なぜ世界は不況に陥ったのか の商品レビュー
発売当初に購入したのですが、本棚に埋もれていて6年後になってやっと読みました。その意味では、金融危機のメカニズムなどだいぶわかってきている中で本書を読んだのですが、特に池尾先生の解説は極めて明確で、自分の頭の中で整理できていなかった面も本書で整理できました。他の方が指摘されている...
発売当初に購入したのですが、本棚に埋もれていて6年後になってやっと読みました。その意味では、金融危機のメカニズムなどだいぶわかってきている中で本書を読んだのですが、特に池尾先生の解説は極めて明確で、自分の頭の中で整理できていなかった面も本書で整理できました。他の方が指摘されているように細かい箇所で間違いはあるのかもしれませんが、これだけの内容を2009年時点で明快に解説されているのはすごいと思います。良い本の定義は「何年後、何十年後に読んでも面白い本」だと思うのですが、その意味で本書はこれを満たしています。ビジネスマンにとっても読みやすいので、今読んでも面白く感じると思います。 対談方式も読みやすさの点で良かった。本書を通じて池田先生が問いを投げかけて池尾先生が答えるパターンが多いですが、内容的にはそれで良い。申し訳ないですが池田先生のコメントは質的には池尾先生に劣る。池田先生は政治家や官僚の批判をたくさんされているのですが、感情的かつ抽象的なので、私は納得すると言うより気分が悪くなりました。「自分の考えが全部正しい」という傲慢さも見え隠れする。一方、池尾先生は、官僚は具体的にどこそこができなかったのが問題だが、しかし当時の世論は官僚にその策を実行させなかったのも事実だ、というように客観的に分析されていて共感できました。池尾先生などは大学生に教えるのもいいけれど、ビジネスエグゼクティブや政治家中心にティーチングした方が世のためになるんじゃないでしょうか。米国だとハーバード大学はケネディスクールやビジネススクールで一流のエコノミストがまさに政策実務担当者や企業のエグゼクティブを短期間プログラムで啓蒙しているわけで、日本にもそういう場が必要ではないでしょうか。
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リーマンショックに至る道筋が分かりやすく、かつ、詳述されている。CDO等債務担保証券と度を超えたレバレッジ、超金融緩和は実物経済発展には殆ど寄与することなく、貧富の差を広げて次のバブルの温床となる。黒田日銀がその事を改めて証明してみせたのはお見事でした。 大手町丸善の池田さん池尾...
リーマンショックに至る道筋が分かりやすく、かつ、詳述されている。CDO等債務担保証券と度を超えたレバレッジ、超金融緩和は実物経済発展には殆ど寄与することなく、貧富の差を広げて次のバブルの温床となる。黒田日銀がその事を改めて証明してみせたのはお見事でした。 大手町丸善の池田さん池尾さんの座談会に参加して購入(お二人にサイン頂いた)。池尾さんには日銀審議委員を務めて頂きたかった。ご冥福をお祈り申し上げます。
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2020/02/21再読了「歴史的評価」が加わり面白い 論点①日本の失われた10年②米国の金融依存体質 根本・本質は変わらず更に推移した上に「コロナ禍」 世界経済のリスクは膨れ上がり、「爆発」待つのみか 日本 バブル後、金融が萎縮 リスク取れない 「市場の失敗」vs「政府の失敗」...
