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夕暮れをすぎて の商品レビュー

3.6

26件のお客様レビュー

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2012/12/20

スティーヴン・キングは「悪夢のような話」が本当にうまい。 日常生活に、カチッと悪夢スイッチが入る瞬間。 あるいは、気づいたら悪夢に浸食されていることに気づく瞬間。 現実(リアル)の生活や登場人物自身のリアリティがあってこそ生きる、その怖さ。 でも、ただ怖いだけじゃないところがこの...

スティーヴン・キングは「悪夢のような話」が本当にうまい。 日常生活に、カチッと悪夢スイッチが入る瞬間。 あるいは、気づいたら悪夢に浸食されていることに気づく瞬間。 現実(リアル)の生活や登場人物自身のリアリティがあってこそ生きる、その怖さ。 でも、ただ怖いだけじゃないところがこの人の小説の面白さです。 列車の脱線事故で田舍の駅に取り残された乗客たち。デイヴィットは婚約者のウィラを探しに町へ向かう――「ウィラ」 子どもを亡くしたエミリーはランニングに没頭するようになる。夫と離れて訪れたオフシーズンのリゾート地でも走り続ける。そこでふと目撃したのは――「ジンジャーブレッド・ガール」 老年にさしかかった夫婦。ある朝ジャネットは夫の口から昨夜見た夢の話を聞かされる――「ハーヴィーの夢」 小説家であり英語の講師をしているダイクストラは、ある晩トイレに行こうと立ち寄ったパーキングエリアで切迫した事態に遭遇する――「パーキングエリア」 肥満気味の商業イラストレーター、シフキッツは、医者からの忠告を受け、エアロバイクでの運動を始めた。ダイエットは順調に進んだのだが――「エアロバイク」 NYのアパートメントで暮らすスコットの家に、見覚えのある物たちが突如出現する――「彼らが残したもの」 NY近郊のハイスクールを卒業した日、ジャニスはボーイフレンドのバディの家にいた。そこで目にしたものは――「卒業の午後」 中編短編織り交ぜての7編。9.11の同時多発テロにまつわる話も。 キングの巧さといろいろな怖さ、面白さが楽しめるので、長編に手が出ないでいる人におすすめかもしれない。 個人的には、「ジンジャーブレッド・ガール」の怖さと面白さが、群を抜くと思うのです。これぞキング!だと。

Posted byブクログ

2012/05/16

キングの短編集。世にも奇妙な物語って感じです。最初の二話はふーん。こんなもんか。という感じ。「ハーヴィーの夢」でちょっとひっかかり、「パーキングエリア」はちょっと笑え。「エアロバイク」はこれがキングかも!と思える面白さで、「彼らが残したもの」は前半ん?とおもいながら読んで、後半な...

キングの短編集。世にも奇妙な物語って感じです。最初の二話はふーん。こんなもんか。という感じ。「ハーヴィーの夢」でちょっとひっかかり、「パーキングエリア」はちょっと笑え。「エアロバイク」はこれがキングかも!と思える面白さで、「彼らが残したもの」は前半ん?とおもいながら読んで、後半なきました。「卒業の午後」はキングの夢からきたものらしいですが、まさにそんなかんじ、え?ここで終わり?という(^_^;)。 久々読んだキングですが、彼の心理描写はああ、わかる!と思える部分があるものはほんとに共感できて面白い。「エアロバイク」と「彼らが残したもの」だけでも読む価値ありました。 「彼らが残したもの」は読み手によっては不謹慎って思うかもしれないテーマだけど、とても客観的で変に思想アピールしてないものなので、素直に読めました。

Posted byブクログ

2011/09/27

大好きなキングの短編集です。7編収録。大好きなキングがあの「9.11」を題材にしているなんて、それだけでどんなものか心躍らせて読み始めました。 「ジンジャーブレッド・ガール」 ローズマダー的な怖さ。追われる恐怖、逃げる女性。すごい緊迫感で次々読み止まらなかった。 「ハーヴィー...

