暁と黄昏の狭間(6) の商品レビュー
暁と黄昏の狭間、シリーズ6巻読破。読み応え十分、間違いなく面白いんだけど、後半のいかにも昨今の魔法モノ、戦闘シーンの不必要に残虐な描写の凄まじさにはいささか辟易。二巻あたりのひたすらかなしく優しく壮麗な美しさで包まれて終わるあたりが好きだなア…。 世界観、といっていまうと十把一...
暁と黄昏の狭間、シリーズ6巻読破。読み応え十分、間違いなく面白いんだけど、後半のいかにも昨今の魔法モノ、戦闘シーンの不必要に残虐な描写の凄まじさにはいささか辟易。二巻あたりのひたすらかなしく優しく壮麗な美しさで包まれて終わるあたりが好きだなア…。 世界観、といっていまうと十把一絡げに昨今のRPG的ゲーム物語定型みたいだけど、このオリジナリティと深さには大量生産される雛型に則ったモノとは一線を画した文学性としてのまっすぐさ、ピュアな可能性としてのプリミティヴな深みがある。 人間のアイデンティティをひとつの容器としてのワントとし、その中に月、日、木、石、水、火、土の七つの性質を持つ生命力としてのワンとしてその生命の形を世界の構造の形と共通の要素でつなげて見せる、このような世界把握の手法は、そのまま原始的なシャーマニズム、例えばアメリカ・インディアンの神話的な世界観、呪術や哲学、知恵へと通ずるものがある。 魔術、魔法の概念がこのような自己存在、生命存在と世界観そのものに深く根ざしたものであり、魔術やワンの神秘を倫理を度外視した技術的なものとして都合よく加工する権力に目のくらんだひとびとやマッドサイエンティスト的に真理を求める狂気のヘン・ジャックと教団を描くこの物語の枠組みは、エンタテイメントでありながらそれだけではない骨太な問題意識をドラマティカルなかたちで表出している。 劇的な冒険や刺激的なアクション、魔剣やセフルとギルダンの恋愛譚、派手やかなエンタテイメントに重心の流れた後半ではなく、これら世界の枠組みや人間の原罪のかなしみやアイデンティティの問題により視点を定めていた二巻あたりの透き通った青いうつくしいイメージが好きである。 ギルダンの熱く人間的な火のイメージと対照的な、アイデンティティを奪われた定めに生まれたアシュラーフのあきらめと冷ややかさ、美しさと仄かな愛とキャラクター、その青い植物と癒しのイメージ。
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