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わくらば日記 の商品レビュー

3.9

98件のお客様レビュー

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2017/11/19

「わくらば」にはよく知られている、病気におかされた葉を意味する「病葉」と草木の若葉を意味する「嫩葉」という正反対の意味がある、とは本書の解説で知った。 であれば本書の主人公、活気溢れる妹の和歌子と病身の姉、鈴音の対照的な姉妹の姿が浮かんでくる。 本編ではわからずに解説でなんとか著...

「わくらば」にはよく知られている、病気におかされた葉を意味する「病葉」と草木の若葉を意味する「嫩葉」という正反対の意味がある、とは本書の解説で知った。 であれば本書の主人公、活気溢れる妹の和歌子と病身の姉、鈴音の対照的な姉妹の姿が浮かんでくる。 本編ではわからずに解説でなんとか著者の深い意図がやっとわかる。ちょっと恥ずかしい。

Posted byブクログ

2017/08/24

昭和30年代の日本の下町を舞台に、ひとの記憶を垣間見る特殊能力をもつ鈴音(ねえさま)と、お転婆なワッコの仲良し姉妹の活躍を描くシリーズ。 当時の風俗や背景が抒情たっぷりに描写されてノスタルジックな感傷に浸れる。 ワッコの一人称で丁寧に回想される物語は終始やさしい言葉遣いで語ら...

昭和30年代の日本の下町を舞台に、ひとの記憶を垣間見る特殊能力をもつ鈴音(ねえさま)と、お転婆なワッコの仲良し姉妹の活躍を描くシリーズ。 当時の風俗や背景が抒情たっぷりに描写されてノスタルジックな感傷に浸れる。 ワッコの一人称で丁寧に回想される物語は終始やさしい言葉遣いで語られており、ミシンやテレビの導入に一喜一憂する市井の人々の日常が、目にもあざやかに浮かんでくる。 そしてなんといってもねえさまが非常に魅力的。 やさしく美しく、どこまでも一途にひたむきに、損なわれた人の痛みに寄り添おうとするねえさま。 そのせいで自分が病んで傷付いても、彼女は人の根底の善性を信じようとする。 そのありさまが実に尊く胸に迫る。 収録された事件はどれも当時の社会問題や世相を映しており、戦争や差別や貧困が影を落とすものも少なくない。 だが決して後味が悪くないのは、ねえさまのやさしさに救われているから。 どんな不幸に見舞われても、悲劇に打ち砕かれたその中からきらきら光るカケラをすくい上げようとするねえさまの姿が澄んだ感動をもたらす。 ねえさまを支えるワッコはじめ周囲の人々も魅力的。 口が悪いエリート刑事にお調子者の巡査、のちに姉妹の友人になるミーハー娘まで、バラエティ豊かな人々が加わって物語を賑やかす。 全体通して切なく心温まるストーリーなのだが、個性的なキャラクターによるテンポよくコミカルな掛け合いが痛快で、吹きだしてしまった箇所も多い。 口から先に生まれたようなワッコはじめ、不在の父親に代わって大黒柱を努めるかあさまも出番は少ないながらシメるところをきちんとシメてくれて好感がもてる。 個人的に朝の連続テレビ小説にぴったりの原作だと思うのだが……

Posted byブクログ

2017/03/01

昭和30年代。まだ日本が貧しかった頃の物語。 古き良き時代・・・と言っていいのかわからないけれど、今よりも不自由な(当時の人たちにはそんな認識はなかったと思うけれど)中に、人の優しさが息づいていた時代。 現実は厳しく、ときに残酷だ。 けれど反面愛しくて優しくて、ときに泣きたくなる...

昭和30年代。まだ日本が貧しかった頃の物語。 古き良き時代・・・と言っていいのかわからないけれど、今よりも不自由な(当時の人たちにはそんな認識はなかったと思うけれど)中に、人の優しさが息づいていた時代。 現実は厳しく、ときに残酷だ。 けれど反面愛しくて優しくて、ときに泣きたくなるほどに切ない。 ほんわりとした語り口で、穏やかさとあたたかさが描かれている。 不思議な力を持つ姉と、姉を慕う妹。 柔らかな印象なの凛とした美しさも感じさせる姉・鈴音は、病弱なところも含めて憧れ的な存在なのかもしれない。 二人をしっかりと見守る女丈夫な母親の果たす役割も大きい。 そして全編を通して感じるのは、甘く切ない何か。 たぶん鈴音の持つ能力はサイコメトリーと呼ばれるものだろう。 「サイコメトラーEIJI」のEIJIと同じ能力だと思われる。 鈴音はその能力によって事件解決の手伝いをしたり、身近な人の悩みを解消したりすることもできる。 けれど、同時にその能力によってもたらされるマイナスの部分も鈴音が引き受けなければならない。 特異な能力を持ってしまった人間は、普通よりも過酷な運命を辿りやすい。 少なくとも物語の中ではそういう設定のことが多い。 どんなに哀しい運命でも、「人生は無意味なんかじゃない」と思いたい。 たとえこの世のすべてが寂しく虚しいものに見えてしまうときがきたとしても・・・。 朱川さんらしい味わいのある物語だった。

Posted byブクログ

2016/12/14

他人や物から過去を見られる力はチョッピリ羨ましい気もするが… 人は必要以上なものには気付かない方がしあわせなのか。 これは人の永遠の課題なのかも。 心優しい姉妹、私が生まれる前なのに何故か懐かしさが伝わってくる。 まだ明かされていない秘密もあるようだから、続編も買おう。

Posted byブクログ

2016/11/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

昭和30年代、不思議な力を持った姉との話。「流星のまたたき」で姉さまが流星塵を力を使ってみたところになんか、えらく私も感心した。 最後、姉さまと茜さんが亡くなったのが次回わかるのかな・・・。気になる。

Posted byブクログ

2016/11/23

見る力のある美しい姉さまは、優しさゆえに磨耗する。特に1話目は、それが辛くてなかなか読み進められなかった。 知らずとも懐かしく感じる戦後すぐからの日本がなんだか美しくて。 けれど姉さまが早くに亡くなる事がわかっているせいか、そして語りが老年に入り昔を懐かしんでいるせいか、ずっと物...