大好きなキングの短編集です。7編収録。大好きなキングがあの「9.11」を題材にしているなんて、それだけでどんなものか心躍らせて読み始めました。 「ジンジャーブレッド・ガール」 ローズマダー的な怖さ。追われる恐怖、逃げる女性。すごい緊迫感で次々読み止まらなかった。 「ハーヴィーの夢」 、「パーキングエリア」、「卒業の午後」 世にも奇妙な的な。しかし描写が緻密。 「エアロバイク」 すごくドキドキした。自分の体という工事現場でカロリーと糞の処理に働く4人の男たち。画家の想像の産物にすぎないはずだった彼らは、「ダイエット」によって自分たちの仕事を奪う「体の持ち主」に憤りを感じ始めていた。 絵が動く、自分が自分に殺される。現実か夢かわからなくなっていく構成が良い。 「彼らが残したもの」 9.11を偶然回避した男。しかし彼の部屋にはなぜか死んだ同僚たちのデスクにおかれた”遺品”が現れ… アメリカに大きな衝撃を与えた9月11日のテロ。少し怖く、ミステリアスに、しかし暖かく短編にまとめているのは素晴らしいと思う。いいエンディングだった。

Posted byブクログ

2011/09/25

今の日本を覆う音楽がプログレなら小説は恐怖の帝王S・キングでしょう。 この短編集は2008年にアメリカで出版された原書の前半部分です。 330pの短編集としてはアンバランスなほど長い「ジンジャーブレッド・ガール」などに、その元の大きさを想像させるものがあります。 読み終えて感...

今の日本を覆う音楽がプログレなら小説は恐怖の帝王S・キングでしょう。 この短編集は2008年にアメリカで出版された原書の前半部分です。 330pの短編集としてはアンバランスなほど長い「ジンジャーブレッド・ガール」などに、その元の大きさを想像させるものがあります。 読み終えて感じることは、やはり文章全体に漂う老い、です。 若き日に、勢いのままロックンロールしていたような文章とはやはり違う。 病気を抱え、深刻な交通事故にも合い、その辺は仕方なきことなんでしょうが、老いることもまた悪くはない、とも思わせるのが流石なんです。 フィクションは落ち着いた味わいとなり、老成した噺家の古典を聴くが如しで、実際、テーマはキングファンならお馴染みのモノばかりではあります。 でも「ジンジャーブレッド・ガール」の水準で楽しめる作品はそうはないでしょう。 特筆すべきは幕切れのシーンですね。 リアルアクションの恐怖譚だと思っていたら、最後はどこか宗教的な感慨すら漂うのは何故? これがキングという大魔導師の力というモノなのか。 他には、10pと短くとも極めて鮮烈な印象を残すヒロインの独白である「卒業の午後」、ロマンティックで美しい「ウィラ」 出だしこそ読みにくいモノの、ラストの味わいが良好だった「彼らが残したもの」も長く覚えていられる作品じゃないかな。 「パーキングエリア」も良かった。 そう人生は、気の持ちよう(笑 タフだと思えばタフになれるんです、きっと。 キングもそう思っているんじゃないかな。 後は、「ジャニス・何とかスキー」というお嬢さんのメンタリティがあれば、黙示録的世界でも、サバイバル出来るでしょう。 キングの恐怖の根本は愛、だからね。 ps 最近のキングはどうも、という貴方にもおススメです。 私もそうだったのですが、やはり時代の雰囲気って恐ろしい。 今の日本だとスラスラ読めます。

Posted byブクログ

2011/08/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

正直微妙な話も含まれてる短編集だが中編「ジンジャーブレッド・ガール」はガチ。 幼い娘を亡くした痛手から立ち直れない女は、ある日ふと走ることに興味を持つ。何の脈絡もない行為ではあったが「取り憑かれたように」走り始めた。倒れるまで走る彼女を夫は理解できない。 夫婦は「冷却期間」を設けることとなり、エミリーは父親の別荘がある島へ移った。 普通に予想される展開としては、人々と触れ合い心の交流を果たすうちに傷が癒え、人生と前向きに付き合っていく決意を固めたところで夫と和解して終わりだろうが、そこはキング御大。まったくこちらの期待どおりにならない。 エミリーは頭のイカれた殺人鬼に遭遇する。死体を発見してしまったのだ。一度は彼に捕まったエミリーだったが隙を見て逃げる。そして彼女は走る、走る、走る。なぜ走るのか。これまで自分でも分からない衝動に突き動かされてきた彼女は、今度はハッキリと「生きるために」走る。その中でエミリーは再生していく。その姿が実に感動的。 小難しい哲学や宗教、通り一遍の感傷的なスタイルに用はない。エミリーはガムテープを剥がし、肉切り包丁を振り回し、椅子の肘掛けで男を殴打するのだ。そして追いかけてくる男を振り切るため走る。そうした具体的でサスペンスフルな行動の積み重ねがエミリーを再生させる。 説明してしまえば1行で終わることを1ページ、2ページかけて語り尽くさねば気が済まないキング御大の執拗な描写も今回は冴え渡っている。

