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再生可能エネルギーの政治経済学 の商品レビュー

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7件のお客様レビュー

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2021/12/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この本が出たのが2010年3月11日。奇しくも東日本大震災が起きるちょうど一年前。 その時点で刊行されたこの本では、非常に分かりやすく「原子力は再生可能エネルギーではない」「原子力は石油や石炭に比べても効率的でもなく、エコでもない」ということが明言されている。こういう冷静で客観的な議論ができるだけの事実が積み重なっていたにもかかわらず、どうして原子力は推進されてしまったのか、また、東日本大震災に伴う原発事故のような絶望的な人災が起きていながら、なぜいまだに原子力エネルギーの開発を継続していこうという機運が残っているのか、この本を読んだ今では理解に苦しむばかり。 本のタイトルが絶妙で、結局のところ、「環境負荷も低く客観的に見ても有効で、安全なエネルギー」が必ずしも常に選択されるわけではないという点で、エネルギー政策はまさに「政治」経済学であり、政治による恣意的な選択と傾倒により経済的な、あるいは倫理的な正当性が歪められるのだろう、ということが分かる。 せめて、選挙で政治を選ぶにあたっては、こういう視点について無知であったり盲目であったりしないようにしなければ、と思う。

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2017/03/09

これまでの日本のエネルギー政策は、原子力を優遇するものであったが、現実の発電実績からすれば、原子力は安価であるとはとうていいえない電源であり、また、再処理政策は将来に莫大なツケを残すものであると指摘し、原子力発電をエネルギー政策の根幹に据える経済的合理性はないと主張する。そして、...

これまでの日本のエネルギー政策は、原子力を優遇するものであったが、現実の発電実績からすれば、原子力は安価であるとはとうていいえない電源であり、また、再処理政策は将来に莫大なツケを残すものであると指摘し、原子力発電をエネルギー政策の根幹に据える経済的合理性はないと主張する。そして、旧来のエネルギー政策から再生可能エネルギーの拡大を推進する政策へとエネルギー政策を転換すべきであるとして、固定枠制(アメリカ・テキサス州)、競争入札制(イギリス)、固定価格制(ドイツ)という再生可能エネルギー拡大政策の事例を紹介し、再生可能エネルギーの拡大には、固定価格制が最も優れていると指摘している。 原発の危険性・コストや再生可能エネルギーの可能性が注目されるきっかけ東日本大震災の直前に出された本で、先見の明を感じた。ちょっと再生可能エネルギーについて楽観視しすぎている点は気になるが、原発を含めた日本のエネルギー政策を考えるうえでは必読といえる。

Posted byブクログ

2013/01/11

著者の博士論文(一部改変)だそうです。博士論文が本になるってすごいなぁと単純に思いました。 興味深い内容は、日本が政策面で、原発に労力とお金をいかに費やしてきたかを検証する部分。それによって再生エネルギーの政策が遅れてしまったことも指摘。 専門的でやや厚い本だが、この分野にありが...

著者の博士論文(一部改変)だそうです。博士論文が本になるってすごいなぁと単純に思いました。 興味深い内容は、日本が政策面で、原発に労力とお金をいかに費やしてきたかを検証する部分。それによって再生エネルギーの政策が遅れてしまったことも指摘。 専門的でやや厚い本だが、この分野にありがちな「はしょりすぎて逆によく分からん本」を読むくらいならこれを読むことをオススメ。

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2012/08/18

現代の環境・エネルギー政策の課題として、「環境・エネルギー問題が現状の政策から生み出されたものである以上,現行の政策上の誤りやゆがみを除去しなければならない.これが行われなければ,仮に新しい社会的基盤のための新しい政策がとられたとしても,既存の構造は残されたままである.その結果,...

現代の環境・エネルギー政策の課題として、「環境・エネルギー問題が現状の政策から生み出されたものである以上,現行の政策上の誤りやゆがみを除去しなければならない.これが行われなければ,仮に新しい社会的基盤のための新しい政策がとられたとしても,既存の構造は残されたままである.その結果,新しい政策やそれによって生み出されたインフラの効果は減殺されるし,資金上,政策上の資源配分で矛盾が生じる.それゆえ,環境保全の観点からの現行政策の徹底的見直しを行い,まずは問題を除去することが必要である」と。 原子力発電の割合を低くして再生可能エネルギーの依存度を高めようとすると、経団連が経済活動が立ち行かなくなると言う。これまでの産業資本主義を固持するのであれば、大量生産大量消費を維持するために原発が必要不可欠なのかもしれない。 けれど、大量生産大量消費をする社会が社会の形態として唯一の解なのであろうか。その社会の弊害として、有事の際に人間が対応できないエネルギー供給システムが作られてしまったのではないか。エネルギーは人間の活動と密接に関わってくる。だからこそ、エネルギー供給を受けている人間が、自身でエネルギーを管理出来るようになることが重要なのではないだろうか。その世界では、これまでの大量生産大量消費社会は成り立たないだろうが、新しい経済ステムを構築するチャンスではないだろうか。

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2011/11/08

1~3章をざっと読みました。 2章のコスト計算の計算式は文系のわたしには理解が難しかったので。 まず、原発建設のために多額の財政出動がなされている、しかし核燃料サイクルはほぼ実現不可能、そんな現状で原発が推進される唯一の理由は経済的な優位性だという。 しかし、開発、立地にかかる...

1~3章をざっと読みました。 2章のコスト計算の計算式は文系のわたしには理解が難しかったので。 まず、原発建設のために多額の財政出動がなされている、しかし核燃料サイクルはほぼ実現不可能、そんな現状で原発が推進される唯一の理由は経済的な優位性だという。 しかし、開発、立地にかかるたくさんの補助金、不確定なバックエンド事業にかかる莫大な費用、そして本著では含まれなかったが、事故の際の損失費用を合わせると、原発は決して「安くない」。 そもそも事故を前提としているかのようにコスト計算に含むこと自体、異常なようだし、核燃料サイクル事業には莫大な費用がかかる。 将来的に見てもウランは無制限にある資源でもないから、長期的に再生可能エネルギーに移行していくことは絶対に必要になってくると思った。

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2011/07/21

現在の日本の原子力政策について、コストがかかりすぎる、対地球環境問題の政策として失敗であると論証した上で、再生エネルギーの可能性を示す著作。面白いが著者の博士論文をもとにしているので、本当に中身を理解しようとすると根気がいると感じた。ただ、筆者の主張の大筋をつかむにはそんなに苦労...

現在の日本の原子力政策について、コストがかかりすぎる、対地球環境問題の政策として失敗であると論証した上で、再生エネルギーの可能性を示す著作。面白いが著者の博士論文をもとにしているので、本当に中身を理解しようとすると根気がいると感じた。ただ、筆者の主張の大筋をつかむにはそんなに苦労しない。非常に示唆的で面白い。

Posted byブクログ

2011/06/14

毎度毎度新エネルギーの資料として参考にさせてもらっているが、非常に明快で分かりやすい。原発のコストについて、考察を加えている。

Posted byブクログ