日本文化の新しい顔 の商品レビュー
(2007.07.27読了)(拝借) 京都大学創立100周年記念公開講座の講演の記録です。1997年10月18日に行われたものです。 二つの講演が納められています。 「擬種としての文化をめぐって」 日高敏隆(動物行動学) 「「風土記」に見る日本人の心」 河合隼雄(臨床心理学) ...
(2007.07.27読了)(拝借) 京都大学創立100周年記念公開講座の講演の記録です。1997年10月18日に行われたものです。 二つの講演が納められています。 「擬種としての文化をめぐって」 日高敏隆(動物行動学) 「「風土記」に見る日本人の心」 河合隼雄(臨床心理学) ●「擬種としての文化をめぐって」 日高さんは、動物行動学が専門とは言っても、得意分野は昆虫の蝶についてです。 人間には文化があり、動物は本能で生きているから、人間より動物のほうが程度が低いとみなされてしまう。研究対象も、動物相手より、人間の場合がより高級であると思っている人がいるらしい。 動物学者としては、人間の文化は動物にとっての本能の代替物として考えたいということです。「文化=代理本能論」です。 アメリカの精神分析学者のエリック・エリクソンは、「人間の文化というものは擬種である」といっているそうです。(6頁) 動物の種の場合は、種が違えば、食べ物が違ったり、行動する季節や時間帯が違ったりで、棲み分けていますので、衝突を避けることができます。(食べる、食べられるの関係だったりしますが。その場合は、食べつくしてしまえば、自分たちも死滅です。) 人間の場合も、文化が違うと、動物の種が違うのと同じだということです。 キリスト教徒とイスラム教徒が衝突するだけでなく、イスラム教の宗派対立があります。文化が違うということなのでしょう。 とはいえ、文化は本能ではありませんので、変えることは可能です。現に、文化交流によって変わって行っています。 ●「「風土記」に見る日本人の心」 「風土記」を読むと、日本人の考え方が分かるということをいくつかの事例を挙げながら、説明しています。臨床心理学とどう関係するのだろうと思いますが、日本人相手に、精神的悩みの相談にのっているとき、悩みの元や心理の落ち着き先を見るうえで、役に立つのかもしれません。 親と子の話、男と女の話、女性に求婚された男の話、(「女性がプロポーズして団背がすぐそれに従うというモチーフは日本の物語に非常に多いのです。」)女性が蛇と結婚する話、(「子が生まれたとき、蛇だから殺せという話と、蛇だから神様だという話と二つのパターンがあります。」「結婚相手は、同類でなければだめという考え方と、異類を入れ込んだほうがいいという考え方があります。」)、浦島太郎の話、(「浦島太郎と乙姫は、結婚したのか。」)などなどです。 ☆日高敏隆さんの本(既読) 「人類の創世記 人類文化史1」寺田和夫・日高敏隆著、講談社、1973.09.20 「動物にとって社会とはなにか」日高敏隆著、講談社学術文庫、1977.08.10 「ワニはいかにして愛を語り合うか」竹内久美子・日高敏隆著、新潮文庫、1992.01.25 「昆虫という世界」日高敏隆著、朝日文庫、1992.12.01 「ネコたちをめぐる世界」日高敏隆著、小学館ライブラリー、1993.04.20 「春の数えかた」日高敏隆著、新潮文庫、2005.02.01 「人間はどこまで動物か」日高敏隆著、新潮文庫、2006.12.01 ☆河合隼雄さんの本(既読) 「子どもの宇宙」河合隼雄著、岩波新書、1987.09.21 「中年クライシス」河合隼雄著、朝日文芸文庫、1996.07.01 「日本文化の新しい顔」河合隼雄・日高敏隆著、岩波ブックレット、1998.01.20 (2007年9月9日・記) 内容紹介(amazon) 臨床心理学の河合氏,動物行動学の日高氏,両巨頭によるむちゃ面白い講演録.『風土記』という日本文化の古層から現れる意外に新しい顔,人間を人間にしている文化の多様性と,その「壁」について,興趣はつきない.
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