逝年 の商品レビュー
久しぶりにこんなに美しい文章と小説に出会った。 さすが石田衣良さん。映画「娼年」では感じられない、言葉の美しさを感じたので、『娼年』も読んでみたい。 p.27 下側は、鋭い快感で、上側は安心するようなくつろぎ。 p.34 それは世界中で起きていることだった。ボクたちは自...
久しぶりにこんなに美しい文章と小説に出会った。 さすが石田衣良さん。映画「娼年」では感じられない、言葉の美しさを感じたので、『娼年』も読んでみたい。 p.27 下側は、鋭い快感で、上側は安心するようなくつろぎ。 p.34 それは世界中で起きていることだった。ボクたちは自分たちと異質なものを攻撃し排除する。永遠に続く、命がけの間違い探しだ。 p.40 手放しの褒めようだった。東は女性を褒めるときは、言葉を節約しない。 p.52 夜はすべての人を包み込む。人の強さと弱さ、病気や傷痕、ねじれた、欲望に叶えられなかった夢。心の影を全て包み込んで、朝の光が世界を借金するまで自由な夢を見せてくれるのだ。 p.103 誰かが書いた愛の定義を思い出した。相手の幸福が自分にとって不可欠な状態を愛と言う。 p.115 あゆみは、女の乳房が嫌で、胸をカッターで切ろうとしたことがあった。声が女の子のようになるのが嫌で、塩素系の洗浄剤でうがいをして、喉を焼こうとしたこともあった。華奢な指に馴染めなくて、コンクリートの柱をずっと拳で殴っていたこともあった。 p.126 退屈を探せば、退屈を、驚異を探せば、驚異を見つける。世界はあまりに豊かな書物なので、必ず望むページに行き当たることになる。それがどれほど正しい指摘だったか、娼夫の仕事を通して、僕は思い知ることになった。この世界にも女性たちにも無限の豊かさがある。だが、冷えた欲望の持ち主には、扉を消して開かれる事は無い。それは大海の上で漂流死するのと同じである。膨大な水に囲まれたまま、渇き死んでいくのだ。僕にとって、欲望の無限の変化を探るのは、そのまま世界の成り立ちの姿をリスペクトすることだった。 p.149 ここにも人間の不思議があった。肉体は心をのせる器に過ぎない。心の方が体より先にあるのだ。 p.152 普通に生きているだけでも、人生はかなりの重さだった。その上、さらに障害を抱えて歩いていく。しかも障害が次の障害を呼ぶこともある。僕は目の前の妖精のような少年を見直していた。 p.189 あなたが今悲しいのなら、その悲しみを私に感じさせて。2人で分け合って、その色をもっと深いものにする。私は私の体を通して、リョウくんの悲しみを感じたい。 p.216 ずっと忘れていた。生きているって、自分の体を通して誰かを感じて、何かを分け合うってことだったんだね。 p.226 僕たちは傷つき、渇き、シワを増やし、肉を食べません、歳を重ねていく。肉体の魅力と生き生きとした心の弾みを失っているのは、ほんのわずかな知恵と金銭だけであるように見える。だが、それでも日々何かを失いながら生きている女性の体は、これほど素晴らしかった。 p.229 大人になると言うのは、「輪郭を淡くしていくこと」かと私は思った。若い頃は、好き嫌いをはっきりさせて、何にでも白黒をつけ、「選び取る」ことで、自分のアイデンティティーを形成していく面がある。しかし歳をとるというのは、いや、正確に言えば、よりよく歳をとるというのは、いろいろなものの境や自分の輪郭さえ薄れさせ、淡くうっすらと空にに漂うことなのかもしれない。
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コールボーイ2作目。 新しいクラブの発足とオーナーの他界。 この仕事の深さ、意味合い、生きることをの意義を肌のふれあいの中から感じる作品。素晴らしい。
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解説にあったが、石田衣良は女性の加齢を豊かに捉える数少ない日本の傑作の一つ。 「よりよく年をとるというのは、色々なものの境や自分の輪郭さえ薄れさせ、淡くうっすらと空に漂うことなのかもしれない。」 性描写はかなり過激だけど、それ以上に人と人とのつながりや生と死、欲望について真摯...