Posted byブクログ

2011/06/12

短編集で、僕のお勧めは「ジンジャーブレッドガール」と「エアロバイク」。 ちょうどジム通いを始めたせいか、ちょっぴり精通のあるストーリーです。

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2011/01/10

 読後より、随分と時間も経ってしまったので、心許無いレビューになってしまうが・・・  ひさかたぶりのスティーブン・キングということで楽しみにして読み始めた短編集であったが、どうもピンと来ないというか高揚感に欠ける感じが全体的に漂っていた。  「ジンジャーブレッド・ガール」だけ...

 読後より、随分と時間も経ってしまったので、心許無いレビューになってしまうが・・・  ひさかたぶりのスティーブン・キングということで楽しみにして読み始めた短編集であったが、どうもピンと来ないというか高揚感に欠ける感じが全体的に漂っていた。  「ジンジャーブレッド・ガール」だけはそのタイトルのインパクトとともに、途中からのスリリングな展開に心を奪われ、先を急いで読み進めたのであった。映画にしても良いほどのスリル感があった。  過去に読んだ作品がどれもこれも面白かったので期待し過ぎてしまったのであろうか。

Posted byブクログ

2010/08/31

スティーブン・キングの短編集の分冊化一冊目。 七話収録。 「キャリー」「it」「シャイニング」の雰囲気はない。 どちらかというと「アトランティスのこころ」「マンハッタンの奇譚クラブ」に近い作風。

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2010/07/13

ひたすらに具象を積み重ねた質実な行間からしっかりとみずみずしい感傷が立ち上がる。今、自分はこの本と、とても人間的な何かを分かち合っているという思い。 『ジンジャーブレッド・ガール』では筆力は最高潮に達する。非常にスピード感のある緊迫した文章に、「読んでいる」意識がすっかり飛んで...

ひたすらに具象を積み重ねた質実な行間からしっかりとみずみずしい感傷が立ち上がる。今、自分はこの本と、とても人間的な何かを分かち合っているという思い。 『ジンジャーブレッド・ガール』では筆力は最高潮に達する。非常にスピード感のある緊迫した文章に、「読んでいる」意識がすっかり飛んでいたほどだ。それにしてもまるで現在の自分の体験を実況しているかのような、具体的描写のうまさはすさまじい。私が文字を追う速度と、描かれている事件が進行するシンクロニシティも絶妙だ。この中編を読んだあとはしばらくの間、自分の些細な行動を頭の中で詳細に実況してしまう癖がついてしまった。 ストーリー的には、どの作品も起承転結があいまいで、完結した印象をあえて排除している。その代わり、ある人物のある状況を、深層までも克明に浮かび上がらせようと試みているようで、個人的には好きな作風だ。しみじみした筆致が胸を打つ『彼らが遺したもの』、ナンセンスで可笑しい『エアロバイク』、得も言われぬ不安の予感を的確に文字に置き換えた『ハーヴィーの夢』、さすが巨匠とうなずく粒ぞろい。

Posted byブクログ

2010/06/26

 キングの短編集。  *ウィラ  *ジンジャーブレッド・ガール  *ハーヴィーの夢  *パーキングエリア  *エアロバイク  *彼らが残したもの  *卒業の午後  ここに描かれているのは、喪失なのだと思う。  人が生きるということは、常に何かを失っていくことなのだろうか。きっと...

 キングの短編集。  *ウィラ  *ジンジャーブレッド・ガール  *ハーヴィーの夢  *パーキングエリア  *エアロバイク  *彼らが残したもの  *卒業の午後  ここに描かれているのは、喪失なのだと思う。  人が生きるということは、常に何かを失っていくことなのだろうか。きっと、同じだけ何かを得ているはずなのに、最後に残るのは失われたものの空白だけだ。  そして、それが宇宙の真理であるからこそ、あがく。  「ジンジャーブレット・ガール」の主人公の強さは、まるで暗闇をてらす光のようだ。  「彼が残したもの」の主人公の行いは、体を温める炎のようだ。  そうか、命という輝きが最後の最後には、全てを照らすものになるのだ。  やはり、キングはかわったなと思う。  …年を経て、丸くなったという類のものかもしれないが、それは一種の美しさなんだと感じる。    

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