2020/02/21再読了「歴史的評価」が加わり面白い 論点①日本の失われた10年②米国の金融依存体質 根本・本質は変わらず更に推移した上に「コロナ禍」 世界経済のリスクは膨れ上がり、「爆発」待つのみか 日本 バブル後、金融が萎縮 リスク取れない 「市場の失敗」vs「政府の失敗」 懐かしい議論 経済体制論 結局は「組合せの割合」 経済戦略は長期的=産業構造を変え、時代適合・最適化 成長分野「医療・介護」需給調整の不適・政府の失敗 衰退産業=需要の減退→資源を引き上げる=倒産 それを守る=雇用の確保→低い労働生産性を許容する ⇒皆で貧しくなる 結局は「サービス業の生産性問題」(アトキンソン) 2009/04/12 2008年リーマンショックの総括。①不動産バブルの崩壊 ②市場型間接金融 要は「異例の金融緩和」による。 ITバブル後の、日本の金融緩和50兆円→100兆円乗数効果 日銀福井総裁の引き締め転換が契機となったと思う 1980年代ー資金余剰への転換が契機となった =金融産業の不況産業化 不動産融資・バブル投資→崩壊へ
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ジャーナリストと経済学者の「現在の世界経済の状況」についての対談集。内容は、・アメリカ金融危機の深化と拡大・世界的不均衡の拡大・金融技術革新の展開・金融危機の発現メカニズム・金融危機と経済政策・危機後の金融と経済の行く末・日本の経験とその教訓となっている。現在や過去の金融メカニズ...
ジャーナリストと経済学者の「現在の世界経済の状況」についての対談集。内容は、・アメリカ金融危機の深化と拡大・世界的不均衡の拡大・金融技術革新の展開・金融危機の発現メカニズム・金融危機と経済政策・危機後の金融と経済の行く末・日本の経験とその教訓となっている。現在や過去の金融メカニズム説明、解説はなかなか面白いのであるが、金融リテラシーの低い私にとっては、ついていけない部分があった(一般的出ない用語は、注釈を入れてくれくれれば、なお良かった)。
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未読 プロローグ(池尾和人) 講義の構成 エグゼクティブ・サマリー なぜ世界は不況に陥ったのか 第1講 アメリカ金融危機の深化と拡大 --サブプライム問題から全般的な信用危機へ その1 サブプライム問題 その2 全面的な信用危機への拡大 その3 リーマン・ブラザーズの破綻以...
未読 プロローグ(池尾和人) 講義の構成 エグゼクティブ・サマリー なぜ世界は不況に陥ったのか 第1講 アメリカ金融危機の深化と拡大 --サブプライム問題から全般的な信用危機へ その1 サブプライム問題 その2 全面的な信用危機への拡大 その3 リーマン・ブラザーズの破綻以降 第2講 世界的不均衡の拡大:危機の来し方I ーー1987年、1997年、2007年までの節目を振り返る その1 長期不況:1970年代末~1987年 その2 アメリカ経済の再活性化:1987年~1997年 その3 マクロ的不均衡の拡大:1997年~現在 第3講 金融技術革新の展開:危機の来し方II ーーデリバティブ、証券化、M&A その1 伝統的銀行業の衰退と金融革新 その2 デリバティブ取引の意義 その3 投資銀行の成功と変質 第4講 金融危機の発現メカニズム --非対称情報とコーディネーションの失敗 その1 過剰投機はなぜ起きる:エージェンシー問題と「美人投票」 その2 取り付けの合理性とリスクテイク その3 市場型システミック・リスク 第5講 金融危機と経済政策 --「市場の暴走」と「政府の失敗」 その1 「政府の失敗」の結果 その2 経済思潮の変遷 その3 経済政策をめぐる争点 第6講 危機後の金融と経済の行く末 --中長期的な展望と課題 その1 投資銀行は終わったのか その2 規制監督体制見直しの課題 その3 長期不況の予感 第7講 日本の経験とその教訓 --われわれは何を知っているのか その1 「失われた10年」の原因 その2 「失われた10年」の教訓 その3 不良債権問題への政策的対応 エピローグ(池田信夫) 新たな長期不況の予感 コーディネーションの失敗からの脱却 日本の宿題 構造改革は終わっていない
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久しぶりに積んでる本を読了。 2008年の金融危機に関しての、2人の経済学者の議論。 サブプライムローン問題という、アメリカの国内バブルが なぜ全世界の金融危機に至ったかという話。 そこから得られる教訓と、これからの日本の行く末。 --- 本書に手を伸ばした動機...
