金融危機にどう立ち向かうか の商品レビュー
3つの危機対応策を問いなおす◆「失われた15年」の危機対応策◆未踏領域の金融政策◆財政政策の展開と赤字拡大◆不良債権問題とプルーデンス政策◆世界金融危機における経済対策◆教訓を生かせるか
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[ 内容 ] 金融危機と不況に苦しむ国家は、さまざまな政策を打ち出してこれを脱しようとする。 それらの政策は、どのような狙いと効果をもつのか。 なかには、効果が疑われるものや、副作用が懸念されるものもあり、論争を呼ぶ。 この議論に示唆を与えるのが、平成不況、すなわち「失われた15年」での日本の経験だ。 当時、金融政策は量的緩和という未踏領域に踏み込み、財政政策は巨額の減税と公共事業を行った。 金融システム安定化のための政策(プルーデンス政策)は、銀行の破綻処理や救済を行い、その体系を整えた。 本書では、90年代以降に展開された3つの政策を総括し、その経験が世界同時不況にどう生かされているかを考える。 [ 目次 ] 序章 3つの危機対応策を問いなおす 第1章 「失われた15年」の危機対応策―3つの政策の位置 第2章 未踏領域の金融政策 第3章 財政政策の展開と赤字拡大 第4章 不良債権問題とプルーデンス政策 第5章 世界金融危機における経済対策 第6章 教訓を生かせるか―3つの政策の新たな課題 [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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リーマンショックに端を発する大津波。これを如何に乗り切るか。本書では失われた15年の間に施された金融政策、財政政策、プルーデンス政策の効果を検証しながら今後の施策の手掛かりを提示する。失われた15年をかけようやく大手の銀行は不良債権問題に決着をつける一方、信用組合等中小の金融機関などはいまだにその傷がいえていないのが現実。高金利となればたちまち顕在化し致命傷ともなりかねない国債残高問題。乗数効果が期待できない財政政策。課題は山積している。
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バブル崩壊~住専危機~拓銀山一破綻にいたる金融危機の時期に行われた財政政策は、金融システムの維持安定化のためのプルーデンス政策の仕組が整っていなかったため、それを「肩代わり」する効果をもたらしたとも。 日本銀行が行う政策も「流動性危機」対策なのか、「支払い余力危機」への対応なのか...
バブル崩壊~住専危機~拓銀山一破綻にいたる金融危機の時期に行われた財政政策は、金融システムの維持安定化のためのプルーデンス政策の仕組が整っていなかったため、それを「肩代わり」する効果をもたらしたとも。 日本銀行が行う政策も「流動性危機」対策なのか、「支払い余力危機」への対応なのか説明すべきではないかと。 日銀バッシング論者にはプルーデンス政策の役割の視点が欠落していることが多く、銀行は自動的に安定して資金を供給してくれるといった誤解が見られることも思い出しました。 こちらは新書版で易しめなので、金融政策については同じ著者の「失われた十五年と金融政策」がお勧めです
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本書は、1990年代から2009年までの、本の財政政策・金融政策・ブルーデンス政策(金融秩序維持政策)を詳述したものであり、「失われた15年」がどのような経過を経て、政府がどのような政策を取ったのかが系統的に展開されている。専門的ではあるが、わかりやすい。 この内容は、おそら...
本書は、1990年代から2009年までの、本の財政政策・金融政策・ブルーデンス政策(金融秩序維持政策)を詳述したものであり、「失われた15年」がどのような経過を経て、政府がどのような政策を取ったのかが系統的に展開されている。専門的ではあるが、わかりやすい。 この内容は、おそらく大学などで1年間ぐらいかけて学ぶようなことかもしれないと感じた。読後に経済のマクロ的構造がわかったような気もしたが、きちんと理解するには、もっと専門的な学習が必要かもしれないと感じた。 読んで考えたことは、経済政策には多くの視点があり、どの視点で見るかで対応策がまったく違ってくることだ。どの視点と政策が正しいのかは、数年後に結果をみなければわからないことなのだろう。「失われた15年」が「20年」になろうとしている日本は、多くの誤りを積み重ねていることは間違いがないのだろうが、何が誤りであったのかの専門家の合意があるとは聞かない。経済学者は、もっと誤りを指摘する積極的な見解を発表すべきではないかと、本書を読んで感じた。本書でもそれぞれの時期の政策の内容は詳細に追いかけているが、批判的な表記は少ない。もっとも「未踏領域」の経済政策に対しては、なにが最適かの判断は困難なのかもしれないが。 本書は、客観的すぎて立ち位置があいまいにも感じた。もっともこれが実証科学である経済学というものであるならば、「決め付け」が横行する経済書よりも価値は高いのかもしれない。 著者は、インフレ・ターゲットには否定的であると思ったが、デフレに沈む日本経済に対する効果的な経済政策は、他にあるのだろうかとも思った。 本書は、1990年代以降の経済政策を系統的に俯瞰できる良書であると思ったが、政府の経済政策を肯定的なトーンで描いていると感じた点と、今後の対応策についての処方箋があいまいである点がちょっと不満に思えたが、読後には、もっと経済を深く知ってみたいと思わせる本であると思った。
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fiscal policy,monetary policy,prudential policyそれぞれについてわかりやすく説明し、過去の危機時にこれらの政策がどのように採用され、どのような効果が出たのか分析している。
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