なぎさホテル の商品レビュー
伊集院静さんが逗子のなぎさホテルで過ごした7年間を綴ったエッセイ。小説のような実際の出来事。こんな出逢いがあるなんて素晴らしいと、読みながら何度も思いました。 今はもうなぎさホテルはなく、当時お世話になった人々は鬼籍に入られた人もいれば、時折手紙をくれる人もいるけれど、多くはそ...
伊集院静さんが逗子のなぎさホテルで過ごした7年間を綴ったエッセイ。小説のような実際の出来事。こんな出逢いがあるなんて素晴らしいと、読みながら何度も思いました。 今はもうなぎさホテルはなく、当時お世話になった人々は鬼籍に入られた人もいれば、時折手紙をくれる人もいるけれど、多くはその消息を知らないという。 「それでも私の記憶の中には、あのやさしかった人たちの笑顔と、まぶしい逗子の海の光はずっと消えずにある。停止した正午の針のように・・・・・・。」との一節で締めくくられている。その最後の一節が心の琴線に触れた。なんとも言えないあたたかな想いがあふれた。
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1978年から7年余り 逗子なぎさホテルで暮らし、向き合った彷徨と苦悩、見守ってくれた人々との出逢いと別れが綴られた自伝的エッセイ。 「こうして古いホテルでの日々を述懐しながら、過ぎて行った時間を振り返ってみると、私という人間が、元来のいい加減さや性悪な気質をかろうじてバラン...
1978年から7年余り 逗子なぎさホテルで暮らし、向き合った彷徨と苦悩、見守ってくれた人々との出逢いと別れが綴られた自伝的エッセイ。 「こうして古いホテルでの日々を述懐しながら、過ぎて行った時間を振り返ってみると、私という人間が、元来のいい加減さや性悪な気質をかろうじてバランスを取って、堕ちて当然の場所でくたばらずに済んでいるのは、私を見守ってくれた人々の情けでしかなかったのがよくわかる。」
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作家、伊集院静が誕生するまでの逗子のなぎさホテルでの生活を描いた自伝的エッセイ。これまで氏が山口県防府の出身とは知らなかったから同じ瀬戸内海に面した街に住む者としてシンパシーを感じた。何より老支配人が素晴らしい。
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・ 無頼派の何たるかを教えてもらった、厨子のホテルでの滞在記。 夏目雅子さんとのエピソードや、氏が作家になるまでの自伝的随想。 宿泊代をとらずに支えたホテルの支配人の人柄に、暖かくなりました、 【本文より】 ・人生は哀しみとともに歩むものだが、決して悲嘆するようなことば...
・ 無頼派の何たるかを教えてもらった、厨子のホテルでの滞在記。 夏目雅子さんとのエピソードや、氏が作家になるまでの自伝的随想。 宿泊代をとらずに支えたホテルの支配人の人柄に、暖かくなりました、 【本文より】 ・人生は哀しみとともに歩むものだが、決して悲嘆するようなことばかりではないということである。 ・持って行き場のない怒りをかかえて、うろうろと街を徘徊し、人を妬み、裏切り、失望し、大勢の人たちに迷惑をかけて生きていた。 ・(中略)私という人間が、元来のいい加減さや性悪な気質をかろうじてバランスを取って、堕ちて当然の場所でくたばらずに済んでいるのは、私を見守ってくれた人々の情でしかなかったのがよくわかる。 ・「タダキ君、自己表現だよ。そのために人は戸惑い、悩み、うろうろするんだ。でもそれでいいんだよ。万歳だよ、万歳だ」
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荒んだ生活だが、安らぎと優しさが感じられる場面がある。誰かに支えられて生かされている時がある。支配人凄い。出会いがもたらす不思議。たまに心地良い時間が流れる。不思議な人生。こんな事もありなのですね。
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逗子のなぎさホテルを舞台とした伊集院静の滞在記.この辺に土地勘がある人はさらに楽しめる.何気ない日常(と言ってもホテル暮らし)を描いていいるのであるが,おそらく同じ経験をしても,このような文章は書けないであろう.日常を切り取る力がある意味作家の力量.小説とは違うエッセイの醍醐味.
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泊ったことはないが、「逗子なぎさホテル」若き日の記憶に残っている。読んでいて風景が浮かんでくる。物語に出てくるのは“いい人”たちばかり。読後感がいい。
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昔から無頼な生き方に憧れがありました。 あるとき、無頼に身を委ねようと試みたことがありましたが、そもそもが臆病な自分にはまるっきりダメでした。 無頼というのは一つの才能のようなもので、そうしようと思ってできるものでもないのだな、と諦めたものです。 この小説は伊集院さんが実際...
昔から無頼な生き方に憧れがありました。 あるとき、無頼に身を委ねようと試みたことがありましたが、そもそもが臆病な自分にはまるっきりダメでした。 無頼というのは一つの才能のようなもので、そうしようと思ってできるものでもないのだな、と諦めたものです。 この小説は伊集院さんが実際に7年間暮らしたホテルでの話を書いてますが、とうの昔に諦めた自分の憧れを満たしてくれる小説でした。 なんともなしに本を開くと、自然と読むことを止められなくなる…この魅力は?と立ち止まってみたら、無頼への憧れを満たしてくれると同時に、この本を読むことが自分にとってのぬくもりと安らぎを与えてくれていたことに気がつきました。
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格好良すぎ。無頼は憧れだか、凡人が真似をするとただの生活破綻者になってしまう。空を飛べないから鳥に憧れるように、叶わぬことをやってのける氏の生き様に憧れ、夢想する。そして、『やりたいこと』とは言えず、『やりたかったこと』が多くなった事実に悄然とするばかりだ。
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作家・伊集院静が誕生するまでの自伝的小説です。才能豊かな人の周りには、その才能を開花するために必要な、質の良い人達が集まるのが分かりました。 私はこのホテルで大人の男へのさまざまなことを学んだ、人生は哀しみとともに歩むものだが、決して悲嘆するようなことばかりではないということであ...
作家・伊集院静が誕生するまでの自伝的小説です。才能豊かな人の周りには、その才能を開花するために必要な、質の良い人達が集まるのが分かりました。 私はこのホテルで大人の男へのさまざまなことを学んだ、人生は哀しみとともに歩むものだが、決して悲嘆するようなことばかりではないということである(P8)。ところが品性は、私に一番欠落したものである。謙遜して言うのではない。自分がこれまでして来たこと、今もしていることを見ればわかる。それでも小説を書こうとしているのだから、どうしようもない(P174)、が印象に残りました。
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