解説にあったが、石田衣良は女性の加齢を豊かに捉える数少ない日本の傑作の一つ。 「よりよく年をとるというのは、色々なものの境や自分の輪郭さえ薄れさせ、淡くうっすらと空に漂うことなのかもしれない。」 性描写はかなり過激だけど、それ以上に人と人とのつながりや生と死、欲望について真摯に向き合う登場人物たちによって、意外とすっと受け入れられる。
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『娼年』の続編。 インモラルな中に生命の輝きや優しさがあり、乾いていて静かな文体なのに、肌の質感の表現などはしっとりと濡れたような雰囲気で、艶っぽくも清廉な独特の余韻が残ります。 いつも穏やかでフラットなリョウの感情の動きや、大人の女性の表現がとても美しいです。
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読んだのは単行本ハードカバーなので装丁が違う。何かの蛇腹…のようでよく分からないけど、ハードカバー版の方が私の好み。 クラブの再開、アユムの登場と家族とのエピソード、御堂静香の死。 主人公が女性の心をゆっくりほぐして開いていく様は前作よりスキルアップしている。スキルとは言っても身につける技術ではなく本人の才能の開花かもしれない。
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前作に比べて、衝撃的なともいえるシーンがあるように感じる。だが、決して不快ではなく「性」のかたちであり「愛」の形なんだと思った。
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クラブの再建に運営と仕事の幅が広がる、娼年の続編。GIDやHIVにも触れている。 「人間は探しているものしか見つけない」前作にも出てきた言葉が刺さります。 知らないものを否定しない強い心を持ちたいし、受容できる広い心を持ちたい。 自分の無知を忘れない謙虚さ大事。
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娼年のような、さまざまな女性とのセックスの話は少なかったけど、性のことを考え、素直に見つめる主人公を始め登場人物のアズマ、アユム、メグミなどに心をうたれる。 静香さんとの最期は、厳かでエロくて濃密で愛があって、切ない。 エイズの症状進行ってほんとにそんな感じなのか、現実味がないの...
娼年のような、さまざまな女性とのセックスの話は少なかったけど、性のことを考え、素直に見つめる主人公を始め登場人物のアズマ、アユム、メグミなどに心をうたれる。 静香さんとの最期は、厳かでエロくて濃密で愛があって、切ない。 エイズの症状進行ってほんとにそんな感じなのか、現実味がないのと、著者が、女性のエクスタシーというものを幻想があるような気がするのが、ちょっと気になる。
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逝年 石田衣良 2020/1/6 前半は前作に引き続き娼夫がセックスするだけか・・・って感じだったけど、後半は愛について考えさせられる展開だった。 ▶︎pick up 人の骨ほど清潔なものはない。 相手の幸福が自分にとって不可欠な状態を愛という。 悲しみにつかうには、ぼくたち...
逝年 石田衣良 2020/1/6 前半は前作に引き続き娼夫がセックスするだけか・・・って感じだったけど、後半は愛について考えさせられる展開だった。 ▶︎pick up 人の骨ほど清潔なものはない。 相手の幸福が自分にとって不可欠な状態を愛という。 悲しみにつかうには、ぼくたちの時間は貴重すぎるのだ。 「あなたが今悲しいのなら、その悲しみをわたしに感じさせて。ふたりで分けあって、その色をもっと深いものにする。わたしはわたしの身体を通して、リョウくんの悲しみを感じたい」
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『娼年』の続編となるシリーズもの。 なるほどこういう商売もいろいろとそれなりに大変なんだなぁということを感じる。まあ、当たり前といえば当たり前だけれど。 働くって、(それがどんな分野であれ)しんどくないものなんてないよね。
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