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村のエトランジェ の商品レビュー

3.3

6件のお客様レビュー

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2023/07/29

これも数年の積読だったもの。 大好きな小沼丹、ゆっくり楽しんで読んだ。 先日読み終わった「懐中時計」と異なり、こちらは初期作品。 この中では白孔雀と、紅い花、汽船だけは既読だった。 ニコデモ、登仙譚、バルセロナの書盗、などの時代場所の異なる作品を除いて、いずれも戦前、戦中の空気が...

これも数年の積読だったもの。 大好きな小沼丹、ゆっくり楽しんで読んだ。 先日読み終わった「懐中時計」と異なり、こちらは初期作品。 この中では白孔雀と、紅い花、汽船だけは既読だった。 ニコデモ、登仙譚、バルセロナの書盗、などの時代場所の異なる作品を除いて、いずれも戦前、戦中の空気が漂い、ふわふわと詩的で、不穏な世界にのらりくらりとしたユーモアと仄暗いペーソスがある。 読んでいて巧みだと思ったのは、白い機影。 怖いし、気味が悪かったが、鮮烈な印象を残す。 好きなのは汽船、白孔雀、ニコデモ。 次に読み返すのはきっと上記3作だろう。 頗る、尠し、最后迄、悉皆、怕い、而も、こういう表記が目に賑やか。ビイルにソオダ水、メッセンジャア・ボオイ、サアビス、トラムプ、って、おしゃれーーー。 人物名は無機質で、イケダ・ゴロオとか、ヨシダ・マモル、ハタ氏、タキ氏。 これが小沼ワールドの楽しみ。

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2023/01/23

これは取っ付きの遅さを後悔した良作家。 短編が得意なのか、作品ごとに柔軟で多面的な魅力がある。 一貫しているのは上品さと小気味いいユーモア、読んでいて楽しいミニミステリ要素。 このコント仕立てと純文学のバランス感は意外と新鮮かもしれない。

Posted byブクログ

2021/05/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

書くのが遅くなってしまった。(4/19) 白孔雀のいるホテルと、村のエトランジェがとくに良かった気がする。次点で紅い花、汽船。けどどう良かったか書くとなると難しいな。チェーホフぽかったのかなと、かもめを読んだからかそう思う。人の死ぬタイミングや動機、そこまでの経緯に近しいものを感じた。そうだ、主人公の立ち位置がいいんだ、これらの小説は。解説で傍観者の文学と言われていたけれど、まさにそんな彼(=主人公)の内面が、それを見る視線、起きる出来事によって浮き彫りにされている。で、その内面というものは小説でしか書き表せない曖昧ななにかだったりする。だからいいんだ。村のエトランジェはとくにそういうものを感じる作品で、冒頭で女が詩人を川に落とす場面からはじまり、回想を挟んで、川に落としたのを見ていなかったと僕とセンベイがともに嘘をつくという流れがたまらなく素敵だった。 そういえばカプリ島が作中に登場していた。庄野潤三の本で、「小沼の好きな曲だった『カプリ島』...」という風に出てきた覚えがあったのでなんだか嬉しくなった。

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2019/04/07

小沼丹の初期短編集。大寺さんに辿り着く前にはこんなにも多彩な作品を手掛けていたのですねと云うのがまず第一印象。瀟洒なミステリから東西問わずの歴史掌編までバラエティ豊かな1冊で、非常にお腹いっぱいになれます。 お気に入りは「登仙譚」「白孔雀のいるホテル」「ニコデモ」あたりですが、ち...

小沼丹の初期短編集。大寺さんに辿り着く前にはこんなにも多彩な作品を手掛けていたのですねと云うのがまず第一印象。瀟洒なミステリから東西問わずの歴史掌編までバラエティ豊かな1冊で、非常にお腹いっぱいになれます。 お気に入りは「登仙譚」「白孔雀のいるホテル」「ニコデモ」あたりですが、ちょいちょい出てくる気の強そうな美人キャラと、ひょろりとした長身の詩人キャラも好きです。

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2018/05/19

「都会的な感覚」「ユーモア」という世評に惹かれて読んでみた。が、よくわからない‥>< 特に、女性陣の魅力がさっぱり、で悲しい。 太平洋戦争前後に書かれた8篇を収録した短編集。星2つは、作品のせいじゃない。。(2018.5.17読了)

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2009/10/04

 大学生になったばかりの頃、僕はひと夏、宿屋の管理人を勤めたことがある。宿屋の経営者のコンさんは、その宿屋で一儲けして、何れは湖畔に真白なホテルを経営する心算でいた。何故そんな心算になったのか、僕にはよく判らない。  ……湖畔に緑を背負って立つ白いホテルは清潔で閑雅で、人はひとと...

 大学生になったばかりの頃、僕はひと夏、宿屋の管理人を勤めたことがある。宿屋の経営者のコンさんは、その宿屋で一儲けして、何れは湖畔に真白なホテルを経営する心算でいた。何故そんな心算になったのか、僕にはよく判らない。  ……湖畔に緑を背負って立つ白いホテルは清潔で閑雅で、人はひととき現実を忘れることが出来る筈であった。そこでは時計は用いられず、オルゴオルの奏でる十二の曲を聴いて時を知るようになっている。そしてホテルのロビイで休息する客は、気が向けばロビイから直ぐ白いヨットとかボオトに乗込める。夜、湖に出てホテルを振返ると、さながらお伽噺の城を見るような錯覚に陥るかもしれなかった。  コンさんは、ホテルに就いて断片的な構想を僕に話して呉れてから云った。  ――どうです、いいでしょう?ひとつ、一緒に考えてください。 (「白孔雀のいるホテル」本文p.148)

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