死刑のある国ニッポン の商品レビュー
ディベートとしては全く成立していない。 死刑廃止派である森氏は、対談中、「死刑は、誰のためにある、どのような意義がある制度なのか」と二度質問しているが、存置派である藤井氏は二度ともこの質問に回答できていない。 森氏の死刑廃止論の根幹は、「死刑に続けるべき理由がないのであれば、やめ...
ディベートとしては全く成立していない。 死刑廃止派である森氏は、対談中、「死刑は、誰のためにある、どのような意義がある制度なのか」と二度質問しているが、存置派である藤井氏は二度ともこの質問に回答できていない。 森氏の死刑廃止論の根幹は、「死刑に続けるべき理由がないのであれば、やめた方がいい」というところなので、ここに反駁できない時点で、最早お互いの論の根幹についての議論はできないということになる。 藤井氏は「被害者遺族の心情のため」というニュアンスのことを述べているけど、被害者遺族の心情が1枚岩でないのは、被害者遺族の取材を長年続けてきた藤井氏も断言するところ。 これに対して森氏は、「死刑制度は被害者遺族の感情に配慮していると考えられるが、その感情が一枚岩ではなく、死刑への立場は曖昧であることがわかったのであれば、藤井さんが取るべき立場は死刑存置ではなく、死刑の(一時)停止ではないか」と問われている。 死刑の意義がわからない・怪しいのであれば、(暫定的にでも)取るべき立場は「停止」「廃止」または「保留」であるべきで、「とりあえず存続」というのは飛躍しすぎでしょう、ということ。 これは完全に藤井氏の主張を論破している。この反論として、「死刑は被害者遺族のためだけにあるわけではない」みたいなことをゴニョゴニョ言っているが、じゃあそれについて対談中ちゃんと話し合ってよ、と思う。 私は森氏と同様に、「死刑をする合理的な理由があるなら、世界中に反対されてもやり続けるべきだと思うが、その理由が全く思いつかない」という意見なのだが、この立場で読むと、何とも得るところのない本だった。400ページもあるのに、これだけ?という感じ。 結局、冤罪だの被害者遺族支援のあり方だの、死刑の有無に直接関係のないところばかり盛り上がっているのだが、藤井氏の方が死刑の意義をちゃんと説明できていないので、間接的なところしか話せないのだと思う。 そして、間接的なところでは、お二人の意見は別に対立していない・・・。
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死刑に犯罪抑止効果がないことを前提に、情緒のレベルで死刑存置派の藤井と死刑廃止派の森が語り合う。「殺人犯の命を国家が保障するのは倫理的に耐え難い」とする藤井に対して、森は「『処刑しない』ことと『保障する』ことは違う」と反論する。国家が「生かす」ことを問題視する存置派と国家が「殺す...
死刑に犯罪抑止効果がないことを前提に、情緒のレベルで死刑存置派の藤井と死刑廃止派の森が語り合う。「殺人犯の命を国家が保障するのは倫理的に耐え難い」とする藤井に対して、森は「『処刑しない』ことと『保障する』ことは違う」と反論する。国家が「生かす」ことを問題視する存置派と国家が「殺す」ことを問題視する廃止派という対立点を見定められただけでも読んだ価値があったと思う。
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真面目な二人が死刑制度の是非について真面目に議論した本。ノルウェーの例は衝撃的。教育現場にいると、確かに「この子は悪いことをしたけど、この行為をするまでのバックグラウンドは愛情不足だからなあ」ってことがよくある、というかほとんど。しかし、それを制度化し国民が納得しているのはすごい...
真面目な二人が死刑制度の是非について真面目に議論した本。ノルウェーの例は衝撃的。教育現場にいると、確かに「この子は悪いことをしたけど、この行為をするまでのバックグラウンドは愛情不足だからなあ」ってことがよくある、というかほとんど。しかし、それを制度化し国民が納得しているのはすごい。もっと調べてみたくなった。
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少し古い本だが、現在の日本の死刑制度について深く言及されているし、廃止派(森さん)と存置派(藤井さん)がガチンコ議論しているので偏り無い意見を知ることが出来る。 どちらも死刑という命を扱う難しい問題に対して、考え尽くして出している結論だからこそ、ブレずに主張を突き通している。 ...
