風評被害 の商品レビュー
東日本大震災から2か月しかたっていない出版なので、今回の原発事故についての風評被害はあまり触れられていない。しかし、風評被害が発生するメカニズムは理解できると思う。観光に対する風評被害、金融機関の取り付け騒ぎが起こる風評被害、物流に関する風評被害のそれぞれに起こる原因を説明してい...
東日本大震災から2か月しかたっていない出版なので、今回の原発事故についての風評被害はあまり触れられていない。しかし、風評被害が発生するメカニズムは理解できると思う。観光に対する風評被害、金融機関の取り付け騒ぎが起こる風評被害、物流に関する風評被害のそれぞれに起こる原因を説明している。
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軽い本かと思ったが専門の研究者によるまとめ。総論的であまり新しい知識はなかったが、「むつ」の事件は勉強になった。よい本だと思います。
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この本の定義によると,風評被害とは,事件・事故・災害等の問題が報道されることで,本来「安全」とされるものを人々が危険視し,消費・観光・取引をやめること等によって引き起こされる経済的被害。 ただ難しいのは本当に「安全」かどうかというのが必ずしもはっきりしないということ。立場によ...
この本の定義によると,風評被害とは,事件・事故・災害等の問題が報道されることで,本来「安全」とされるものを人々が危険視し,消費・観光・取引をやめること等によって引き起こされる経済的被害。 ただ難しいのは本当に「安全」かどうかというのが必ずしもはっきりしないということ。立場によっても違うし,すぐにはわからなくても,後になって実は安全だったと確認されることもある。そもそも「安全」でないならば,経済的被害が起きてもそれは風評被害ではない。 日本における風評被害のはしりは,第五福竜丸の被曝事件。「放射能パニック」が起こり,被曝とは無関係の魚まで売れなくなったり安く買いたたかれたりした。その後も原子力船「むつ」の放射線漏れ(74年),JCO臨界事故(99年),今回の福一事故など,放射能による風評被害は顕著。 他にも,ナホトカ号重油流出事故,所沢ダイオキシン報道なども記憶に新しい。「少しでも不安があるものは避ける」という行為が風評被害に直結する。特に状況がうまく理解できていないと,安全側安全側に行動してしまって,風評被害を助長する。だから正しい情報が迅速に提供されることが重要だが,それを信用できないと頭から否定する人も少なからず存在する。皆がパニックにならず落ち着いて行動できればいいのだけれど,やはり風評被害に適切に対応するのはとても難しい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
風評被害とそれにまつわる消費者行動について、社会心理学や社会学的な視点からとらえた本である。 ① 風評被害を生むメカニズム 風評被害を引き起こす社会構造の特徴は三つある。まず言うまでもなく「情報過多社会」であること、さらに安全を所与のものとして考える「安全社会」であること、最後に流通の発達により多くの商品が代替可能となった「高度流通社会」であることである。「情報過多社会」に関して筆者は中越沖地震と04年の台風23号(中越沖地震より行方不明者が多いが圧倒的に露出が少ない)の被害とマスメディアへの露出量を例に挙げながら、「報道量」が質よりも募金などの視聴者の行動に与えるインパクトが大きいことを示している。震災の呼称が熟慮され政府が公式に発表したものを用いるのもこのためである。阪神淡路大震災は淡路島への世間の注目が相対的に弱くなってしまうことを避けるためにこのような呼称へと変化した。また「安全社会」に関して、日本人は少しでもリスクのあるものを避ける傾向が強い。しかしかつて風評被害をもたらした水銀と違い放射能は測定が容易である。そのため今回震災後影響が出ている農産物に関して科学的安全を担保することは難しいことでもない。だが個人の安全の基準がそれと乖離しているのは一つには科学リテラシーの問題で、これは普段からフードファディズムを排除することで達成されると筆者は述べている。 ただこうした構造は抜本的な解決というものは無く、風評被害をある程度所与のものとして考え保険や共済、基金などのセーフティネットを構築しておくことが肝要であるとも言っている。 ② 第三者効果と流通業者 第三者効果とは「他人は自分よりもメディアに影響されやすい」と予測する傾向をさす。