谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 の商品レビュー
6編のマゾヒズム小説集。本質的にはあまり共鳴出来なかったが、それでも惹きこまれる文章だ。喜びはあくまで肉体的、官能的なものであって精神的なものではなく、奴隷になるのも芝居として楽しんでいるに過ぎない、とマゾヒストの心理が書かれていて腑に落ちた。小川洋子の『ホテル・アイリス』でも感...
6編のマゾヒズム小説集。本質的にはあまり共鳴出来なかったが、それでも惹きこまれる文章だ。喜びはあくまで肉体的、官能的なものであって精神的なものではなく、奴隷になるのも芝居として楽しんでいるに過ぎない、とマゾヒストの心理が書かれていて腑に落ちた。小川洋子の『ホテル・アイリス』でも感じたが、SMはどうやら他人を道具的に介した自己愛の表現らしい。余談だが、関東大震災を小説で読むのは本書に所収されている「一と房の髪」が初めてだ。
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ドMを文学に昇華した谷崎潤一郎は偉い! マゾヒストは一種の演じ手であると語っているあたり、そうだなぁと深く共感するし、空想を伴うこの行為が作家にいい刺激を与えたに違いない。 特に好きなのは「幇間」「日本に於けるクリップン事件」の2つ。女性に虐げられたい男の快楽と真のマゾヒストの心...
ドMを文学に昇華した谷崎潤一郎は偉い! マゾヒストは一種の演じ手であると語っているあたり、そうだなぁと深く共感するし、空想を伴うこの行為が作家にいい刺激を与えたに違いない。 特に好きなのは「幇間」「日本に於けるクリップン事件」の2つ。女性に虐げられたい男の快楽と真のマゾヒストの心理を語っている物語に、谷崎のマゾヒスト的考え方、空想の楽しさを垣間見れて、なんだか嬉しくなった。 そして最後にみうらじゅん氏の鑑賞がある。共感するところが多々あるので、やっぱり私は変態かもしれない。
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マゾプレイは一種の芝居とおっしゃるのはなるほどと思いました。この道の代表者ならではの重みのある言葉でした。なかなか難しい言葉もあり、結構重たく感じました。
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初めて谷崎を読んだ。タイトル通りのマゾヒズム短編集。『少年』が一番気に入った。彼等の性的倒錯を恰も自分が享受しているかの如く官能的に愉しめた。一見すると醜い行為も谷崎の文章も相まって美しく思われる。彼の他の作品も読みたい。
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2作目までは読んだのだけど、文体や表現を味わう以前にマゾヒズムという嗜好?思想?に共感を持てず、、、断念。フェティシズム小説集なら読めるかな。 一旦距離を置いて、また手を付ける日が来るでしょうか。
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なるほど、タイトルも含め谷﨑の入門書としては格好の一冊だ。マゾヒズムとは一方的な被虐者を装いながらそれ以上に束縛しようとする独占欲の裏返しであり、より優れた加虐者がいれば積極的に主人を交換しようとする関係性の享楽こそが本質である。無垢なるままに奉仕者と受益者の立場を行き来する『少...
なるほど、タイトルも含め谷﨑の入門書としては格好の一冊だ。マゾヒズムとは一方的な被虐者を装いながらそれ以上に束縛しようとする独占欲の裏返しであり、より優れた加虐者がいれば積極的に主人を交換しようとする関係性の享楽こそが本質である。無垢なるままに奉仕者と受益者の立場を行き来する『少年』の完成度は素晴らしく、その世界観を構築するために言葉の一つ一つが奉仕者として主題の鮮やかさ、艶めかしさを引き立てる。そう、谷崎の本は主題以上に、徹底的に責め立てられることで妖艶に花開く言葉自身がマゾヒズム性を帯びているのだ。
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何年か前のナツイチで新しい分野を開拓しようと購入して、今まで積読(^^;)文章は好きなんだけど、内容は共感出来なかった(--;)最後のみうらじゅんさんの鑑賞を読んで、私にはSもMも才能がないと感じる。さらに本当の変態しか、本当の愛を味わえないって…(._.)ぷち変態の私には理解出...
