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響きと怒り の商品レビュー

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2019/10/31
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※このレビューにはネタバレを含みます

紙の古びた講談社文庫(高橋正雄訳)で読んだ。 邦訳は(文豪でない限り)新しいほうがいい、というタイプだが、まあ手元にあったので。 しかし読むに連れ、頭からネジが飛び出そうな訳で、我慢できず一章の途中でウェブ上の漁ってしまった……ら……。 もとは1968年の世界文学全集のための訳らしく、講談社文芸文庫(1997)も同じ訳らしい。 対して岩波文庫上下巻(2007)の平石貴樹・新納卓也訳は、もっと親切で丁寧で、親切すぎるという批判が多いくらいだ。 まあ今回の高橋訳は、たぶん中上健次も同じ訳で読んだんだろうなーと想像しながら読んだ。 次回は岩波文庫で再読すること(第1部の語り手の一人称は今回は「私は云々」だったが、絶対に岩波文庫「ボクは云々」のほうがしっくりくるはず!)。 内容については……。 第1部「1928年4月7日」視点人物は白痴ベンジャミンの錯綜した認識。 第2部「1910年6月2日」妹姦を夢想する長男クェンティンの自死。 第3部「1928年4月6日」次男ジェイソン。けちでせせこましい。姪クェンティンとの反目。 第4部「1928年4月8日」視点人物は様々だが、今まで傍らに追いやられていた黒人女中ディルシーにも焦点が当たる。 わざと卑近な言い方をすれば、「仕掛け感モリモリ」。 ある一家が没落していく過程に、様々な方面から光を当てていく。 父の酒浸り、母の鬱陶しさ、長男クェンティンの近親姦疑惑、三男ベンジャミンの知的障害。 そんな中で娘キャディだけが、語り手や視点人物にならない代わりに、求められる対象として、ぎらぎら輝く。 その娘クェンティンの小娘感がさらに、母キャディを照らし出す。 なるほど中上が兄(自殺)と姉らへ独特な感情を持ったのと、パラレルに見えてくる……。 いやもう現時点で書ききれないことは多いし、今後も読み返すことだろう。 というか読み返すときには岩波文庫でと決めた。 そして正直に既読作にランク付けすれば「八月の光」<「響きと怒り」<「サンクチュアリ」。 あとは「アブサロム、アブサロム!」「エミリーに薔薇を」を読んで、再度ランクを見直したい。

Posted byブクログ