谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 の商品レビュー
6編収録の短編集。 「M」のイメージとなると「女王様が男に対し鞭を振るったり、足蹴にしたり、ロウソクのロウを垂らしたり暴言を吐いたり」というのがまず思い浮かびます。 作中にもそういう描写があるのかな、と思っていたのですが、そこまで露骨な表現はなかったです。ほっとしたよう...
6編収録の短編集。 「M」のイメージとなると「女王様が男に対し鞭を振るったり、足蹴にしたり、ロウソクのロウを垂らしたり暴言を吐いたり」というのがまず思い浮かびます。 作中にもそういう描写があるのかな、と思っていたのですが、そこまで露骨な表現はなかったです。ほっとしたような残念なような……。 前半の作中の男性たちは性的興奮のためにマゾヒズムを追いかけているという感じではなく、もっと純粋に、そうされる方が楽しいからされているんだという風な、子供が楽しいおもちゃを見つけて遊ぶような感じで無邪気にマゾを楽しんでいる印象を受けました。そして、後半の作品からはそうした無邪気さ以上の楽しさを知ってしまったゆえの人間の欲望というものが表れてきたような作品だったように思います。 そう考えると最初に収録されている『少年』のように子供がマゾの楽しみを覚える話もまったく不自然な話ではないのだな、と思えます。また『幇間』は本当に主人公が嬉しそうで読んでいるこちら側が苦笑してしまいそうでした。彼の笑い顔が自然と頭の中に浮かんできました。 谷崎潤一郎は読み始める前から「マゾヒズム小説」のイメージがとにかく強かったのですが読んでみると文章表現も幻想的で美しいものが多く、特に『少年』のラスト近くの場面や幻想色の強い『魔術師』などでは特にその強さを感じました。 五編目の『一と房の髪』では女性の魔力の強さを実感……。ここで女性に翻弄される男たちは、二重国籍で日本人でも西洋人でもないと語っているのですが、そういう満たされなさを抱えていたからこそ、同じ境遇の女性にここまではまってしまったのかな、と思いました。そして女性側が男性たちのそうした弱さを知ってふるまっていたかと思うと、ますます「女って怖いな」と思ってしまいます(苦笑) 最終話の『日本に於けるクリップン事件』では谷崎のマゾヒズムの定義的な文章が印象的です。この文章を頭に置きつつ他の短編たちを思い返してみると、登場人物たちのまた違った側面を考えることができると思います。
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初っ端の「少年」が子供のマゾってやつでパンチが効いててすごいですね。逆に他が霞むような。最後の「日本に於けるクリップン事件」はまとめとしては良いです。
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とかく文章が美しい そこで一言で言い表されてしまう驚きがそこかしこにある ゆっくりと読み返してみたいが、マゾヒズムはやはりどうも共感出来ない あちこちのマゾヒズム論はとても興味深かった 「幇間」の最後のプロフェッショナルな笑い、など
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「少年」にはドキッとさせられた。文豪と呼ばれる谷崎潤一郎の本ということで購入してみたが文章の美しさに驚かされた。しかし未だに理解できない部分も多く、もう少し時が経ってから読み直すべきだと思う。
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拝跪されるような女性像に型はあるが、いわゆる「マゾ」たちのおかげで飽きさせない。被虐・嗜虐の一方的なものではない関係性から、マゾの定義を見つめ直すこともできる 収録作品:『少年』『幇間』『麒麟』『魔術師』『一と房の髪』『日本に於けるクリップン事件』
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「幇間」、何度読んでもいい。あの最初の舟と河岸のにぎやかさ、あれを味わうために「幇間」を何度も読む。最後の一文も徹底してていい。 確か新潮文庫だと「刺青」に入っていたはず。 「麒麟」は初めて読んだ。中国を舞台にした(孔子とか)作品で、南子夫人の悪さがいい。
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これは面白かった。 存分にその世界が堪能できる短編集。表現や言葉がきれいですし読みやすい。『少年』なんて、なんだかとても淫靡な感じで、参りました。文学とは、摩訶不思議。
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「マゾヒズム」っていうワードと表紙に惹かれての衝動買い(●^o^●) もやもやっとしたまだ「芽」のようななんとも言えない感じがいい。 一番最初の少年たちの話は読んでてかなりどきどきした^^ ・・・これって、やばいかなぁ(^_^;)
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やっぱり 谷崎の 惹かれるところは どうしても ここ。 谷崎にふれたことが ない人にも ぜひ 読んでほしい一冊。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
昔、課題で「少年」を読んで、あまり肌に合わないと思ったにも関わらず、読んでしまった。 何となく流していても、気付いたら絵が浮かんでしまっているあたり、恐ろしい。 好みかは別として、触れておいてよかったと思う。
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