しっとり濡れ妻 の商品レビュー
読み手の感情を様々に揺り動かす構成の妙
メインヒロインに少し“汚れ”を与えることでキャラの良さが却って際立つのみならず、主人公(24歳)以外の男との接点もあり得ることを示して読み手に適度なドキドキ感をもたらす秀逸な設定に加え、サブヒロイン達を好対照に活躍(?)させることで楽しませてもくれる重層的な構成を見るに、本作が本...
メインヒロインに少し“汚れ”を与えることでキャラの良さが却って際立つのみならず、主人公(24歳)以外の男との接点もあり得ることを示して読み手に適度なドキドキ感をもたらす秀逸な設定に加え、サブヒロイン達を好対照に活躍(?)させることで楽しませてもくれる重層的な構成を見るに、本作が本当に第2作目なのかと不思議に思ってしまう内容の濃い作品である。 家庭の事情で水商売的な夜の仕事に従事する人妻(34歳)には子供の他に主夫もいながら、まさにタイトル通りのしっとりした色気があったり、上司の妻(32歳)の男勝りな性格が、ややヘタレな主人公と良いコンビになっていたり、一見地味で魅力皆無な取引先の女社長(28歳)には猛烈な性癖と魅惑的なオマケ要素があったりと、それぞれギャップのある3人のヒロインが作品を彩っている。艶っぽい描写による愛情深い情交場面が多く、官能面は総じていやらしい。 捻りを加えつつも割とオーソドックスな序盤で人妻に一目惚れする主人公が、次第に魅力ある年上お姉さん達に囲まれていくウハウハ展開ではあるが、ヒロイン達が鉢合うとか、一同に会するような修羅場はなく、終盤で主人公と人妻との間にピンチが訪れる流れになっている。ただし、それだけでは話が重くなると踏んだのか、中盤ではまるで別の作品かと思わせる面白展開があって大いに笑わせてくれる一面もある。女社長のギャップもなかなか凄まじいが、実は上司の妻を際立たせる上司その人も実に味があって面白い(ついでに言えば、同僚社員にも面白い人物がいたりする)。また、夫婦仲こそ冷めていないものの、この上司にちょっぴり哀しい過去を背負わせ、それを愚行に走らせる理由にすることで、妻が主人公を可愛がるようになる遠因にもなっている。こうした小技の利かせ方はさすがである。この中盤で見られる人間模様と面白さ、そしてサブヒロイン達の思わぬ活躍に、メインたる人妻の出番はおろか存在感さえも霞んでしまうのは皮肉である。 このように様々な要素をいろいろと詰め込んだ濃い中身によって、後半以降で人妻との情事が減ってしまい、最後も取り急ぎ感が出て少し曖昧な幕引きになってしまう消化不良の物足りなさはあるものの、ひとまずそれぞれとの関係に齟齬を来すこともなく、なかなかに明るい未来をも感じさせる結末で読後感は悪くないものに落ち着いていると思う。
DSK
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