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完全保存版 ザ歌舞伎座 の商品レビュー

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2013/04/25

<戦後の50年あまり、歌舞伎の殿堂であった建物の肖像> 新聞の書評で興味を持った写真集。 建替えられた第5期歌舞伎座の杮葺落公演が行われている最中だが、本書は先代歌舞伎座の記録である。 坂東玉三郎が案内役となり、篠山紀信が撮影している。 公演や稽古風景だけでなく、通常、観客が...

<戦後の50年あまり、歌舞伎の殿堂であった建物の肖像> 新聞の書評で興味を持った写真集。 建替えられた第5期歌舞伎座の杮葺落公演が行われている最中だが、本書は先代歌舞伎座の記録である。 坂東玉三郎が案内役となり、篠山紀信が撮影している。 公演や稽古風景だけでなく、通常、観客が目にすることのない楽屋の様子や、裏方の作業風景、舞台装置など、ありし日の歌舞伎座のさまざまな顔が写し出されている。 数多くの裏方や端役の役者が登場し、舞台は大勢の人の力で作り出されているものなのだということがわかる。 舞台の絵描き、衣装や鬘の手入れ、若い役者たちがとんぼを切る練習など、印象深い写真が多い。 工夫が凝らされた舞台装置を見ていると、こうしたものがない巡業や海外公演というのは想像以上に制約が大きいものなんだろうなと思えてくる。 名題下楽屋や宙乗り、幕見席への階段などは、立女形の玉三郎にとってあまり縁がない場所であり、そうした場所についてのコメントもまた興味深い。 表紙は「壇浦兜軍記 阿古屋琴責」。中央の美しい人はもちろん玉三郎(阿古屋)だが、この周囲の奇妙な人々は一体何?と思わせる。「竹田奴」と呼ばれる役のようだ。 豪華絢爛な衣装を着けた美人と珍妙な顔をした人々の群れ。これが混在できるところが歌舞伎ならでは、なのだろう。 「これからも歌舞伎は少しずつ変容していくと思いますが、そのときにもこの写真は残っていくわけです」という玉三郎のあとがきがしみじみと味わい深い。

Posted byブクログ