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ルポ 差別と貧困の外国人労働者 の商品レビュー

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19件のお客様レビュー

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2013/05/26

「では、日本人の側は、本当に我々ブラジル人と交流したいと望んでいるのですか?」 自分が生きるこの日本のどこかで…もしかしたら目と鼻の先で…虐げられ続けている人たちがいることを知ることで、彼らの視点を知ることで、自分たちの見えていなかった日本の別の姿が見えてくる。 すなわち、外か...

「では、日本人の側は、本当に我々ブラジル人と交流したいと望んでいるのですか?」 自分が生きるこの日本のどこかで…もしかしたら目と鼻の先で…虐げられ続けている人たちがいることを知ることで、彼らの視点を知ることで、自分たちの見えていなかった日本の別の姿が見えてくる。 すなわち、外からやってくる人たちに冷たい日本という国、日本人たち。それらは任される仕事のキツさの差であったり、ヨソ者に対しての無関心・非協力的な態度・姿勢etcに表れているように思える。 時代の流れで苦境に立たされた中小・零細企業の弱みにつけ込み、研修生を充てがい、暴利を貪る送り出し機関… マトモな労働契約を結ぶことなくこき使われ、リーマンショックという不況の波に飲まれた途端、ポイされる出稼ぎ労働者たち… 本書の基となった、中国人やブラジル人相手の取材において、著者は時折、外国人の立場に立っていない発言をうっかりしてしまうが、そういう様子の描写に、著者の「相手と真摯に向き合おうとする姿勢」が表れているように感じられ、また良かった。 冒頭の質問は、とあるインタビューにおける著者の「ブラジル人の側も、もっと積極的に日本人、日本社会と関わりをもつよう、努力すべきではないか」(P226)という発言に対する返答であった。"ありがちな日本人"が実は著者の中にも存在しており、それに関して苦笑する著者の姿が垣間見得るようでもある。

Posted byブクログ

2013/05/10

『ネットと愛国』の人の、別の本を読んでみる。奴隷労働ともいわれる「外国人研修・技能実習制度」(政府は、これが国際協力であり国際貢献だと言い続けている)によって日本で働く中国人の状況を第一部で、移民としてブラジルへ渡った日本人の子孫が、日系デカセギ労働者として働く状況を第二部で、そ...

『ネットと愛国』の人の、別の本を読んでみる。奴隷労働ともいわれる「外国人研修・技能実習制度」(政府は、これが国際協力であり国際貢献だと言い続けている)によって日本で働く中国人の状況を第一部で、移民としてブラジルへ渡った日本人の子孫が、日系デカセギ労働者として働く状況を第二部で、それぞれ追ったルポ。 「単純労働者は受け入れない」というタテマエを崩ささない日本政府は、日本において単純労働に携わる研修生・技能実習生や日系人を、あくまで「例外」として位置づけてきている。けれど、その「例外」と位置づけられる人たちの働きによって、食べるもの、着るもの、自動車、家電など、日本の産品の多くは成り立っている。 研修生・技能実習生の制度がひどいものだということは耳にしていたけれども、第一部で明らかにされていく、この制度によって「働く」人たちの実態を読むと、たまらなくなる。消費者として手にするものの「安さ」や「国産という安心感」みたいなもの、それは下へ下へとしわ寄せされた要求を、最後のところでこうして「働く」人たちに無理やりのんでもらうことで成り立っているのだと、ぐさぐさと突き刺さる。 ▼過疎地の農場や、元請けからの無茶な要求に泣かされる縫製工場の経営者が追い詰められた挙げ句、さらに弱い立場の者を下部に置くことで、帳尻を合わせる。なんと残酷なピラミッドなのか。真っ先に傷つくのは研修生であり、そして、その責任を取らされるのは受け入れ企業である。大手スーパーも、デパートも、メーカーも、アパレル会社も、地場産業の衰退など知ったことではない。大企業から見れば、下請け工場や農場など、研修生同様「使いまわしのきく労働力」に過ぎないのだ。ミシンの軋む音は、研修生の悲鳴であり、零細経営者の慟哭である。  「国内産」「Made in Japan」──食料品や洋服に貼られたラベルを見るたびに、私は目に見えないもうひとつのラベルを想像する。  Made by Chinese──。  日本の地場産業を支える、外国人の姿だ。(pp.149-150) 日本人の「労働者」に対して、携帯電話やパソコンをもつのは禁止だとか、残業の時給が300円だとか、1日十数時間働いて5万円だとか、どんなにブラックな企業であっても、それはしないだろうということが、外国人の研修生相手にはまかりとおっている。 しかも、トイレの休憩時間さえわずかな対価から引く会社さえあるという。ぎちぎちにつまった、しかも長時間の労働。研修生かどうかはわからないが、勝山実さんが「おでん工場」でバイトをしたとき、人間のスピードに機械をあわせるのではなくて、MAXを振りきるような最速の機械のスピードに人間があわせることになっていたと、『ひきこもりカレンダー』で書いていた。 勝山さんはその仕事から「降りる」のだが、周りで働いていた外国人労働者は、その非人間的なスピードの仕事に文句も言わず、黙々と働いていたという。その光景が、この本で書かれている過酷な現場に重なる。 未払い賃金や慰謝料を求めて実習先企業を訴えた研修生が、判決後、「勝訴」の垂れ幕とともに「我們不是奴隷(私たちは奴隷ではない)」と掲げたところに、問題がはっきりとあらわれていると思う。 ▼派遣切りは外国人から始まった。もっとも弱い部分から、はじかれる。  人手が足りないときは形だけ持ち上げられ、不況のときは真っ先にクビを切られる。これが、いわゆる非正規労働者というものだ。昨今、この非正規をめぐる議論は喧しい。だが、外国人は30年も前からずっと、こうした働き方を強いられてきた。日本経済にとって、ひたすら都合の良い存在であり続けた。企業の繁栄を支え、あるいは不況企業の延命に力を貸した。しかし我々の社会は、その外国人を社会の一員として明確に認識したことがあっただろうか。(p.311) フリーターが問題になったのは、大卒の男がフリーターに現れはじめたからだった。女性の多くは、ずっとずっとそういう働き方をしてきたけれど、問題にされることはなかった、というのがぼんやり思い浮かぶ。……"女は前からずっと、こうした働き方を強いられてきた。日本経済にとって、ひたすら都合の良い存在であり続けた。"と、読みかえても、同じように通じるなと思う。 (5/6了)

