我もまた渚を枕 の商品レビュー
野田宇太郎によって確立された「文学散歩」の後継者にして、 現代における「散歩文学」の第一人者、川本三郎の著作。 東京、散歩といえば名前の挙がるような町は一切出てこない。 また東京そのものではなく、東京を少し離れた町が出てくる。 船橋、鶴見、岩槻、厚木、本牧、横須賀.... そ...
野田宇太郎によって確立された「文学散歩」の後継者にして、 現代における「散歩文学」の第一人者、川本三郎の著作。 東京、散歩といえば名前の挙がるような町は一切出てこない。 また東京そのものではなく、東京を少し離れた町が出てくる。 船橋、鶴見、岩槻、厚木、本牧、横須賀.... そんな(下手をすればなんの風情もない)町を筆者はただ歩く、歩き続ける。 もちろん散歩者らしく旧跡、古書店、盛り場、銭湯などへの配慮も忘れない。 そしてその町を歩きながら、文学、映画で触れられた町について語りはじめる。 ただの街並みが、文学、映画というフィルターを通す事で、 過去の失われた街並みがありありと目前に表立するのである。 (文学、映画についての博識ぶりは当代一であると思っている) 古来日本には「見立てる」・「よすがを偲ぶ」という芸術鑑賞法が存在した。 そんな行為の一端を「文学散歩」は感じさせてくれるのかもしれない。 その一つの場所で「現在」だけではなく、その土地の歴史を重層的に感じ取る事が出来る... それも「文学散歩」の一つの効用なのではないだろうか。 散歩者、必読の一著であった。
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町歩きが好きなことは何度も書いた。そして、散歩がテーマの本も 何冊も読んだ。それでも飽きないのは、見逃していたり、気付かな かったりしていた発見があるからだ。 数年前、高速道路の高架下をぶらぶらと歩いていた時に石碑が目に 入った。結構大きなものだったが、高層マンションの間の空間...
町歩きが好きなことは何度も書いた。そして、散歩がテーマの本も 何冊も読んだ。それでも飽きないのは、見逃していたり、気付かな かったりしていた発見があるからだ。 数年前、高速道路の高架下をぶらぶらと歩いていた時に石碑が目に 入った。結構大きなものだったが、高層マンションの間の空間に ひっそりと建っていた。 裏に回ってみると…。何とっ!東郷平八郎の揮毫ではないかっ! あぁ、元帥、こんなところで…。あ、私は決して軍人崇拝の人では ありません、念の為。 さて、本書である。副題にある通り、東京の近郊である千葉、埼玉、 神奈川をぶらりぶらりと行くお散歩本である。 目的は特になし。町を歩いて、その町がテーマになった本や映画に 思いを馳せたり、地元の人が利用しているであろう食堂や居酒屋へ 入ってみたり。 千葉県市川市は相当前に行ったなぁ。荷風散人の終焉の場所を 訪れ、荷風散人がカツ丼を食べた大黒屋で同じようにカツ丼を 食べたっけ。 そうそう、神奈川県の横須賀にも行った。山口百恵の「横須賀 ストーリー」と、クレイジー・ケン・バンドの「タイガー&ドラゴン」 を口ずさみながら歩いたぞ。勿論、お土産はスカジャンだった。 ベタだけど。 あっちこっちを歩いて、銭湯を見つけて湯あみして、夜はふらりと 居酒屋へ入って隣り合った地元の人と話をして。そして、ビジネス・ ホテルの泊まって翌日、その町を後にする。 あ…アルコールがダメだから居酒屋のくだりは真似出来ないか。 観光ではない町歩き、やっぱりいいなぁ。 。
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東京近郊の特に何でもない都市、例えば、市川や船橋、あるいは、鶴見とか厚木、に電車で1泊旅行に出かけ、街歩きをする、その街歩き記。例えば市川に1泊旅行に出かける等ということは全く考えたこともないけれども、これが(市川ばかりではなく、どこも)実に楽しそうで、たしかに、こういう旅もあり...
東京近郊の特に何でもない都市、例えば、市川や船橋、あるいは、鶴見とか厚木、に電車で1泊旅行に出かけ、街歩きをする、その街歩き記。例えば市川に1泊旅行に出かける等ということは全く考えたこともないけれども、これが(市川ばかりではなく、どこも)実に楽しそうで、たしかに、こういう旅もありだな、と思った。バンコク勤務が終わり、日本に帰ったら(いつになるのか分からないけれども)、是非、やってみたいと感じさせる本だった。例えば本厚木とか、京急大師線の小島新田とか、個人的になじみがあり(いずれも以前通勤で使っていた駅だ)、知っている場所やお店等が出てくるのも楽しい。
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