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賎民の場所 江戸の城と川 の商品レビュー

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2019/09/08

徳川入府以前の江戸、四通する川の随所に城郭ができる。水運、馬事、監視などの面からも、そこは賤民の活躍する場所となる。浅草の渡来民から、太田道灌、弾左衛門まで。

Posted byブクログ

2012/08/12

何気なく新刊文庫本の棚から目を移すと、横の本棚に塩見鮮一郎という名前を見つけて、驚くと同時に懐かしさがこみ上げて来ました。 またずいぶんと遠くまで来たものですね。 でも、あいかわらず、少し堅すぎませんか? 彼が、1980年代に部落解放同盟と伴走し、部落差別を激しく糾弾する活動...

何気なく新刊文庫本の棚から目を移すと、横の本棚に塩見鮮一郎という名前を見つけて、驚くと同時に懐かしさがこみ上げて来ました。 またずいぶんと遠くまで来たものですね。 でも、あいかわらず、少し堅すぎませんか? 彼が、1980年代に部落解放同盟と伴走し、部落差別を激しく糾弾する活動家として活動しただけでなく、『表現の装置 来るべき言葉のために』や『都市社会と差別』などで、権力者がこの世界をいかに差別構造によって造形してきたかを暴き出すという、つまり単に差別意識や表現だけが問題なのではなく、この社会の成り立ちそのものの根底からの問題性を鋭く指摘した類まれなる思索者として存在したことを知る者としては、その後の時代小説家への転身を見届けなかったことを恥じるばかりです。 といっても、真相は高1のある時期、部落問題に少し首を突っ込んだ際に、その著作を何冊か読んだだけというものですが。 被差別部落はじめ在日朝鮮人・中国人やハンセン氏病患者などの差別問題は権力論としてももっとも重要な主題で、支配・被支配を明確に企図して構造的に作られたものであり、この時期、塩見鮮一郎の他にも『アジアの賎と聖』『日本の賎と聖』(共に野間宏と共著)の沖浦和光や、『われらの内なる差別』『歴史の奪還』『戦略とスタイル』の津村喬を着目して読んでいました。 それにしても、≪来るべき言葉のために≫とは、1970年に出た畏敬する中平卓馬の写真集『来るべき言葉のために』にピッタリ符合するというか、そのまんまの引用あるいは換骨奪胎したタイトルでビックリした記憶がありますが、彼が真正面にそのことを自覚的だったかは知る由もありません。 ええっと、この本は、徳川家康より前の、太田道灌以前の江戸、つまり中世の江戸がどういうふうに作られて来たかを、河川を中心にそれらを地形の特徴と関係づけて語られる壮大な歴史分析なのですが、聖:城郭/賎:河川という視点から、水運・馬事・監視などを一手に使役させると同時に、見事に完璧なまでに差別構造を創造して賎民制度を完成させていく過程を描いていますが、驚くことに、それを彼は実際に歩き回って自分の足でひとつひとつ確かめて書いているのです。 お手製の古地図もふんだんに掲載されていて、最初はいくらなんでも、昔のよしみとはいえこんなマニアックな本を読む羽目になるとは、トホホ・・、と恨めしく思っていたのですが、案外けっこう、目からうろこ的でもあり、楽しく読めました。 読んでいると、毎回かかさず見ている好きな「ブラタモリ」が、いかに表層だけしかとらえていないか、色あせて見えるのを思い知るほどでした。

Posted byブクログ