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ハーモニー の商品レビュー

4.3

661件のお客様レビュー

  1. 5つ

    287

  2. 4つ

    213

  3. 3つ

    78

  4. 2つ

    9

  5. 1つ

    4

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2022/08/12

おもしろかった。 個人としての尊さが消え去ってひとつの全体になってゆくことがディストピアではなくユートピアのようなものとしておとされ(一応は)この物語が閉じられることに妙な違和感と妙な心地よさの入り交じりをおぼえた。 あとこれは本当にわたしが言ったってしょうがない要求ですが、ウー...

おもしろかった。 個人としての尊さが消え去ってひとつの全体になってゆくことがディストピアではなくユートピアのようなものとしておとされ(一応は)この物語が閉じられることに妙な違和感と妙な心地よさの入り交じりをおぼえた。 あとこれは本当にわたしが言ったってしょうがない要求ですが、ウーヴェ、もっと前から登場しててほしかった!!とおもった。

Posted byブクログ

2022/07/21
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※このレビューにはネタバレを含みます

「作家刑事毒島」に作者の名前が出て来たので。 「虐殺器官」の方が先に書かれた本のようだが、 こちらの方が先に入手できたので。 正直、難しいところはよくわからなかったが、 現代の平和な、だが、閉塞的な空気感をよく表している世界だった。 もちろん、子供が怪我をしないようにジャングルジムがぐにゃぐにゃと曲がる、 人体にはメディカルポートが埋まっている、 未来のお話なのだが。 しかし、そこに違和感はない。 食べものからの栄養を拒否する薬を作り飲んで自殺した友だちと、 大人になって久しぶりに会って食事をしている最中に、 ステーキナイフで自殺をした友だちと、 かつて三人で死のうとした主人公。 人びとの健康と命が管理され、痛みも不快感もない平穏な世界に、 突如として、自分が殺されないために人を殺せとメッセージが出回る。 「自由意志」を示せと。 はるかに進んだ医療を持つ未来のSFでありながら、 行方知れずの父親を追うミステリーでありながら、 印象に残るのは、共感というか、好感というか。 この空気感を表現する力は、自分には無い。

Posted byブクログ

2022/06/16

10年以上も前に書かれたものだと思うと、なぜこんな未来を想像できるものなのか、と驚いてしまうくらい設定がすごく面白い。 watch meは今のApple Watchみたいなものだし、度の行き過ぎた健康志向、心身共に平和に穏やかにいようと言う風潮も、今の時代に十分ある。

Posted byブクログ

2022/04/24

SFってひたすら未来的な世界のイメージだったけど、こんな『意識』と『意志』についてのSFは新鮮だった 『ハーモニー』によって得られたものと失ったものの物語 伊藤計劃さんの新作がもう読めないのが残念すぎる

Posted byブクログ

2023/10/26

ユートピアとディストピアは表裏一体。 精神と肉体と本能の関係性。 「わたしは逆のことを思うんです。精神は、肉体を生き延びさせるための単なる機能であり手段に過ぎないかも、って。」pp173 「みんなは決めつけてくれる人間が好きなんだよ。何かを決めてくれる、決断してくれる人間の周...

ユートピアとディストピアは表裏一体。 精神と肉体と本能の関係性。 「わたしは逆のことを思うんです。精神は、肉体を生き延びさせるための単なる機能であり手段に過ぎないかも、って。」pp173 「みんなは決めつけてくれる人間が好きなんだよ。何かを決めてくれる、決断してくれる人間の周りには「空気」が生まれる。科学者はそれが苦手なんだ。だって、正しいことっていうのはいつだって凡庸で、曖昧で、繰り返し検証に耐えうる、つまらないことなんだから。」pp209 「人間は絶えず「自然」を抑え込んできた。都市を築き、社会を築き、システムを築いた。全ては自然という予測困難な要素の集合を、予測し統御する枠組みへと抑え込もうとする人間の意志の現れだ。(中略)そして、脳もまた肉体の一部である以上、それを制御してはならない根拠など、どこにあるだろうか。」pp256 「我々の魂とは、進化後その場その場で継ぎを当ててきた双曲線的な価値評価の産物でしかない。完璧な人間には、魂そのものが不要なのだ。」pp264

