は圧巻。時代の精神を考えるにあたってのヒントを多く得られる一書である。 ウルトラマンから仮面ライダーの時代へ、「大きな物語」から敵のいない時代・拡張現実の時代へと移り行く社会をヒーローを例にして解説。決して分かり易いというものでもないが...

ヒーローと公共性について語られる長い第2部は圧巻。時代の精神を考えるにあたってのヒントを多く得られる一書である。 ウルトラマンから仮面ライダーの時代へ、「大きな物語」から敵のいない時代・拡張現実の時代へと移り行く社会をヒーローを例にして解説。決して分かり易いというものでもないが、第1部の村上春樹の1Q84を切り口に、父なるものの認識をポストモダン以降の哲学を批評しているのは納得性が高い。 やれやれ、自分は大きな物語を単純に志向していただけのようだ・・・。

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2012/05/03

村上春樹~仮面ライダー~拡張現実~3.11を重ね合わせての文化論。ここ20年ばかり語られてきたこの系の論の総決算、二流以下はこれで出る幕を失うだろう。楽しみなのは蓄えを吐き出したこの著者の次だ。

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2012/04/24

「卵」「壁」「ビッグブラザー」「リトル・ピープル」で現代を読み解いてくれた。村上春樹の著書は余り読んでおらず分からなかったが、ウルトラマンや仮面ライダーの解説は大変興味深く、読ませていただいた。驚いたことは子供向けの番組であったのに、とても世相を反映したストーリーにしていたことだ...

「卵」「壁」「ビッグブラザー」「リトル・ピープル」で現代を読み解いてくれた。村上春樹の著書は余り読んでおらず分からなかったが、ウルトラマンや仮面ライダーの解説は大変興味深く、読ませていただいた。驚いたことは子供向けの番組であったのに、とても世相を反映したストーリーにしていたことだ。 また、今回の地震についての言及があり、著者の身内のことも語られていた。それらと仮面ライダーとの繋がりもあり、興味深く読ませてもらいました。

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2012/04/25

長ぇ。ビッグブラザー=大きな物語=国民国家=・・・は既に壊死し、現在はリトルピープル=データベース=貨幣と情報のグローバルなネットワーク=・・・の時代になっている。という筆者の主張を村上春樹、ウルトラマン、仮面ライダー、ダークナイト、ガンダム、AKB48といったポップカルチャーを...

長ぇ。ビッグブラザー=大きな物語=国民国家=・・・は既に壊死し、現在はリトルピープル=データベース=貨幣と情報のグローバルなネットワーク=・・・の時代になっている。という筆者の主張を村上春樹、ウルトラマン、仮面ライダー、ダークナイト、ガンダム、AKB48といったポップカルチャーを引き合いに出して読み解く。のだが、基本的にはずっと同じ事を繰り返し言っているだけなので、途中でうんざりした。500ページ義務感だけで読んだ(何の義務かは知らん)。

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2012/04/14

僕の「学問」を規定してくれた。僕にとっての永遠なる偉大な書。通俗的な作品に、社会の空気を読み解けること。ヒットする作品には時代の必然があるということ。「大きな物語の凋落」という、ポスト・モダン論の存在。大切なことをたくさん学んだ。単に「仮面ライダー」を論じた、という色モノ目線で入...

僕の「学問」を規定してくれた。僕にとっての永遠なる偉大な書。通俗的な作品に、社会の空気を読み解けること。ヒットする作品には時代の必然があるということ。「大きな物語の凋落」という、ポスト・モダン論の存在。大切なことをたくさん学んだ。単に「仮面ライダー」を論じた、という色モノ目線で入っただけに、多大なるインパクトを受けた。

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2012/04/02

ビッグブラザーからリトルピープルの時代へ、村上春樹の作品と平成仮面ライダーなどのヒーローの分析をしながら新たな時代を生き抜く力を模索する。面白い本でした。特に仮面ライダー論は読み応えありでした。敵のいない世界、正義なき時代に誰もがライダーになれる、それを平成仮面ライダーシリーズは...

ビッグブラザーからリトルピープルの時代へ、村上春樹の作品と平成仮面ライダーなどのヒーローの分析をしながら新たな時代を生き抜く力を模索する。面白い本でした。特に仮面ライダー論は読み応えありでした。敵のいない世界、正義なき時代に誰もがライダーになれる、それを平成仮面ライダーシリーズは伝え続けているのですね。

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2012/03/04

村上春樹が「ビックブラザー」の壊死には、敏感であったのに、その後に生まれた闇の姿は捉えきれていないこと、を解き明かし、1Q84の挫折を指摘する。ただし、批評が一面的なきらいがあった。仮面ライダーの変遷は面白く、現代の生き方を製作陣が真摯に模索していることを実感した。だが、この本の...