何年か前のナツイチで新しい分野を開拓しようと購入して、今まで積読(^^;)文章は好きなんだけど、内容は共感出来なかった(--;)最後のみうらじゅんさんの鑑賞を読んで、私にはSもMも才能がないと感じる。さらに本当の変態しか、本当の愛を味わえないって…(._.)ぷち変態の私には理解出来ないの当たり前か?(^^;)「痴人の愛」を先に読んだ方が良かったのかなぁ…
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文豪・谷崎潤一郎のマゾヒズム、被虐趣味的な短編を集めた作品。 「マゾヒズム」と聞くと女王様に鞭打たれたりロウソクで責められたりだとかハードな調教で悦ぶドマゾが思い浮かぶと思うけど、ここに載ってるのはわりとソフトなマゾばっかり。 「遊び」を通じてマゾに目覚める少年や、人に笑わ...
文豪・谷崎潤一郎のマゾヒズム、被虐趣味的な短編を集めた作品。 「マゾヒズム」と聞くと女王様に鞭打たれたりロウソクで責められたりだとかハードな調教で悦ぶドマゾが思い浮かぶと思うけど、ここに載ってるのはわりとソフトなマゾばっかり。 「遊び」を通じてマゾに目覚める少年や、人に笑われて女にいじめられてヒイヒイ喜んじゃう太鼓持ちの男、国を傾ける悪女から逃げられない皇帝(この話は音読すると気持ちいい)、不思議な魅力をもつ魔術師に醜い動物に変えられる男に、一人の毒婦を奪い合って堕ちていく三人の男。 いいように使われてるのも遊ばれてるのもわかってる、でもこうして女に振り回されるのがどうにもやめられない、堕ちる悦びにうち震える、もうどうしようもない男たちの見本市。 谷崎潤一郎読んでみたいけど、どこから始めればいいの…って人におすすめの一冊。
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<谷崎潤一郎犯罪小説集>が素晴らしく好みだったので、「じゃあ次…」と思ったらそのものすぎる小説集…!果して。美しかったー、やっぱり文章が本当に美しい!狂気を美しくとろかす文章。すごく好き。一番好きなのは<魔術師>だけど、<麒麟>と<一と房の髪>も好き。<少年>はラスト以外ちっとも...
<谷崎潤一郎犯罪小説集>が素晴らしく好みだったので、「じゃあ次…」と思ったらそのものすぎる小説集…!果して。美しかったー、やっぱり文章が本当に美しい!狂気を美しくとろかす文章。すごく好き。一番好きなのは<魔術師>だけど、<麒麟>と<一と房の髪>も好き。<少年>はラスト以外ちっとも好きじゃないけど、ピアノの音の描写が美しすぎてうっとりした。倒錯って一種の狂気で、美しい文章でとろけて流れだす狂気は本当に魅惑的。それにしても!最後のみうらじゅん氏の鑑賞とかいう文章、蛇足じゃないですか…。全力で好きじゃない!
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比較的初期の短篇を6篇集めたもの。他の文庫なら、タイトルは普通に「少年・幇間」などとするところを、あえて『谷崎潤一郎マゾヒズム小説集』と銘打った。これで新たな読者を開拓しようとの目論見だろうが、『フェティシズム小説集』とともにまずは成功か。ただし、これだと例えば篇中の「少年」等を...
比較的初期の短篇を6篇集めたもの。他の文庫なら、タイトルは普通に「少年・幇間」などとするところを、あえて『谷崎潤一郎マゾヒズム小説集』と銘打った。これで新たな読者を開拓しようとの目論見だろうが、『フェティシズム小説集』とともにまずは成功か。ただし、これだと例えば篇中の「少年」等をマゾヒズムの枠組みに固定してしまうことで、他の要素から遠ざけてしまうという欠点も併せ持つ。「少年」、「幇間」、「魔術師」などは耽美、幻惑、哀しみに満ちており、谷崎の筆法は冴えに冴えている。それぞれの短篇は長編に優に匹敵する密度だ。
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