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スーパーキャラクター実践セミナー の商品レビュー

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2010/03/16

やさしい語り口と文章で、コミック・キャラクターを作る際の歴史やヒントなどをまとめたとても読みやすいマンガ論。 あくまで「論」であって、キャラクター・デザインや作画技法など、ビジュアル的な技法解説はないことに注意してもらいたい。 キャラクターの性格や分類、描写方法、キャラクター...

やさしい語り口と文章で、コミック・キャラクターを作る際の歴史やヒントなどをまとめたとても読みやすいマンガ論。 あくまで「論」であって、キャラクター・デザインや作画技法など、ビジュアル的な技法解説はないことに注意してもらいたい。 キャラクターの性格や分類、描写方法、キャラクターを演技させる(動かす)ポイントなどを、マンガ・アニメ・映画、伝説などの例などを交えて解説している。 アメコミキャラクター(スーパーマン、バットマン、スパイダーマン)や、海外でも人気のある作品(マッハGO!GO!GO!、ドラゴンボール、カウボーイビバップ)などの例からはじまり、ハローキティやポケモンといった「かわいい」キャラクターの例、手塚治虫や、あしたのジョーなどのマンガ・キャラクターに見られる性格のポイントなどがまとめられている。 また、天使と悪魔、ギリシャ神話などの歴史・伝説、大岡昇平「野火」、夏目漱石「こころ」、武者小路実篤「友情」、芥川龍之介「手巾」、野村胡堂「銭形平次捕物帖」、佐々木味津三「右近捕物帖」、「西遊記」、「オズの魔法使い」などの文学・娯楽小説、童話、「十二國記」「ナルニア国物語」などの小説、ヒッチコック「北北西に進路とをれ」などの映画、なども例にしている。 こうした作例と合わせて、グスタフ・フライタークの「フライタークの曲線」や、ロジェ・カイヨウの分類した4つの遊び、ジョハリの窓など、アカデミックな例えも交え、キャラクターを作るポイントをまとめており、キャラクター作りの歴史から作例を学ぶことができる。 平易で読みやすい文章に合わせ、挿絵も良質だ。描き手は表紙と同じ大阪芸術大学の学生とのことだが、昨今の専門学校生に描かせた絵よりずっと出来がよく、2等身〜8等身、コミカルな絵まで、話に合わせたとてもよい挿絵になっている。 本文はすべてモノクロで、ほぼ文章で構成されており(ただし挿絵はとても多い)、内容はヤングアダルト向けのマンガ入門、または新書なみの広く浅いマンガ論といった基礎的な内容だ。ヤングアダルトコーナーのマンガ講座本・入門書に合っていると思う。 しかし、専門学校や大学生を対象とするには、あまりに基本的で浅く、マンガ論としても偏りのある内容だ(タイトルに「セミナー」とあるので、対象読者としては専門学校生などを考えているのだろうが)。 内容が浅すぎるし、挿絵は多いものの、こうしたマンガ論を語るときに必要な過去の作例などのイラスト引用がまったくないため、歴史を語るには資料性が乏しい。 また、うえに上げた作例の一部を見てもわかるとおり、少女マンガの作例や、1990年代〜現在に至る例がほとんどなく、マンガ論としてはとても偏った構成となっている。 「かわいい」の作例がハローキティやポケモン、等身の違いなどしかあげられないのも、例としてとても弱い。 筆者は1969年法政大学文学部英文学科卒、『子連れ狼』などで知られる小池 一夫に師事したとあるから、扱う作例が古いものや純文学、古典映画だったのもある程度仕方がないことだとは思うが……。 キャラクターメイキングの技法なら、(民俗学と手塚治虫に偏りがあるが)大塚英志などを参考にするとよいと思う。

Posted byブクログ