村上春樹が「ビックブラザー」の壊死には、敏感であったのに、その後に生まれた闇の姿は捉えきれていないこと、を解き明かし、1Q84の挫折を指摘する。ただし、批評が一面的なきらいがあった。仮面ライダーの変遷は面白く、現代の生き方を製作陣が真摯に模索していることを実感した。だが、この本の要旨は、ほとんどが前作「ゼロ年代の想像力」と同じだった。視界不良の世界を前に、著者自身も同じ場所で、足踏みを続けている。

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2012/02/11

村上春樹論から始まり、仮面ライダーやガンダム、ダークナイトなどのヒーロー論、AKB論、そして拡張現実の世界の話へと。 村上春樹論である導入部は、「言いたいことは分かるんだけど、それって筆者が村上春樹嫌いだから、結論に誘導するための論理じゃないの?」と思わせるところもあった。ただ...

村上春樹論から始まり、仮面ライダーやガンダム、ダークナイトなどのヒーロー論、AKB論、そして拡張現実の世界の話へと。 村上春樹論である導入部は、「言いたいことは分かるんだけど、それって筆者が村上春樹嫌いだから、結論に誘導するための論理じゃないの?」と思わせるところもあった。ただそれも批判的にというより、対話しながら読み進めていく事ができたのが面白かった。 そして本題である、ビッグブラザーの壊死からリトルピープルの時代へ。この論理展開の中では、確かに1Q84によって、これまで現実を先取りしていた村上春樹が、現実に追い越された感には納得した。 仮面ライダーがこんなにメタ的な世界を展開していたとは思わなかった。そして、n次創作による、作品へのダイブ、拡張現実へ。 全体的に納得感はあるが、ただ村上春樹論においてずっとひっかかるのは、すでに村上春樹は世界の作家なので、日本社会と照らし合わせて語ること自体が方法論として間違っているのではないかということ。おそらく筆者は、世界という視野で執筆された本も読んでいるはず。次は世界からの意見も紹介しながら、ここで書かれている内容を推し進めていって欲しいと思った。

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2012/01/30

 序章及び第1章で展開される村上春樹の作品分析が圧巻。「国内においてはポップカルチャーとして消費される村上春樹が、なぜ世界文学たり得るのか」という問いからの出発がいい。蓮見重彦、柄谷行人、浅田彰らの村上批判をも切り捨てながら村上春樹の小説の根幹へと迫る姿勢が見事。ビッグブラザー(...

 序章及び第1章で展開される村上春樹の作品分析が圧巻。「国内においてはポップカルチャーとして消費される村上春樹が、なぜ世界文学たり得るのか」という問いからの出発がいい。蓮見重彦、柄谷行人、浅田彰らの村上批判をも切り捨てながら村上春樹の小説の根幹へと迫る姿勢が見事。ビッグブラザー(国家・帝国)に対するディタッチメントから、貨幣と情報のネットワークが支配するリトル・ピープルの時代へのコミットメントへと舵を切る村上春樹の創作の源へと迫っている。「父」へのかかわり方へのこだわりは一体どこからやってくるのかが気になったが、あとがきでその秘密が明かされる。父との確執があり、ペンネームで父の名前を名乗っているという。鋭く時代を読み、村上文学を分析しながらも、自らの体験を背負い込むしかない人間の姿が浮かび上がってきて興味深い。

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2012/01/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

どちらかというと、村上春樹の1Q84を読み解く手がかりとして読み始めた本なのだが、そこからリトルピープルの時代のバーチャルではない拡張現実の話へとつながる、非常に野心的な筆者の論の展開に舌を巻いた。ゼロ年代のサブカルチャーをフォローできていないので、仮面ライダーの新シリーズや、けいおんなどの日常の中に落とし込まれるキャラクター論などもピンと来ないんだけど、ネットワークの普及により「内」と「外」が崩壊し、個人個人が否応なく父としての役割を持たされるリトルピープルの時代を「楽しむ」姿勢のようなものが提示されている。しかし、そこを打ち破るのが「アジア的な伝統に裏打ちされた想像力」である、というのが、どうにも辛い。  パクリの文化である中国に対照した日本的モノ作り再考、もっというと想像力を高める方法とは何なのか?その先にある未来的な社会の姿は??と疑問点がいくつも出てきてしまった。  想像力の障害である自閉症などの研究を読んでいると、シナプスの活動の原則として、近傍のスパインがある規則性を持って同期した活動をするようになるクラスター入力仮説が、神経可塑性の原理として注目されている。脳の中の機能的脳結合(small world)が、同期してネットワークを形成していくのと同じように、リトルピープルは、想像力を駆使して日常の小さなつながりを、強固に、より大きなネットワーク形成に社会を再構築していかないといけない。  このような筆者の主張を、サブカルチャー的な世界にとどめるのではなく、政治や経済、教育、福祉などにまで拡張し、新しいウェーブとなっていくことを願う。   

Posted byブクログ