久しぶりに積んでる本を読了。 2008年の金融危機に関しての、2人の経済学者の議論。 サブプライムローン問題という、アメリカの国内バブルが なぜ全世界の金融危機に至ったかという話。 そこから得られる教訓と、これからの日本の行く末。 --- 本書に手を伸ばした動機は 今後、日本に訪れるであろう財政危機への準備のためである。 実際のところ、私は日本の財政は既に詰んでいると思っている。 財政危機になったとしても、日本列島が沈没するわけではないが、そのうちIMFや債権者を含めて債務再編を行う必要が出てくると思う。 現状、国債発行残高が800兆円を超えているのみらず 2013年度予算でも 歳出 : 92兆 税収等: 47兆 国債 : 45兆 と、税収とほぼ同額の国債を発行しないとやっていけない財政状態にある。 この財政構造は継続性に疑義がある状態であり 早急に歳出を減らして歳入を増やすしか手はない。 具体的には緊縮財政路線と上げ潮成長路線があるが どちらにせよ景気回復を果たして経済成長に持っていかないと話にならない。 しかし何らかの政策で、仮に景気回復を果たしたとしても 社会のあちらこちらが金利上昇(国債価格下落)に耐えられないのではないかと思う。 日本は低金利になってから何年経つだろうか。 我々は低金利が当たり前となってしまって、それが社会の前提となっている気がする。 【国債の利払費の増加】 金利が上昇すると、新規発行国債と借換債の利払費が増えてしまう。 専門家の試算によると、1%の金利上昇で毎年1兆2000億円もの利払費増加となる。 10年も経ったら12兆円も利払費が増えてしまう。 野田首相が政治生命を賭けて上げた消費税も 利払費増加で簡単にすっ飛んでしまうのだ。 【国債価格の下落】 金利上昇=国債価格下落である。 利払費の増加はボディーブローのように効いてくるが 国債価格の下落は、企業の財務諸表にストレートに突き刺さる。 金利が上昇すると市中の国債価格が下落するため 国債を保有している企業等のバランスシートが毀損する。 満期有価証券として保有していれば時価評価する必要はないが その他有価証券として保有している場合は 株式などと同様に決算時に減損する必要がある。 金利が上昇した時に、どの程度の評価損が発生するのか。 いくつか銀行等をピックアップして 公開されている有価証券報告書から ざっくり試算をしてみた。 金利が1%上昇した時に、保有する日本国債(その他有価証券)の評価損 (1)三菱東京UFJフィナンシャルグループ ▲1300億円 (自己資本の約1%) (2)横浜銀行 ▲ 360億円 (自己資本の約4.4%) (3)東北銀行 ▲ 48億円 (自己資本の約 23%) (4)第一生命 ▲4500億円 (自己資本の約 45%) さすがにメガバンクや健全な地銀は対策をしていて 少しばかりの金利上昇では破綻なさそうだ。 やはり危ういのは、地方銀行、信用金庫、そして生命保険会社。 金利がジワリと上昇して、そこらへんがパタパタとしだすというのが嵐の前兆かなと思う。 その前に、ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険の方が危なくなるのかな。 【というわけで・・】 本書を読み、いくつか調べ、考えた上で出した結論。 日本の財政・金融危機が始まるサインは以下の通り。 ・長期金利が1~2%程度上昇する ・格付会社による日本国債格下げ、それに伴う金融機関の一斉格下げ ・財務体質の弱い信金・地銀・生保が2~3社破綻、または取付け騒ぎ サインが見えそうになってきたら、NYにADRで上場している日本株を ドル建てで信用売りしようかなと思っちょります。 いつもの事ながら、全く書評になってないな。
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藤沢数希氏が『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門 もう代案はありません』の巻末でこの本を紹介されていたため約1年半ぶりくらいに再読。昔は何もわからないまま読み進めていたのを実感w 藤沢さんも書いているように、世界金融危機が起こって後早い時期に書かれているにもか...
