ロマンスの王子様 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
入荷先:町田市立さるびあ図書館 長らく注目してきた「オマケの王子様」シリーズ完結編。完結に日本を持ち出す姿勢にはいささか疑問はあるのだが(リエントリーとしての問題ならまだしも、単純にリオの母国だからというその姿勢に疑問があるのだ)、蛇足することなく当初からの問題をクリアに描き切ったという意味においてはそれ相応の評価をしてもいいだろう。 最終巻で、大学時代の同級生の恋愛感情とリンクさせることで、その恋愛における個人の思索の行方を描き出そうとした試みは評価できるのだが、これは一歩間違えれば嫉妬という言葉の名のもとでさまざまなレイプを行うことを許す土壌と皮一枚の関係であり(さすがに本書はそのような真似はしていない)、これまで培ってきたものすべてを根底から突き崩す危険性があったことは指摘せねばなるまい。確かに最初の『オマケの王子様』が刊行された当時、下剋上もの(ボーイズラブにおいて対幻想関係となるキャラクターのハイアラーキーまたは年齢が挿入する側とされる側で逆転関係になる構図のことをこのように呼ぶ)がやや席巻していたということもあったが、その傾向があった作品が後にシリーズ化し、作品が続刊されてはいったのだが、そうした作品たちの多くは刊行された後における「注目されるようになった関係」の追認でしかなかった。それとは一線を置いていたのがこのシリーズの持ち味であったはずだ(あとがきで高月が「理央くんが大人になって」と言っているが、大人になったのは彼もそうだが高月自身もそうなのだ)。しかし、本書を一読した時に残る不快感の出所は、おそらくこの「後からの設定の追認状態」を本書もまた志向してしまったことへのやるせなさに由来するのだろうと思う。 オマケの王子様から発展途上の大公殿下に成長したように、本書を書くことで高月も成長したと評者は考える。そしてそれにこうじまのイラストもしっかりついてきている。Daria Bunkoではめったにないwin-win関係を構築することのできたこのシリーズが若干しりつぼみの印象で閉じることになってしまったのは本当にもったいないとしか言いようがない。同人誌などでの補足を期待する次第である(というよりもそうすべき。なぜならば単純な王子様ものとはもはや次元が異なってしまったからだ)。
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