筆者は所沢のダイオキシン報道を例に挙げ、流通業者にこの第三者効果が顕著であることを指摘している。ダイオキシン報道は当初日テレのいくつかの番組で取り上げられたのみであったが、流通業者や市場関係者には大きく関心を払われていて過剰に反応したため価格は暴落した。実際当初のたかだか視聴率10数パーセントの日テレの数番組による消費者全体への影響力はそこまででもなかったと考えられるが、第三者効果の下にある業者が過敏に反応することでさらにこれがニュースに取り上げられ負のループを招いたとしている。この点には「流通業者の過剰反応を抑えるための教育・啓蒙活動」が必要であると説いているが、これは初期的な段階においてのみ有効な施策で、今回の震災はすでに風評被害が顕在化しているためこの施策が有効とは言えないだろう。ただこの「取引やサービスに関係するプレイヤーが多いほど、あるいは組織が介在するほど第三者効果が強く働く」という構図は多くに当てはまる。 ③ 災害ユートピア 流通業者間では過敏な卸し控えの傾向が強いと述べたが、その一方でイトーヨーカドーや東急ストアあるいはJAの直販などでむしろ被災地を支援しようと積極的に被災地物産の販売を行った業者もある。彼らにはどのような仕組みが働いているのだろうか。筆者はこの仕組みは「災害ユートピア」であるとしている。災害ユートピアは利他的な行動や感情のほとばしりによって大衆てきな救援活動が開始され、それが被災後の数日から数か月続く現象である。首都圏でも帰宅困難、余震、計画停電が経験され心理的に「被災地」だったこともこの災害ユートピアの傾向を強めたとみられている。こんな本(http://book.asahi.com/review/TKY201102080172.html)もあって興味をそそられた。書評は柄谷行人。
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「風評被害」という言葉は、1990年代の終わりから広く知られるようになったという。ちなみに「うわさによる被害」と「風評被害」は別の現象。「風 評被害」とは“疑心暗鬼の連鎖”であり、高度流通社会が形成された日本だからこそ発生しやすい。そして「安全」「安心」を追求する、当たり前の気持...
「風評被害」という言葉は、1990年代の終わりから広く知られるようになったという。ちなみに「うわさによる被害」と「風評被害」は別の現象。「風 評被害」とは“疑心暗鬼の連鎖”であり、高度流通社会が形成された日本だからこそ発生しやすい。そして「安全」「安心」を追求する、当たり前の気持ちが生んだ現象で、そこに悪意はない。しかし東日本大震災後、いままさに「風評被害」に苦しんでいる人々がいる。 本書では、東洋大学の「災害情報・環境情報の社会心理」を専門とする関谷准教授が、日本の風評被害の歴史とその事例をもとに、発生のメカニズムを解き明かしながら多角的に論じる。「風評被害」は、どのように広がり、どうすれば収まるのか。この現象を正しく理解するために、読んでおきたい。
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すべからく、情報をどう出すか、どう受けるか、の問題だと受け止めた。 まず、「風評被害」とはなにか。著者によれば、安全なものについて、根拠のない風評によって危険視され、敬遠される状態をいう。つまり情報を出す側としては、懸念されることに対して、安全を証明して対抗すればよい。情報を...
すべからく、情報をどう出すか、どう受けるか、の問題だと受け止めた。 まず、「風評被害」とはなにか。著者によれば、安全なものについて、根拠のない風評によって危険視され、敬遠される状態をいう。つまり情報を出す側としては、懸念されることに対して、安全を証明して対抗すればよい。情報を受ける側としては、風評に惑わされなければよい。 では、今回の放射能汚染で見受けられるように、安全が証明できない場合はどうするか。情報を出す側は、できうるかぎり、誠実に、安全を証明するべく努める。受け手としては、「許容できる基準」を設定するしかない。例えば、自分で安全かどうか見て、大丈夫なようなら安全とするわけだ。リスクを負わざるを得ないならば、納得いくラインを自分で設定するほかない。とはいえ、あくまでも個人の判断であるから社会の合意は取りづらいことは留意しておく。 いずれにせよ言えることは、社会の合意に結び付く安全の証明は、誠実に行われなければならない。なにかにおもねて歪んだ証明をするなどもっての外です。
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