見る力のある美しい姉さまは、優しさゆえに磨耗する。特に1話目は、それが辛くてなかなか読み進められなかった。 知らずとも懐かしく感じる戦後すぐからの日本がなんだか美しくて。 けれど姉さまが早くに亡くなる事がわかっているせいか、そして語りが老年に入り昔を懐かしんでいるせいか、ずっと物悲しくて。 なんだか寂しくなるお話でした。

Posted byブクログ

2016/10/04

この世で一番悪いことは、人の命を取ることです。その次に悪いのは、信頼を裏切ることです。 自分が信じられていることに、誇りを持ちなさい。信じられたからには、もう自分の体ではないのだと思いなさい。 信じた方が悪いんだなんて、口が裂けても言ってはいけません。あなたを信じた人は、あな...

この世で一番悪いことは、人の命を取ることです。その次に悪いのは、信頼を裏切ることです。 自分が信じられていることに、誇りを持ちなさい。信じられたからには、もう自分の体ではないのだと思いなさい。 信じた方が悪いんだなんて、口が裂けても言ってはいけません。あなたを信じた人は、あなたを愛した人でもあるんですから。

Posted byブクログ

2016/06/01

人や物がもつ記憶を読み取る能力がある“姉さま”とその妹“ワッコちゃん”。昭和30年代の東京を舞台に、人と人とのつながりや温かさ、少しの哀しみが沁みる連作短編小説。 時を経て、40年ほど前の子ども時代を、ワッコちゃんが柔らかな語り口で回想するかたちでストーリーは展開していきます。...

人や物がもつ記憶を読み取る能力がある“姉さま”とその妹“ワッコちゃん”。昭和30年代の東京を舞台に、人と人とのつながりや温かさ、少しの哀しみが沁みる連作短編小説。 時を経て、40年ほど前の子ども時代を、ワッコちゃんが柔らかな語り口で回想するかたちでストーリーは展開していきます。盗難事件や殺人事件、悲しい出来事が続きますが、姉さまやワッコちゃんを始めとした人間味溢れる登場人物のおかげで悲しいだけは終わりません。 この作品には「善か悪か」を読み手に問うシーンが多く登場し、ひとつの大きなテーマになっています。犯罪自体は悪です。しかしなぜ犯罪に手を染めなければならなかったのか、その背景には本人が苦しんだ過去や嘘や事実が隠されている場合もあり、悲しさと切なさが綯い交ぜになりました。 事件ものが多いなか、『流星のまたたき』は切なくも淡い恋模様が描かれとても優しい気持ちになります。 夕日が照らす土手や煙突、部屋に響くミシンの音、三つ指揃える礼儀など、古き良き昭和の情景が鮮やかに広がりノスタルジックな気分に。 『わくらば』の意味は追々分かってくるのでしょうか。続編も楽しみ。

Posted byブクログ

2016/05/16

ファンタジー入りノスタルジックミステリーという感じ。日本人がなぜか懐かしいと感じてしまう戦後の元気な日本の清貧姉妹が織りなす続きものの短編で、通勤や通学で読みやすいかも。私はその頃には生まれていませんが、なんとなく好きな空気感でした。ちょっと怖いところもありますが、読後はどのお話...

ファンタジー入りノスタルジックミステリーという感じ。日本人がなぜか懐かしいと感じてしまう戦後の元気な日本の清貧姉妹が織りなす続きものの短編で、通勤や通学で読みやすいかも。私はその頃には生まれていませんが、なんとなく好きな空気感でした。ちょっと怖いところもありますが、読後はどのお話も重くならず、爽やかでした。また次のシリーズを読みたくなるような伏線も巧妙でした。

Posted byブクログ

2016/02/29

昭和30年代東京下町が舞台。活発少女の主人公、礼儀に厳しい母、不思議な能力を持つ姉、姉妹の様な茜ちゃん、交番のおまわり秦野さん、爬虫類顔の神楽刑事、全てのキャラが魅力的で心が温まる。今現在の主人公が過去の"アノ頃"を語り口調で振り返る連作短編だが、既に姉は若く...

昭和30年代東京下町が舞台。活発少女の主人公、礼儀に厳しい母、不思議な能力を持つ姉、姉妹の様な茜ちゃん、交番のおまわり秦野さん、爬虫類顔の神楽刑事、全てのキャラが魅力的で心が温まる。今現在の主人公が過去の"アノ頃"を語り口調で振り返る連作短編だが、既に姉は若くして亡くなっているという設定により終始懐かしさと寂しさが付き纏う。この何とも言えない哀しい気持ちが肝なのだ。貧しい中でも精一杯前向きに生きる姿に心打たれ、川原で母が茜ちゃんを戒めるシーンは涙を誘う。『辛いからこそ優しくなれる』。筆者の優しい文体がそれを見事に表現している。

Posted byブクログ