はだかのくすりゆび(3) の商品レビュー
愛情と欲望は同じものなのか並び立つものなのか
前巻のレビューで予想した結末もテーマも大ハズレだったが、それでも登場人物をポンポン増やすでもなく、限られた中でコンパクトに纏めたのは良かったと思う。完結するのは残念だが、これ以上続けても散漫になってテーマがぼやけるだけかもしれない。何より本巻1冊を丸々用いて物語を淀みなく紡ぎ、結...
前巻のレビューで予想した結末もテーマも大ハズレだったが、それでも登場人物をポンポン増やすでもなく、限られた中でコンパクトに纏めたのは良かったと思う。完結するのは残念だが、これ以上続けても散漫になってテーマがぼやけるだけかもしれない。何より本巻1冊を丸々用いて物語を淀みなく紡ぎ、結末の好みは別にしても最終話できちんと結んだことで本作には得も言われぬ品格が漂ったと思う。 さて、本巻では翠の第2の不倫相手として既出の人物が再登場する。ここで光るのは、翠の淫らな欲望が能動的に暴走するのではないところ。娘の元(?)婚約者志人との背徳極まる関係はエスカレートする一方なのだが、同時に「あー、やっぱり不倫なんだなぁー」という限界、後ろめたさを背景にした愛情と欲望との狭間で悩む展開が持ち込まれるのが生々しくもある。想いが強過ぎて重過ぎるがために男の側が及び腰になったようにも見えるが、このことを通じて、また、第2の不倫相手との再会と情交を通じて愛情と欲望に翠なりの答えを導き出したことが本作のテーマと言えよう。 情交描写については今回もまた秀逸。冒頭から志人との爛れた日々が描かれているが、ここまで志人によってしっかり開発されていながら、第2の不倫相手によってさらに開発されて高まっていく描写が淫猥極まりない風情で描かれていく。ここで面白いのは、密戯が夫の目に触れてしまう、いわゆる寝取られ描写が終盤にあるのだが、別の男に寝取られる夫は当然として、志人との関係を本線として見れば、読み手もまた夫とは別の意味で若干寝取られたような気にもなることである。しかし、あれだけ奥手で堅物だった翠が最後には物凄く成長したようにも見え、何だかやっぱり女って怖いな、みたいな奥深さを、悲哀と艶っぽさと共にしっとり見せてくれた作品だったと思う。
DSK
最終巻。肉欲に溺れるように週に三度の逢瀬を交わすユキトと翠(みどり)。しかしユキトの心に偽りはなくとも若さからくる純真さが自らの行為を単なる肉欲か本物の愛情か分からなくし、迷いが二人の関係に変化をもたらす。 濡れ場を要所に入れながら200pに綴られた物語としてはよく描けていると...
最終巻。肉欲に溺れるように週に三度の逢瀬を交わすユキトと翠(みどり)。しかしユキトの心に偽りはなくとも若さからくる純真さが自らの行為を単なる肉欲か本物の愛情か分からなくし、迷いが二人の関係に変化をもたらす。 濡れ場を要所に入れながら200pに綴られた物語としてはよく描けていると思う。こういう作品を描ける作家が続いて出てくることをいつも願っているがまだまだ艶々先生には頑張ってもらう必要がありそう。 ちなみに、艶々氏全作品の中で本作の主役となった翠さんは、一番のお気に入りです。
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