孤島の鬼 の商品レビュー
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ベストセレクション7。 供向けとは当然趣が違った大人向け。 主人公が恐怖のあまり頭髪が白くなる理由を語る、という内容なのだが その恐怖自体は文章ではなく映像の方が伝わるかな、と感じた。 それを観る際は明るいリビングでなく暗い映画館で観たい。 終章のタイトル“大団円” 物事がめでたく収まる事の意だが 最後の一文、さらっと読み終えることが出来ない。。。 やや未熟な主人公より周りの人間の方が魅力的だったので。
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今から一世紀近く前に書かれたものとは思えない内容。古くささは一切感じられない。 同性愛の描きかたが非常に生々しくて、だからこそ本気を感じさせる。
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多くの要素が詰め込まれていて怪奇的な不気味さで色濃い。 探偵?冒険小説?文体が当時の書き方なので独特の雰囲気があり引き込まれる。いやー流石、読ませてくれたあー大満足!
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超メジャーどころながら、作品に接するのは初めて。時代を感じさせられるのは、差別的表現が頻発する部分くらいで、会話分を含めて古臭さは殆どなし。それだけで十分に素晴らしいと思ったけど、内容も良かった。殺人事件の謎解きが早々に終わってしまって、残り2/3をどうするんだろう?って思ったけ...
超メジャーどころながら、作品に接するのは初めて。時代を感じさせられるのは、差別的表現が頻発する部分くらいで、会話分を含めて古臭さは殆どなし。それだけで十分に素晴らしいと思ったけど、内容も良かった。殺人事件の謎解きが早々に終わってしまって、残り2/3をどうするんだろう?って思ったけど、それ以上のミステリーが待ち受けてました。”鬼”の最期が意外にあっけなかったから、恐怖感の盛り上がりはもう一歩、って感じもしたけど、それを差し置いて、面白かったです。
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30にもなっていないにかかわらず頭髪のすべてが白髪となっている簑浦。それは彼が数年前にある奇怪な事件に巻き込まれたからであった。恋人の死、友人の死、そして事件はさらに恐ろしい方向へと転がりだしていく。 前半は正統派のミステリー。密室の殺人、衆人環視の中での殺人という謎が話の...
30にもなっていないにかかわらず頭髪のすべてが白髪となっている簑浦。それは彼が数年前にある奇怪な事件に巻き込まれたからであった。恋人の死、友人の死、そして事件はさらに恐ろしい方向へと転がりだしていく。 前半は正統派のミステリー。密室の殺人、衆人環視の中での殺人という謎が話の軸です。しかし中盤それが解かれたと思いきや物語は思わぬ方向にスライドしていきます。前半のミステリから後半は冒険活劇、それも乱歩の怪奇趣味が全開で描かれるので乱歩の様々なエッセンスがこれ一冊で楽しめます。 そしてこの作品を単なるエンタメ以上の作品に引き上げたのが諸戸道雄の存在。同性愛者で一度簑浦に告白したことのある彼が事件に絡むことで、怪奇ミステリのこの物語に愛憎もからんでくる切ない恋愛小説の面も見えてくるのです。乱歩作品に恋愛要素のイメージはあまりなかったのですが、こういう作品もあるのか、と乱歩の引き出しの多さに改めて驚きました。 そしてそうした恋愛要素が普通の男女ではなく(作中では簑浦の最初の被害者の初代との恋愛描写もあるのですが)、同性愛者の恋愛という観点から書くのも、なんとも乱歩らしいなあ、と思います。 乱歩作品では他にも『芋虫』や『人間椅子』など倒錯した愛情を持った人物が色々出てくる印象でしたが、諸戸がもしかすると一番乱歩作品で正常に近い人を愛する、という感情を持っていたのかもしれないですね。 今思い返すと、ものすごく内容の濃い小説ですが、ミステリ、冒険、怪奇、そして恋愛とあらゆる要素を独自の乱歩色で塗り上げたこの作品は今後も唯一無二の作品として色あせることはないように思います。
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恋人初代を殺され友人であり素人探偵である深木山とともに調査に当たる主人公。 しかし探偵深木山が殺害され、新たな協力者・諸戸道雄とともに捜査をするうちに、初代、深木山殺害の実行犯を捕らえるも殺害される。そして二人は諸戸の父の住む島へ。 島での冒険。シャム双子、かたわ者の群、支配者である丈五郎。そして初代の一族樋口家の財宝。
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2度目のカナダの冬に読んだ。2009年夏の衝動買いシリーズからの一冊である。 これの直前に「帰らざる夏」を読んで、色々精神的にうわーって興奮状態だったから、「孤島の鬼」の威力も相乗効果で半端無かった。 以下、当時の日記から抜粋。日本語がおかしいのは今も昔も変わらない。(反省!)...