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2013/04/18

日本での実際の仕事を通じ母国にその技術を持ち帰ろうとする外国人労働者のドキュメント。 職業体験とは言葉だけの低賃金での労働や、劣悪な条件での生活。 力のないものからあらゆる手段を使ってなけなしの金を搾取する日本人の話とかがあった。

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2012/04/21

少なくとも農業研修で、まともな「研修」として機能しているところなどほとんど無く、以前畜産農家の地域を実習で回っていた時に、「ここの農家はこき使いかたが酷い」と苦笑交じりに言われたことに対して何も出来なかったのを思い出す。畜産動物の飼養環境を気を使っているのを売りにしているところが...

少なくとも農業研修で、まともな「研修」として機能しているところなどほとんど無く、以前畜産農家の地域を実習で回っていた時に、「ここの農家はこき使いかたが酷い」と苦笑交じりに言われたことに対して何も出来なかったのを思い出す。畜産動物の飼養環境を気を使っているのを売りにしているところがあるが、そこで働く人の環境や権利を我々は気にしているのだろうか。奴隷労働に依存しなければ維持できない産業など滅びてしまえと思う。

Posted byブクログ

2012/03/13

2005〜2010年の中国人不法労働者(研修生)、日系ブラジル人移民労働者の環境について記載されています。 一番衝撃的だったのは、日系ブラジル人労働者の雇用を、違法な中国人研修生の"雇用"が奪っていっている点です。 グローバル化の波の中で、世の中はどんどん仁義...

2005〜2010年の中国人不法労働者(研修生)、日系ブラジル人移民労働者の環境について記載されています。 一番衝撃的だったのは、日系ブラジル人労働者の雇用を、違法な中国人研修生の"雇用"が奪っていっている点です。 グローバル化の波の中で、世の中はどんどん仁義なき展開を見せるのでしょうか。 1) 中国人研修生制度の実態は、記載が真実なら陰惨です。奴隷労働に近いそうです。 中国側・日本側双方に不法な人材紹介ビジネスを営むひとたちが居るそうです。 ビジネスを手掛けるひとたちは斜陽産業に身を置いていて、手を出さなければ自分たちも路頭に迷うとのことです。 敗者が別の敗者を生む構造です。 凄惨な実態が書かれているのですが、少なくともぼくは全く無知でした。 入管で働いてる友人も「なんか聞いたことはあるけどよく知らない」と言っていました。 「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」(不管 猫白猫,捉到老鼠就是好猫)で発展してきた中国。 グローバル化の波に耐えかねて不法に手を出さざるを得ない斜陽産業の経営者。 狭間で世代を越えて搾取される中国農村部のひとたち。 手出し無用を決め込む日本の警察。 知ってか知らずか殆ど何も報道しない日本のマスコミ。 東京に来てみて「東京の居酒屋とコンビニは中国の店員さんばっかりだなぁ」と驚いてから数年経ちますが、 実は田舎にも中国のひとたちは少なからず住んでいるようです。 ぼくが住んでいた北国や、いま住んでいる所にも、外出の自由もなく、インターネットの自由もなく、ただ缶詰めで不当・架空の借金に縛られている中国のひとたちが居るようです。 そして彼らが「国産」の農産物・畜産物や、衣料品などを作っている〜〜と、書かれていました。 憤ると共に、自分はそのような立場に、搾取する側にも、される側にも堕してはいけないと、決意するのでした。 いや、大企業で正社員をしているだけで、充分搾取する側に身を置いています。そのことは、自覚しなければならない。 ある移民問題に関連する仕事をしている友人は移民反対派の考えを持っていました。「治安悪化」という考えが論拠でした。 一方で、この本の内容が本当であれば、問題は移民労働者個々人のモラルなどというミクロな問題ではなくて、社会構造というとてもマクロな問題です… 2) 日系ブラジル人労働者の話は、陰惨な中国人研修生の後だっただけに、むしろすこしほのぼのした雰囲気すら漂っていました。 いや、リーマンショック後の彼らの境遇もまた不遇なのですが… 不遇な境遇すら牧歌的に思えてしまうほど、中国人研修生問題は悲惨です。。 日系ブラジル移民の歴史と現在をすこし知ることができました。

