POSSE 時代がわかる雇用問題論争誌(Vol.9) の商品レビュー
「ブラック企業」という言葉は、インターネットの中では10年近く前から使われていたが、ここ数年で大きく認知されてきた。 特に、労働法から逸脱した雇用に関しては、大きな問題である。 また、ブラック企業に入ってしまうと、心身的に体調を崩したり、友人が減ったり(販売ノルマによる購入強...
「ブラック企業」という言葉は、インターネットの中では10年近く前から使われていたが、ここ数年で大きく認知されてきた。 特に、労働法から逸脱した雇用に関しては、大きな問題である。 また、ブラック企業に入ってしまうと、心身的に体調を崩したり、友人が減ったり(販売ノルマによる購入強要や、長時間労働による交流時間の減少)、という問題がある。 ただ、気をつけたいのは、何でもかんでも「ブラック」と決め付けないことだ。 かくいう僕も、新卒で入社した会社では月に2日くらいしか休まなかったし、朝7時くらいから深夜5時くらいまでの中での不規則な仕事をしていて、月間での労働時間は300時間を越え(ちなみに、週休2日で9時間労働だと175時間である)、賞与を除いた月給総額を時給換算すると750円くらい、手取りでは時給600円を切っていた。それが、店長職の待遇である。 とはいえ、2年間で「週休2日9時間労働」の2倍近い時間を仕事に費やしたということは、4年くらいの業務経験を積んだと考えて良い。これは、実際のところ役に立っている。 また、働く時間が長いとお金を使える時間がほとんどない。つまり、労働時間に比べて給与が低くても、さほど問題はなかった。初任給20万円だったので大卒としては普通だ。単に、サービス残業の労働時間が長すぎただけである。 ちなみに僕はサービス残業に対しては否定的ではない。むしろ「ゆっくり仕事をしたほうが給与が高くなる」という仕組みは合理的ではないという考えだ。 つまり、残業代というのは、ベルトコンベアーで運ばれる商品の検品のような仕事では有効だが、労働時間と成果(利益の創出)がほとんど無関係な場合は、適切ではないだろう。 店舗運営も、営業時間と来客数は基本的に比例する(もちろん時間や曜日でその数は異なる)ため、残業代は支払うべきかもしれない。とはいえ、店舗運営の人件費の大部分を占めているアルバイトの給与は時給制であり、つまり残業した分の給与は既に支払われている状態である。 実は、店舗運営者の過大な労働時間は、アルバイトに残業させると残業代を払わないといけないが、それだと経営が保たないので、残業させずに退勤させていて、そのしわ寄せが運営者に来ている、という側面が大きい。 つまり、社員のサービス残業を減らすということは、その手段が「社員の労働時間短縮とアルバイトの労働と支払い給与の増加」であれ「社員の残業代の満額支払い」であれ、どちらにせよ経営の崩壊を意味する。 その結果、生まれるのは失業という最悪の労働問題であるというのは皮肉だ。 そういった複合的な要因が、この問題にはある。 もちろん、利益を経営者や株主が不当に得ている場合は、糾弾されてしかるべきだろう。
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