2度目のカナダの冬に読んだ。2009年夏の衝動買いシリーズからの一冊である。 これの直前に「帰らざる夏」を読んで、色々精神的にうわーって興奮状態だったから、「孤島の鬼」の威力も相乗効果で半端無かった。 以下、当時の日記から抜粋。日本語がおかしいのは今も昔も変わらない。(反省!) 『まずは昨日との作風の違い。勿論、時代も傾向も何もかも違うのだが、はやり「大衆文学」「娯楽」という要素の大き過ぎるほどの威力を痛感した。 なにせこれはミステリ兼冒険ストーリーなのだから。 久々に、横溝正史作品を読んだ感じがした。不気味な登場人物や極悪非道な魂胆など、私を怖がらせながらも惹き付けて病まないあの俗っぽさ。 そしてもちろん不純な動機もある。 諸戸の心が痛い。私にとっての最大の悲劇は彼であった。 最後の一行に、どうして心をむしり取られないでいられようか。 ストーリーが何より、諸戸の歪みと純粋さとそしてすべてが、どうしようもなく「人間」を物語っていると感じた。倒錯した愛がなんだ、同性愛がなんだ、彼は一番、鬼の中で人間ではなかったのか。 主人公の蓑浦も、正常な人間であった。しかし彼は、精神や感情といった面ではあまりにも受動に徹していて、作中の「モラル」「正常」の権化一辺倒であったにすぎない。 蓑浦はあまりにも、中心人物でありながら、理想の「語り部」でしかなかった。 人の内なる欲望、原始的な欲求、そして理知に富んだ「人間」でしか制御できない愛と純粋、それ故の歪み、諸戸こそがすべてを包容し、何度挫けても立ち上がった、輝かしい人だ。私は彼の中に、希望を見た気がする。何の希望なのかわからない。だが、違っている、正常でない、おかしい、と言われそうなほどの彼の愛を、私はそれでも評価したい。否、評価せずにいられようか、これほどの「人間」らしさを。 だがしかし、世の中とは残酷だ。結末は、全く持って話に溺れてそれこそ八幡の薮知の状態で、当初私は驚いた。だがこれは避けられぬ運命だったのだ。ナラティブがどうのこうのより、それよりもっと大きな、著者のいた時代という海流の仕業である。 悲しい、悲しい、世間が憎い。 話の間はずっとそうだったが、最後の最後で諸戸に本当にすべて持ってかれた。 これほどに、いじらしい人がいただろうか。 こんな人を、切り捨てざるを得ない状態に追い込んだ世間が憎い。それでも最後まで諸戸は戦ったのだ。心の内で、一人で、誰ともなく戦ったのだ。彼はその心を、その愛を貫き通したのだ。そんな彼を、部外者(読者)である私が、愛さずにいられようか。 これは私が彼に対して異性であると同時に、今の現代社会の中で読み終えたからだろう。 だが、俗物的なこの小説に、ここまで感銘を受けるとは思わなかった。 またしてもえらく感情的になりすぎているが、本当に、諸戸の為に泣きたい。 思ったよりグロくは無かったけど(横溝作品で見知ってるので)、嫌な人は嫌がるかな。それでも、私みたいな妙に斜め上の解釈をする人には、オススメ。』
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読了。名前だけはよく知っていた江戸川乱歩を続けて二冊読んでみた。同性愛、障がい者、殺人、暗号、とかなり多くの要素が詰め込まれてる。漢字や文体が当時の書き方なので独特の雰囲気があり引き込まれた。ミステリーとしてもホラーとしても読める作品
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これは面白い! 移動の時に読もうと電子書籍で購入したけど、結局すぐに読んでしまった。 今なら問題がありすぎる表現が、怪奇趣味をいっそう鮮やかにさせて素敵。 グイグイ引き込まれる。 最後の一文は余韻を残して哀しい。
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