澪つくし の商品レビュー
うん、やっぱりお捨と笑兵衛の木戸番夫婦のお話はいいなぁ・・・。 深川に暮らす市井の庶民たち。それぞれ幸せになりたいと日々真っ当に生きているはずなのに、なぜかどこかで何かずれていく・・。 2人は、ばっさばっさと快刀乱麻で事件や揉め事を解決していくわけではない。お捨がふっくらした...
うん、やっぱりお捨と笑兵衛の木戸番夫婦のお話はいいなぁ・・・。 深川に暮らす市井の庶民たち。それぞれ幸せになりたいと日々真っ当に生きているはずなのに、なぜかどこかで何かずれていく・・。 2人は、ばっさばっさと快刀乱麻で事件や揉め事を解決していくわけではない。お捨がふっくらした手で困っている人の手を優しく取り、話を聞く。無口な笑兵衛にいたってはそんなお捨を信頼し、ぼそっと何か呟くか、差配と将棋を指しているか。根っこの困りごとは実はなくなっていないのだけど、2人と触れた人々の心持ちがふっと楽になっていく。 長老みさわさんが、起承転結の中で、「起から承となった辺りでスパッと話を切り上げる手腕」と言われているのが凄く頷ける。この手腕って、「慶次郎縁側日記」にも通じるよね。読者は、うんうんと読んできて、まだ話は終わってないよ!と思うところで、なんか投げ出されてしまうのだけど、人生ってそんなもんじゃないか、と、そのもやもや感がとてもリーズナブルに思えるところが北原さんの力量なんでしょう。
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深川澪通り木戸番小屋シリーズ4冊目で、「小説現代」の8連作の単行本化。 シリーズは「とおりゃんせ」というタイトルでテレビドラマ化されてます。 顔にやけどを負い婚約者を恨む女、男に裏切られてばかりの女、江戸へ出奔した息子を捜す女など、人間関係に傷つき疲れた女たちが、江戸深川の木戸...
深川澪通り木戸番小屋シリーズ4冊目で、「小説現代」の8連作の単行本化。 シリーズは「とおりゃんせ」というタイトルでテレビドラマ化されてます。 顔にやけどを負い婚約者を恨む女、男に裏切られてばかりの女、江戸へ出奔した息子を捜す女など、人間関係に傷つき疲れた女たちが、江戸深川の木戸の番小屋に住む笑兵衛とお捨夫婦に係わって、そのさりげない優しさ、ひとがらの柔らかさに少しずつ癒されていく。 それぞれの女の話は決してハッピーエンドにはならないけれど、希望穏やかな気持ちで終わる。
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7年ぶりとなる「深川澪通り木戸番小屋」シリーズの最新作。正直、木戸番小屋シリーズの続刊が描かれるとは思ってもいなかったのでとても嬉しかった。笑兵衛お捨の夫婦は以前と全く変わりなくここに居てくれた。やはり北原亞以子さんは短編・掌編の名手だ。起承転結で言えば、起から承となった辺りでス...
7年ぶりとなる「深川澪通り木戸番小屋」シリーズの最新作。正直、木戸番小屋シリーズの続刊が描かれるとは思ってもいなかったのでとても嬉しかった。笑兵衛お捨の夫婦は以前と全く変わりなくここに居てくれた。やはり北原亞以子さんは短編・掌編の名手だ。起承転結で言えば、起から承となった辺りでスパッと話を切り上げる手腕はもう名人芸。今日も澪通りの木戸番小屋には悩みや事件を抱えた人々が通りすがる。笑兵衛とお捨は、八面六臂の活躍をして事件を解決する訳ではない。ただ話を聴いてやるだけだったり、手を握ってくれるだけだったり。でも、この二人に係りあうだけで、生きていく心を取り戻す事ができる。そんな珠玉の掌編集。
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