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2011/10/15

私は中国人研修生受け入れの仕事に足を踏み入れようとしたことがある。業務上仕方がなくて、最初は中国にいけるとか結構乗り気だったのだけど、だんだん嫌になってきて、けっきょく逃げた。 今はその自分の過去を深く恥じている。 まさに、恥じているという以外に言葉がない。 「いいこととは言えな...

私は中国人研修生受け入れの仕事に足を踏み入れようとしたことがある。業務上仕方がなくて、最初は中国にいけるとか結構乗り気だったのだけど、だんだん嫌になってきて、けっきょく逃げた。 今はその自分の過去を深く恥じている。 まさに、恥じているという以外に言葉がない。 「いいこととは言えないけど、世の中ってこんなものだろう。それに自分も状況的にしょうがないし。俺に何をしろっているんだ?」と考えていた過去の自分を憎んでいる。

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2011/04/12

[ 内容 ] 日本経済にとって、外国人労働者は都合の良い存在であり続けた。 企業の繁栄を支え、あるいは不況企業の延命に力を貸してきた。 しかし日本は、その外国人を社会の一員として明確に認識したことがあっただろうか。 第一部では、「奴隷労働」とも揶揄されることも多い、「外国人研修・...

[ 内容 ] 日本経済にとって、外国人労働者は都合の良い存在であり続けた。 企業の繁栄を支え、あるいは不況企業の延命に力を貸してきた。 しかし日本は、その外国人を社会の一員として明確に認識したことがあっただろうか。 第一部では、「奴隷労働」とも揶揄されることも多い、「外国人研修・技能実習制度」を使って日本に渡ってきた中国人の過酷な労働状況を概観する。 第二部では、かつて移民としてブラジルへ渡った日本人の主に子どもや孫たちが、日本で「デカセギ労働者」として味わう生活と苦労、闘う姿を追う。 こうした中国人研修生・実習生と日系ブラジル人を中心に、彼ら・彼女らの心の痛みを描きながら、日本社会をも鋭く映す、渾身のルポルタージュ。 [ 目次 ] 第1部 中国人が支える、日本の底辺重労働(北京政府公認の「最優秀校」;「日中のビジネス」が生んだ悲劇;研修制度とは何か;強制帰国;私たちは人間扱いされていないんです;二十一世紀の人身売買;目に見えないラベル) 第2部 日系ブラジル人、移民たちの闘い(デカセギと移民の血;繁栄を支える;「例外的に自由に働ける外国人労働者」;共生への実験;行き場を失う人々;泣き寝入りはしない;サンパウロ―「日本」が息づく街;トメアス―日本から最も離れた場所で) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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2010/08/26

外国人の支援ボランティアを数年来やってきましたが 就労に関しては最悪の状態になってきていますよね。 単純労働の製造関係から、現実の舞台は福祉介護現場へとシフトしつつあると思います。いろいろな意見はあると思いますが、彼らの置かれている状況をぜひこの本を読んで知っていただきたいです。

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2020/07/27

外国人労働者の奴隷生活。企業の不誠実さに憤りを感じるが、日本だけでなくどこの国でも言葉の不自由な外国人労働者は同じ様な扱いをされるんだよね。タイで7年働いていた妻が、そんなのはおかしいとは思うが、経営者側は仕方の無い判断ではと言い放つのに驚く。厳しい環境で働けるのなら、働かせたら...

外国人労働者の奴隷生活。企業の不誠実さに憤りを感じるが、日本だけでなくどこの国でも言葉の不自由な外国人労働者は同じ様な扱いをされるんだよね。タイで7年働いていた妻が、そんなのはおかしいとは思うが、経営者側は仕方の無い判断ではと言い放つのに驚く。厳しい環境で働けるのなら、働かせたらいいと言うのは、如何なものか。人間を便利使いしてはいかん。

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