医薬品業界「特許切れ」後の挑戦 の商品レビュー
国内大手製薬メーカーの抱える課題を「特許切れ」を軸に明らかにする。主要疾患治療薬ごとに実名と正確な数値をあげて市場分析を行っており、具体的に全貌を把握できる。終章にはメーカーの今後の生き残り戦略が描かれている。それぞれのメーカーの今後を期待をもって眺めたい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
先発メーカーがとるジェネリック対策には。配合剤開発、効能追加、剤形追加と訴訟がある。 配合剤開発とは、たとえば特許が切れた先発薬と特許が切れていない自社薬品とを組み合わせる。たとえば高血圧治療薬プロプレスは利尿剤と一緒に飲むと効果が上がることがわかったため、プロプレスと利尿剤との配合薬が発売されている。患者は1錠の服用で済むという効果もある。しかし、プロプレスの特許が切れていても、この配合薬のジェネリック薬はつくれないことになる。 効能追加とは、例えば免疫抑制剤プログラフについて、潰瘍性大腸炎へ対象疾患を拡大、腎臓移植における拒絶反応の抑制でも追加効能が認められている。抗菌剤クラ ビットは、06年に特許が切れたが、レジオネラへの効能追加を申請し、2011年まで5年間の特許延長が認められた。この効能追加が延々と認められれば、先発薬の特許がいつまでも延長され、ジェネリックは成立しなくなる。 >>効能追加による特許期間延長の倫理的な是非はともかく、新薬メーカーの特許に対する執念に感心する。エレクトロニクスも、90年代に開発された技術の基本特許が切れるという問題に直面しているが、その延命を図るというような特許に対する執念をみせていない。このあたり、新薬メーカーの戦略に学ぶべきところも多い。 京都大学はips細胞特許に関してipsアカデミアという会社を立ち上げ、民間が使用できるようにした。こ の会社にライセンス料100万円を支払えばips細胞を使って研究できる。使用期限は5年間で基礎研究に限るという条件がついているが、年にすれば使用料は20万円 破格のはすさだから多くの研究機関がよりips細胞の研究に取り組むことで再生医療の早期の発展を目指すことを狙っている。 >>公的な大学が特許をもつことで、ライセンス料云々よりも、欧米の他社に特許をとられずに済んだことの意義のほうが大きい。技術を独占せず、オープンにして他社が容易に改良できるようにしたほうが、結局のところ基本技術の活用も広がる。
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いわゆる医薬品2010年問題。 国内製薬メーカーの主力薬が相次いで特許切れが起こること。 特許が切れるということは、ジェネリックの発売が可能になる。 つまり、競争優位は喪失し、売上も当然下がる。 さあ、どうしていくべきか?について記述されている。 とにかく、読むと創薬中心の国...
いわゆる医薬品2010年問題。 国内製薬メーカーの主力薬が相次いで特許切れが起こること。 特許が切れるということは、ジェネリックの発売が可能になる。 つまり、競争優位は喪失し、売上も当然下がる。 さあ、どうしていくべきか?について記述されている。 とにかく、読むと創薬中心の国内製薬メーカーの先行きは暗い。 競争優位の源泉である新薬開発が思うようにいかないと感じるからだ。 研究開発費の捻出面、バイオへの取り組みの遅れ、行政面・・・ 結論から言えば、やはりリスクヘッジの重要性。 とにかくいろいろと試してみる必要性を感じる内容。 成長産業と目される医薬品であるが、 国民医療費の問題が付きまとうため、 無尽蔵の市場拡大などありえない話であり、 結局はパイの取り合いになるという論調は衝撃的であった。 医薬品自体についてもかなり細かく踏み込んだ内容であり、 少し知識がないと厳しいが、 医薬品業界の現状を俯瞰的に見ることもできる内容になっている。
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主力薬の特許切れ、いわゆる2010年問題は、今後の医薬品メーカーのあり方を見直す大きな契機となる。新薬不足の克服のために何をしたらいいのか、医療現場で本当に求められる薬をどう開発したらいいのか、大手だけでなく、中堅メーカーにも押し寄せるグローバル化の波にどう対応したらいいのか、こ...
主力薬の特許切れ、いわゆる2010年問題は、今後の医薬品メーカーのあり方を見直す大きな契機となる。新薬不足の克服のために何をしたらいいのか、医療現場で本当に求められる薬をどう開発したらいいのか、大手だけでなく、中堅メーカーにも押し寄せるグローバル化の波にどう対応したらいいのか、これからの医薬品業界で生き残っていくためには、新たな挑戦に次ぐ挑戦が求められている。
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