少し古い本だが、現在の日本の死刑制度について深く言及されているし、廃止派(森さん)と存置派(藤井さん)がガチンコ議論しているので偏り無い意見を知ることが出来る。 どちらも死刑という命を扱う難しい問題に対して、考え尽くして出している結論だからこそ、ブレずに主張を突き通している。 僕らはもっと日本の死刑問題に対して、知るべきだし自分の頭で考えるべき。 僕がそうであったように、この本を読んでスタートするのでも全然遅くないと思う。
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私は存置派だったが、森さん話のほうが、論理性があり、藤井さんは情緒性が強く、 死刑廃止に気持ちが動いたが、迷うばかりだ。
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「死刑賛成」派と「死刑賛成派」の対談。 私は「反対派」。なぜなら、冤罪で殺される可能性もあり、 「死刑になりたいから」と人を殺す人間が増えてきたからだ。死刑を廃止すれば、そういう考えもなくなるだろう。 とても重いテーマなので、気軽に読める本ではない。だが、読む価値はある
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今現在日本にある死刑制度。あなたは廃止派?それとも存置派?じぶんはこっちと思っても、これを読むともう一度考え直してみたくなる。藤井氏と森氏の長い長い対話。答えは出ずとも考えていくべき事案。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
本書の中で、「廃止派」森の問いに対し「存置派」である藤井が答えを出し切れていない部分が二つある。 一つは応報感情を死刑存置の中心根拠にすえた場合、被害者に遺族がいるかどうかで刑が変わってしまうのか、それは罪刑法定主義に抵触しないのか、という点。 また一つは冤罪の不可避性の問題。 抑止力という根拠が、もし実態を持たないのであればこの二つの論点はかなり大きなものとなってくる。
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「憎悪は人の心を内側から蝕みます。人を憎しみ続ける人生、誰かの死を願い続ける人生、それが豊かなはずはない」と言い、死刑廃止を訴える森さんと遺族に取材を重ねる中、論理を超えたところで存置派を貫く、藤井さんとの対談集です。 たぶん、自分と同じように死刑や裁判、刑事事件などと直接かか...
「憎悪は人の心を内側から蝕みます。人を憎しみ続ける人生、誰かの死を願い続ける人生、それが豊かなはずはない」と言い、死刑廃止を訴える森さんと遺族に取材を重ねる中、論理を超えたところで存置派を貫く、藤井さんとの対談集です。 たぶん、自分と同じように死刑や裁判、刑事事件などと直接かかわった事のない人は森さんが藤井さんを圧倒してるような読み感を抱くでしょう。でもそんな中でも折れない藤井さん。そんなのが印象的でした。 しかも、廃止・存置両方に共通する今の司法の問題点。それもまた印象的です。 もし、裁判員などの選ばれるような事があれば読んでみてください。 あっ、こんな難しそうなのが嫌な人はこちら を http://ameblo.jp/no-ressentiment/day-20100621.html
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死刑制度存置派の藤井誠二氏と廃止派の森達也による対談。 いつもなら森氏は迷いながら結論を探すのに、死刑制度に関しては「死刑」を書いたときから廃止という意見を突き通している。 私個人は「死刑」を読んで以来、やや廃止派に傾いていたけれど、藤井さんの意見を読んで、いっそう揺れてしまっ...
死刑制度存置派の藤井誠二氏と廃止派の森達也による対談。 いつもなら森氏は迷いながら結論を探すのに、死刑制度に関しては「死刑」を書いたときから廃止という意見を突き通している。 私個人は「死刑」を読んで以来、やや廃止派に傾いていたけれど、藤井さんの意見を読んで、いっそう揺れてしまった。 でも、やっぱり森さんのいう性善説みたいなものを信じたいとは心のどこかで思っている。 どちらかの意見を必ずしも選ぶ必要はないけれど、日本という国で生きていく以上、死刑制度については誰もが一度は考えるべきテーマだと強く感じた。
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