Posted byブクログ

2022/01/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

例えば私が考えようとしている公共性、公共圏といったものがすべて満たされるようになった社会を推し進めて行った先がこの世界だったら。私も彼女たちと同様に死を望む気がする。 「わたし」というものが大切にされない社会。あくまで「わたし」が大事なのは公共的リソースだからという意識。 人権は守られなければいけないが、「わたし」に国家が(いや政府ではなく生府が)介入することのえぐさを感じた。 突拍子もない設定のSFというより、今ある社会を基盤に 発展させた、あるかもしれない世界観、というのが心地よい。 なぜ、「あなた」が大切にされなければいけないのか、迷っている人におすすめ。 . . . . . ⚠️ネタバレ含む⚠️ 文中の「わたし」は意思を持たない者へ向けたコード上の「わたし」で、一体なんだったんだろう。読者はトァンの目、脳が文字化(コード化)された羅列を読んでいたようだ。奇妙な感覚。 また、最後老人らによってコードを入力され、この世界には意思が消滅した人間ばかりのような終わり方であるが、WatchMeをインストールしていない子どもは、あるいは紛争地域の人々はどこへ?かれらは「意思」を持つ「最後の人間」になったはずだ。終章を読む限り、トァンらの世界は随分と昔の話で、時代がくだった世界の読者に宛てられたコードを読んでいたことが分かる。でも、その世界の「われわれ」にどうやら意思を、感情を持つ人々は存在しないらしい。 すべてがシステム化され、相互扶助が高められた社会において、「意志を持つ人間」 はもはや人間ではないのか。

Posted byブクログ

2022/01/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

冒頭からHTMLをもじったETMLに面食らう。 感情を修飾する言語とは一体なんだろう?と分からないまま読み進めて、終盤でようやく理解できた。 『わたし』であることを捨てられたら、感情や記憶に苦しむこともないし幸せかもしれないけど、それがユートピアだとは認めづらいなとも思った。だからトァンの選択には賛同できたが、キアンとヌァザに対する感傷がそれほど感じられなかったので、復讐する動機は弱い気がする。 ミァハの境遇は、ひどく耐えがたかった。身体の尊厳を守るために意識を生み出さざるを得なかった…というのは自分の実感としては逆ではないか?という気もするが、このへんは著者自身のことと肉薄しているように思う。

Posted byブクログ

2021/12/30

文学ラジオ空飛び猫たち第23回紹介本。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/23-en365k ダイチ 『虐殺器官』よりもさらに完成されている印象で、それを読みやすく小説にしているのがすごいと思いました。『虐殺器官』...

文学ラジオ空飛び猫たち第23回紹介本。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/23-en365k ダイチ 『虐殺器官』よりもさらに完成されている印象で、それを読みやすく小説にしているのがすごいと思いました。『虐殺器官』あっての『ハーモニー』だと思うので、順序としてはさきに『虐殺器官』を読んでほしいです。未来の監視社会において人間のあり方を問いている小説で、結末に対していろいろな考え方が持てると思うので読者は意見を触発されると思います。 『虐殺器官』同様、SF初心者でも読みやすいです。ただグロテスクな描写もあります。アニメ化もされているのでアニメから入ってもいいと思います。 ミエ 人間とは何かを描いていて、SF小説ならではの思考実験が楽しめます。完璧に調和された世界に個人の意識は存在しない、という問いたてを小説におもしろく落とし込んだ伊藤計劃さんはすごいと思いました。ラストの喪失感は『エヴァンゲリオン』の人類補完計画を観ていたときの感覚に近いです。個人的には『虐殺器官』より『ハーモニー』の方がより緊張感が伝わってきて惹かれました。 伊藤計劃さんの小説はまだまだ古びないと思います。世の中がシビアになればなるほど読者と通じ合うものがあると思います。

Posted byブクログ

2021/06/04

エヴァ観た日に、伊藤計劃『ハーモニー』読了。 ミァハの自分勝手さとかトァンの振り切れない甘さとか人間誰しも持ってるような、決して「良い」とは言えないような部分が光る

Posted byブクログ

2021/05/30

10年も前に書かれたとは思えない。いま人類が直面している問題を乗り越え実現しそうな未来の話という感じ。 トァンを中心とした人物相関図は結構複雑で、それゆえに彼女の感じた喜怒哀楽以上のたくさんの感情は非常によい教材となっただろう。意識•意思•感情というものがなくなって、平和になった...

10年も前に書かれたとは思えない。いま人類が直面している問題を乗り越え実現しそうな未来の話という感じ。 トァンを中心とした人物相関図は結構複雑で、それゆえに彼女の感じた喜怒哀楽以上のたくさんの感情は非常によい教材となっただろう。意識•意思•感情というものがなくなって、平和になったとして、人間は人間でいる意味があるのだろうか。

Posted byブクログ