藤沢数希氏が『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門 もう代案はありません』の巻末でこの本を紹介されていたため約1年半ぶりくらいに再読。昔は何もわからないまま読み進めていたのを実感w 藤沢さんも書いているように、世界金融危機が起こって後早い時期に書かれているにもかかわらず、内容として、危機の背景と経済政策の連関や、今回の現象が経済学の発展の中でどのように位置づけられるか、といったことが、かなり高度かつ分かりやすくまとめられている。 巻末に用語集や読書案内もついていて満腹なり。 リーマンショックとは何だったのか、なぜ世界が不況に陥ったのか、その中で日本の経済はどうなっているのか。またどうしていくべきか。 こういったことを理解したい人に、もっともオススメ出来る一冊。 対談本だけど、よく読めば内実は池尾さんが一方的に説明しているところがほとんど、というのは公然の秘密ww
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池田信夫と池尾和人の対談形式でまとめられた本。 池田信夫はたまーにブログが話題になるので名前だけは知ってるけど、典型的な難しいこと言う教授って感じで、 池尾和人はまったく知らなかったけど、難しいことを一般人にも分かりやすく説明しようとするタイプです。 二人がいい感じに噛み...
池田信夫と池尾和人の対談形式でまとめられた本。 池田信夫はたまーにブログが話題になるので名前だけは知ってるけど、典型的な難しいこと言う教授って感じで、 池尾和人はまったく知らなかったけど、難しいことを一般人にも分かりやすく説明しようとするタイプです。 二人がいい感じに噛み合って分かりやすいけど内容的にも浅くない本ができてると思います。 この本の前に読んだ本とは違い、サブプライム⇒リーマン破綻⇒世界的金融危機の流れを全てカバーしてます。 一つ一つの流れがよく分かって、その上で池田さんがそれを批評するってスタンスだったような。 以下、思わずうなずいちゃった箇所を引用 「公的資金の投入を国民に認めてもらうためには、いかに金融危機が深刻な状態にあるかを説明しなければなりませんが、公的資金の投入を含む危機解決の準備が整っていない段階で、一国の政治的責任者が金融危機が深刻であると明言してしまうと、それこそパニックの引き金を引くことになりかねません。」 たしかにー。 「少なくとも、経済学の道具箱にはいろいろな道具があるということは知っておいてほしい。普通、世の中の人が思いつきそうなアイデアは全部実はあるので、経済学者はこういうことを見落としているとかいう話はあり得ない(笑い)。かなり頭のいい人が思いついたようなことでも、過去何百年の歴史の中で一度も思いつかれていない新しいアイデアなんていうのは、人類社会にほとんどない。」 まじかよー。 「(投資銀行に対して)表現はちょっとよくないかもしれないけれど、ノミ好意をやっていたのだと思います。競馬のノミ行為の胴元は、普通は中央競馬会よりも少しいいぐらいの配当を顧客に返す。それでも、普段は胴元が儲かるようになっている。税金とかがかからない分、顧客もノミ行為をやっているどうもとも有利なのだけれども、間違って顧客が万馬券とかを当てると困ったことになる。胴元は、預かったお金で中央競馬会の馬券を買っているわけじゃないから、万馬券を払い戻す資金はない。今回の金融危機は、そういうのと事態の本質は変わらない。」 なるほどー。 「(日本の実態経済の今後について)30年間そういう課題に直面してきていながら、解決できなかったわけで、30年間できなかったことがこれから数年でできるとは、正直に言って思えない。だから、私はここのところ、2010年代は「質素で退屈で憂鬱な低成長の時代」になるんじゃないかという予想をしています。」 うわー。 「(世論やマスコミの対応について)全然想定してなかったことが起きたから、アドホックにやらざるを得ない。行政のほうはかなり抜本的にやらなきゃいけないと思っているのだけれど、政治家やメディアにそこまでの危機意識はなくて、完全懲悪の意識のほうが強い。」 なっとくー。
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対談形式で易しいです。巻末に用語解説と読書案内もついており、入門書として親切かと。 学部で教えられている経済学の水準が低いとか、それは大学のカリキュラムの問題ではないかと(本題の金融危機には直接関係ないので余計です)。 リフレ派を激しく攻撃しています。 池尾先生の語り口はわかり易...
