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リトル・ピープルの時代 の商品レビュー

3.8

71件のお客様レビュー

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    17

  2. 4つ

    19

  3. 3つ

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2014/01/22

 図書館より  村上春樹と特撮ヒーローから現代社会の批評を行った本。  大きな壁が失われ、それぞれの人がそれぞれの正義や欲望によって動くようになった現代社会、という議題設定から、それぞれが自分の欲望のため内部に潜っていく、という話になっていくのですが、個人的にはなかなか面白かっ...

 図書館より  村上春樹と特撮ヒーローから現代社会の批評を行った本。  大きな壁が失われ、それぞれの人がそれぞれの正義や欲望によって動くようになった現代社会、という議題設定から、それぞれが自分の欲望のため内部に潜っていく、という話になっていくのですが、個人的にはなかなか面白かったです。  結論に向けて様々なアプローチをされているので、ページ数は多めなのですが書いている内容は自然と頭に入ってきます。そういう意味では分かりやすかったです。  宇野さんの文章を読んでいると批評や物語構造の分析が非常に面白そうに思えてきます。ポップカルチャーの思想を何かしら調べようと思ったら、この方の文化に対する見方は参考になるのではないか、と思います。

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2013/12/29

村上春樹の「壁と卵」の話の解体とバージョンアップを、宇野さんが仮面ライダーとウルトラマンを使って目指してる1冊だと思った!考えすぎに見えるところもあったけど、でも同時に批評の楽しさを感じさせる、良い意味での軽さもあるのが好きだった!

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2013/07/02

451 現代における正義(正当性)は常に、究極的な無根拠を織り込んだ上で特定の物語を選択するある種の決断ーー賭けとしてのみ成立する。 454 繰り返すが現代において正義/悪の区別はあるレベルでは相対的なもので、あなたがどの共同体に所属するかという問題でしかない。

Posted byブクログ

2013/06/30

本書は、現代社会における「父的なるもの」の変化を、主としてサブカルチャーの領域から分析している。その変化を一口で言えば、「ビッグ・ブラザーからリトル・ピープルへ」ということになる。 「システムを物語化する巨大な疑似人格=ビッグブラザー」から解放されたことで、物語は僕たちの手に戻っ...

本書は、現代社会における「父的なるもの」の変化を、主としてサブカルチャーの領域から分析している。その変化を一口で言えば、「ビッグ・ブラザーからリトル・ピープルへ」ということになる。 「システムを物語化する巨大な疑似人格=ビッグブラザー」から解放されたことで、物語は僕たちの手に戻ってきた。そして「非人格的なシステムの生むゲームの上でリトルピープルとして戦わなければならない」と。 分厚い本なのにかなりさらっと読むことができた。本を読んでいるというよりもおしゃべりを聞いている感じ。最初この本を読もうとしたとき、単純に表紙の仮面ライダーがかっこいいなと思ったが、その仮面ライダーが非常にうまくとりあげられていたのが印象的だった。 ただし、仮面ライダー部分以外はあたしにはちょっと。最初に村上春樹論が展開されて、村上春樹がエルサレム賞のときに行ったスピーチや、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を全面的に見立てに利用して時節を検証しようとしているのだが、正直村上春樹の大昔の小説を1つ取り上げて、今の世界の流れに置き換えようとしているのがちょっと無理がある、と言うか、最初に結論ありき、みたいであたしにはキツくって。むしろど真ん中に、平成の仮面ライダーについて熱く語られる第二章のほうがあたしには好みだったし、断然わかりやすかった。ただし、あまりライダーモノ、特に平成ライダーに興味のない向きには少し食傷気味になるのかも?というこってり詳細な内容だったけど。 でも、そういった詳細部分を全部省いてもなお、昔の戦隊モノやロボットヒーローズ、あるいはウルトラマンのように巨大な姿で強大な敵を打ち倒すヒーローモノと、等身大であくまでも自分たちの力で敵を倒さざるを得ないライダーを「ビッグ」「リトル」と比較して見せたのには納得した。いくらウルトラマンが時には悩んだり苦しんだりしてヒューマンであるとはいっても、最終的には自身の強大な力で解決はされるわけだから。しかも常に、強大な敵や存在自体が人類を脅かす何者かに対峙する彼らは畢竟、正義であるという価値観が明確に与えられている。その反面ライダーは、自分ひとりの力で、人間と同じ体躯で戦わざるを得ないし、究極の価値判断として時には仮面ライダー龍騎のように、仮面ライダーとしてヒーローであるはずのライダーたちが殺しあう、という、「敵の非存在」という価値表現が許されるところまできているのである。 でも、それらを大きく俯瞰してみたときに、このストーリーはあくまで、男の子側の理論をなぞっているだけなんじゃないか、ってあたしなんかは思う。絶対正義 vs. 絶対悪とか力での戦いって、男子ヒーローのお約束ではあるけれど一転して女子ヒーローでは決してそうではない表現がずっとなされていたはずなんじゃないのだろうか?キューティーハニーとかめるもちゃんとか、むかしっからかなり、女子は「父的なるもの」よりも筆者の表現で言えば「リトル・ピープル」だったと思う。しかもその、ダンシにとっての「父的」正義は時に、女性蔑視と言う名の相対的な敵だったとさえ思うんだよね。 ぜひヒーローモノ、と言ったときに女子をごっそりそぎ落とさずに、女性の戦いにも目を向けてもらいたいな、なんてあたしは思うのです。女子ヒーローは、例えばチームを組んでも戦隊にはならずにバディシステムだったり、戦いの相手がクラスメイトだったりもするしさぁ。 ・・・だいたいあれよね、仮面ライダーに女性って、ほとんどでてこないのよね。

