僕らの青春 の商品レビュー
新聞の連載が元になっているせいか、前半はちょっと人物紹介がくどい感じがしたり、後半のまとめかたはダッシュしてしまった感もあるが、やっぱり物語の名手の作品だなあ。けれど、初出から30年以上経ち、没後何年も経ってから、編集者が「受験戦争でいまの青春を失いつつある高校生へのメッセージ」...
新聞の連載が元になっているせいか、前半はちょっと人物紹介がくどい感じがしたり、後半のまとめかたはダッシュしてしまった感もあるが、やっぱり物語の名手の作品だなあ。けれど、初出から30年以上経ち、没後何年も経ってから、編集者が「受験戦争でいまの青春を失いつつある高校生へのメッセージ」が込められた本書をハードカバーで出版することを決めたのはかなり例外に属するのではないだろうか。当時、書籍化が見送られたのは、半村良の世界のなかでは軽くて、半端なものという認識があったからだろう。受験戦争は30年前よりおだやかになっていていいはずなのに、現在の高校生の「青春」は、一見すると自由極彩色でありながら、どこか一途さを失っているようにも見える。今の大学生は、この本をどう読むだろう。それと同時に、本書に登場するような態度で子どもたちに接するおとなたちは減っているのかもしれない。その意味で、高校生の親や教師へのメッセージとしても読める。
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半村良が亡くなってすでに8年。今頃になって新刊が登場するなんて半信半疑だった。確かに河出書房新社は没後5年頃から半村作品の文庫化に積極的だったけれど、、、手に取ってみると復刻版ではなく確かに新刊。その訳は、新聞連載小説で(1978年上半期に「東京中日スポーツ」に連載)、これまで単...
半村良が亡くなってすでに8年。今頃になって新刊が登場するなんて半信半疑だった。確かに河出書房新社は没後5年頃から半村作品の文庫化に積極的だったけれど、、、手に取ってみると復刻版ではなく確かに新刊。その訳は、新聞連載小説で(1978年上半期に「東京中日スポーツ」に連載)、これまで単行本化されていなかったためらしい。ともあれ、没後しばらくしてから、昔好きだった作家の新刊に遭遇するのは驚きであり喜びだ。著者の母校の両国高校をモデルにしたと思われる「下町高校」なる都立進学高校を舞台に、懐かしき30年前の高校青春スポーツ物語が展開される。しかしながら、いかんせんムードの古めかしさが顕著。登場人物それぞれがちょっとひねったニックネームで呼ばれるなど、あの頃は古き良き時代だったのだなあとの述懐なしには読めない内容だ。これが分かるということは、少なくとも現在50歳台、、、年齢がばれるってことかも。半村流のユーモアが懐かしかった。
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下町にある都立の進学校「下町高校」。進学校である故に生徒も教員も受験対策中心の学校生活で運動部も文化部もおよそ部活動は全て休眠状態。そんな中、家庭の事情で進学を諦めた主人公と友人とが「実はうちの高校、名人級の野球の上手いヤツが9人くらいはいるんだよ」という処から始まって、都内の強...
下町にある都立の進学校「下町高校」。進学校である故に生徒も教員も受験対策中心の学校生活で運動部も文化部もおよそ部活動は全て休眠状態。そんな中、家庭の事情で進学を諦めた主人公と友人とが「実はうちの高校、名人級の野球の上手いヤツが9人くらいはいるんだよ」という処から始まって、都内の強豪校と一試合だけ戦って周りの連中に一泡吹かせてやろう…となった進学校の野球部物語。名人半村良の軽青春物語。校長の「下町っ子の意地」に拍手
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