対談形式で易しいです。巻末に用語解説と読書案内もついており、入門書として親切かと。 学部で教えられている経済学の水準が低いとか、それは大学のカリキュラムの問題ではないかと(本題の金融危機には直接関係ないので余計です)。 リフレ派を激しく攻撃しています。 池尾先生の語り口はわかり易く面白いですね。 また池尾先生の別の本へ進みたいと思います。
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本書の内容はとても興味深く読めた。経済の専門書としては比較的わかりやすい内容だと思ったが、その提起する議論は今までの巷での論議と違って重大な議論を含んでおり、いろいろ考えさせられることも多く、内容の是非は検討すべきだが、高く評価できる本と思う。 本書では、アメリカの金融危機の...
本書の内容はとても興味深く読めた。経済の専門書としては比較的わかりやすい内容だと思ったが、その提起する議論は今までの巷での論議と違って重大な議論を含んでおり、いろいろ考えさせられることも多く、内容の是非は検討すべきだが、高く評価できる本と思う。 本書では、アメリカの金融危機の内容の詳細な内容やそれを生み出したアメリカ経済の30年のタイムスパンでの検討などを展開している。対談形式なので、結構読みやすく理解しやすい。 本書の市場経済についての「20世紀の初頭は、周期的に悲惨なことが起きる資本主義のシステムは、もう困ったシステムというわけで、市場経済に代わる計画経済とか統制経済のほうがいいだろうとやってみたわけです。しかし、もっと悲惨だということがわかった。もう資本主義しかないわけです。」という認識には同感する。しかし、「世界経済が20世紀前半に重化学工業に中心が移った第2次産業革命に相当するような、次のレベルの産業革命の局面にあるという現状認識」については、一定理解はできるが、その結論としての「アメリカは経常収支の赤字を縮小しなければならない。日本は経常収支の黒字を縮小しなければならない。そのためには貯蓄をしないか、貯蓄を国内で投資できるように構造改革しなければならない」「(日本の)産業構造を変えていくという基本認識を持つかどうか」「日本の貯蓄を投資に向けるための投資機会をいかに拡大するか」「メカニズムを直さないで総需要を追加するのは対処療法。短期的な手段を行うと、中長期のインセンティブの歪みがおきるというトレードオフ」という提起を読んでいくと、日本経済のさらなる構造改革の主張である。 これは日本において「格差拡大」の社会悪を生み出したことによって一敗した新自由主義者の再戦の理論ツールではないかとも思った。しかし、経済学の変遷と日本経済の90年代の「失われた10年」についての論考を読むと専門的であり、詳細は良くわからないが、きわめて興味深い主張が述べられており、説得力がある。 「現代の経済学においては不況というのはある種の市場の失敗としてとらえられる」「ケインジアン対マネタリスト、そんな対立はもう無い。学問の世界では80年代以降は無い」「フリードマン、ルーカスから後は学部レベルではほとんど教えられていない。現在の統一的フレームワークは、ニューケインジアン」等々。本書によると、巷のさまざまな経済的再生の提案は、最新の経済学を知らない古い人間によるものだといわんばかりの内容である。 しかし、本書で紹介された失われた10年の原因としての「林=プレスコット説」については、1990年代の長期不況の原因は80年代末に行われた時短が原因であるとするものらしいが、どうも納得しがたい。当時、時短は世界的潮流でヨーロッパ諸国も多く取り組んでいたと思うがその諸国で90年代に長期不況とはなってはいないと思った。 どうやら経済学者の間でも、現在の低迷する日本経済再生への対処方針は、はっきりしていないことはわかった。 本書においては「ここ10年ぐらいの日本経済は、一部の輸出産業を円安と低金利の金融政策で支えてきた。それは結果的には輸出産業に対する補助金でいつかはインバランスが是正される。日本の場合は、一部の効率のいい輸出産業が外貨を稼いで、それを国内の効率の悪い部門に分配するという形できたが、それは維持可能じゃない構造」であるとの認識の下に「アメリカは、1980年代に第3次産業革命に対応する産業構造の転換を実現したのに対して、日本は製造業の成功を過信して、その変化を通過しないまま今まで来た。日用品化した製造業から高付加価値のサービス業への転換」が必要であると主張する。一定の説得力はあるが、まだまだ議論が必要であると感じた。本書の主張に全面的に納得・賛同できるものではないが、この著者の他の本もぜひ読んでみたいと思った。
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