Posted byブクログ

2013/06/30

内容が極めて男性的です。 父を大きなテーマにして書かれているので、それは必然的なのかなと感じました。 男性的すぎて、女性である私は入り込む余地がないような感覚に陥りました。いい本ではない、という意味ではなく、私には合わない、という意味で★2つです。 村上春樹氏にもヒーローにも...

内容が極めて男性的です。 父を大きなテーマにして書かれているので、それは必然的なのかなと感じました。 男性的すぎて、女性である私は入り込む余地がないような感覚に陥りました。いい本ではない、という意味ではなく、私には合わない、という意味で★2つです。 村上春樹氏にもヒーローにも興味がないため、言ってることはわかっても、響きませんでした。ただ、村上春樹氏がなぜか合わない私は、その答えがわかりませんでしたが、本書を通してその意味がわかりました。(ノルウェーの森など、何度かチャレンジして全て吐き気がしたのですが、その理由がわかりました。)それは大きな収穫だったと思います。

Posted byブクログ

2013/06/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

<印象的な箇所のまとめ> ・グローバル資本主義が浸透した現代はビッグブラザー(国家や国家の歴史物語)が力を持っていない。リトルピープルの時代である。 ・歴史から切断されて生きている人々は、リトルピープルに依存する。 ・リトルピープルとは、企業とかカルト教団とか売れっ子ビジネス書作家とかカリスマとかアイドルとか。特定の主義主張による精神的な囲い込みを多くの人にもたらす存在。個人はリトルピープルの主義主張に依存していきていくようになる。 ・オウムと阪神震災後の村上春樹は、オウムや自己啓発セミナーなどカルト集団の精神的囲い込みに対抗するため、抗体としての役割を果たす物語を執筆している。抗体としての物語を読者に届けている。 ・「世界の終りとハード・ボイルド・ワンダーランド」で世界の終りにいる「僕」は、世界の終りにとどまり続けることで責任を取る道を選ぶ。デタッチメントすることで世界に責任を果たしている。 ・春樹の小説の語り手「僕」たちは、女性の登場人物に承認されることでナルシズム的欲求を満たしている。女性たちは心に傷を抱えており、女性たちの要求に「僕」が応えることで、コミットメントが成就されてきた。これはハードボイルド小説の手法の変奏といえる。 ・ハードボイルド小説では社会が複雑化多様化している。ハードボイルド小説の男性はナルシズムを確保するために男のロマンを徹底して自己完結した。春樹の小説の語り手たちは、女性に承認されることでナルシズムを確保してきた。 ・「ねじまき鳥クロニクル」では、悪が明確に描かれる。悪が擬人化されたワタヤ・ノボルは、主人公オカダ・トオルの妻クミコによって殺害される。クミコは闇の世界にいって帰ってこなくなるが。 ・春樹の小説では常に女性がコストを支払うことで、男性主体のイノセンスが確保されてきた。女性への責任転嫁とレイプファンタジー。これではリトル・ピープルに対抗する想像力と言えない。 (以下ヒーローもの番組の分析に続く) <所感> これを読んだ後「多崎つくる~」について考えるとまさしく女性に承認される男のファンタジー。学生時代の大切な友人の女性シロがレイプを苦に死亡。レイプの犯人が多崎つくるだと思われていたため、多崎つくるは学生時代の仲間から仲間はずれにされる。多崎つくるは大人になってから、仲間はずれにされた理由、シロがレイプされたこと、もう亡くなっていることを知る。本人はレイプしていないと思っているけれど、どうも自分の分身みたいな存在がシロをレイプしたし、自分の分身がシロを殺したような記憶もある。その記憶の再生と、シロ以外の女性たちからの承認によって、多崎つくるは生を取り戻していく。 この解釈は「多崎つくる~」の多様な物語から一部を切り取った解釈に過ぎないし、優れた小説は多様な解釈ができるけれど、多崎つくるはシロが亡くなったこと、過去は戻らないことを受容し、それでも生きてゆくことを選ぶ。過去の傷を受け入れつつ、未来に向けて生きていくこと、何等かの全部救済してあげますよ的教えにすがることなく、自分の頭で考えて生きていくことを、春樹の物語は推奨している。

Posted byブクログ

2013/03/12

村上春樹論は素晴らしいと思った。春樹のコミットメントからデタッチメントへの変化。大きな物語が通用しなくなり、小さな物語への変化。ゼロ年代の想像力でも述べられていた、諸悪、壁、社会を変えることより、自分が変わること、その過程を目指す状態を自己とすることを感じる。「ゼロ年代~」と「リ...

村上春樹論は素晴らしいと思った。春樹のコミットメントからデタッチメントへの変化。大きな物語が通用しなくなり、小さな物語への変化。ゼロ年代の想像力でも述べられていた、諸悪、壁、社会を変えることより、自分が変わること、その過程を目指す状態を自己とすることを感じる。「ゼロ年代~」と「リトルピープル」はつながっており、宇野常寛の一貫性が感じ取れる。 ただ、これは私自身に原因があるのだが、仮面ライダーを詳しく知らないというこの本を味わいきれない問題がある。その点で読者を狭めてしまっている、もしくは、読者を選ぶ?もしくははじいているように思える。

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2013/03/07

ダラダラと長過ぎて読みにくいのが難点。なんでも蘊蓄を並べれば良いというものではない。 エルサレムでの村上スピーチを多く引用している。 エルサレムで壁=システムから卵=個人を守ることの重要性を改めて説いた村上は現代のシステム(グローバル資本主義)が不可避に発生する力=リトルピープ...

ダラダラと長過ぎて読みにくいのが難点。なんでも蘊蓄を並べれば良いというものではない。 エルサレムでの村上スピーチを多く引用している。 エルサレムで壁=システムから卵=個人を守ることの重要性を改めて説いた村上は現代のシステム(グローバル資本主義)が不可避に発生する力=リトルピープルは特定の主義主張によるモーメント=精神的な囲い込みを多くの人にもたらすと考えている。 村上は翻訳することによって作家としての勉強をしている。昔の人が写本写経するみたいに英語を一語一語日本語に移し替えて、言葉の使い方、文章のリズムの取り方、どんなふうに小説を書くかということをそこから学びとる。 村上は複数言語による思考の分割がなかったら自分にとっては小説はうまく書けなかったと語っている。 村上はビッグブラザーには誰もなれないことには敏感だったが、誰もが不可避的にリトルピープルとして機能してしまうことには鈍感だった。

Posted byブクログ

2013/03/05

ジョージ・オーウェルが『一九八四年』でビッグブラザーを通して全体主義を巧みに描いてから、四半世紀が経った現在、ネット社会の発達によって全体主義のような大きな社会のシステムは失われつつある。 このビッグブラザーと入れ替わるようにして、細分化、散逸化して社会全体に拡散したシステムの在...

ジョージ・オーウェルが『一九八四年』でビッグブラザーを通して全体主義を巧みに描いてから、四半世紀が経った現在、ネット社会の発達によって全体主義のような大きな社会のシステムは失われつつある。 このビッグブラザーと入れ替わるようにして、細分化、散逸化して社会全体に拡散したシステムの在り方をリトルピープルと呼称して、そのあり方を模索している。 「ビッグブラザー」と「リトルピープル」という興味深い対構造を提案している反面、「リトルピープル」に関するサブカル的な論議の進行の仕方にはやや雑さを感じる。 くわえて、村上春樹やジョージ・オーウェルを読んで、その内容に通じている人でなければ、展開についていくのに難があると感じる方もいるのではないだろうか… ただ、革命のようになにか巨大な波で社会体制そのものを転覆させてしまうのではなく(これは著者のいう大きな物語につながるが)、世界にハッキングすることで(つまり既存の社会体制そのものを違った目的へと転用してしまうことで)、閉塞した世界の中で、その停滞を打ち破り、新たな世界を生み出そう(大きな物語の代替としての物語)とする著者の主張には、粗削りな強い魅力がある。 ビックブラザーのように、巨大な全体がある一つの方向に向かって膨大なエネルギーを照射することで社会が動くのではなく、リトルピープルという個々の小さな部分(の集まり?)が不透明ながらも搖動し、微小なエネルギーを照射してゆくことで、その集合としての全体が少しづつ、しかし確実にある方向へと変化してゆくような社会の仕組みの在り方を、この著作で宇野常寛は問うているのだと思う。

Posted byブクログ

2013/03/01

子供の頃ウルトラセブンと仮面ライダーV3が好きで、ガンプラが欲しくても中々買えなく悔しい思いをし、おニャン子を観て、村上春樹を読んで大人になった。 子供が出来て仮面ライダーアギトや555を観て、今はモンハンやったりAKBを見たりしている。 僕は凄いポップカルチャーを、何気なく体験...

子供の頃ウルトラセブンと仮面ライダーV3が好きで、ガンプラが欲しくても中々買えなく悔しい思いをし、おニャン子を観て、村上春樹を読んで大人になった。 子供が出来て仮面ライダーアギトや555を観て、今はモンハンやったりAKBを見たりしている。 僕は凄いポップカルチャーを、何気なく体験して生きてきたんだ! これはかなり幸運な事だぞ!

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