ダブル・ファンタジー の商品レビュー
『人間は自由である。人間は自由そのものである。われわれは逃げ口上もなく孤独である。そのことを私は、人間は自由の刑に処せられていると表現したい』ージャン・ポール・サルトル
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人の顔色ばかりうかがっていた主人公が、あるきっかけを機に『自立』し、顔色ばかりうかがうのではなく、自分ひとりで生きていけるように生きていく物語。 官能の部分が、というレビューをよく目にするけれども、そこはあくまでそういう部分が強く全面に押し出されているだけで本質ではない。と、思う。 だったらしょっぱなからそういった文章だけで構成していけばいいだけのはなし。 これはあくまで、(自分が自分を、もあるし、他人から自分が、ともいえるのだが)押さえつけられていただけの自分じゃなくなる、独り立ちするという物語だ。 演劇の世界にのめりこみ、脚本家としても成功し、順風満帆な生活を送り、でもそれは自分の才能もさることながら他人に押さえつけられていたからこそ続いていたしあわせで、しあわせのかたちは一つだけではない、ということを知った、じょせいのはなし、なのである。 おんなだけでも生きていける世の中にも、なってしまった。細胞の問題だけれども。この作品でそういった意味合いの言葉は出てきていないけれど、それだけ、女性がちからを持つ、とは、男性にとっては恐怖の対象でしかないのだろう。 男性は、自分に属さない女性を厭うものである。 だから、主人公が自分のちからで生きると決めたとき旦那である省吾は猛反対したし、傾倒させた志澤はにこりとほほえんだ彼女に毒気を抜かれた。離れそうになったと知ってからいそいそと愛情表現を始める岩井、なんだかんだ言いながら自分のものにならないと拗ねる大林。坊さんはスルーで← なんだ、オトコってこんなに軟弱だったっけ?とげんなりする奈津の姿が目に浮かぶ。 志澤がいなければここまで独り立ちすることもなかったけれど、あんな口調の人間にトキメく奈津がよくわからない。まあ女性は得てして多少強引な自分のことを好きな人、が好きだからなあ。あくまで自分に好意を寄せていて、リードしてくれる、ということ。 世の中のレイプとかとは違うから、それをはき違えると大変な目に合う。 恋愛体質、なるほど言いえて妙だ。恋愛していないと枯渇してしまうのだろう、奈津は。だれかを好きでいないと、だれかから好きでいられないと、哀しくなる、寂しくなってしまうわけだ。 誰かに共感するわけではなかったけれど、一度好きになった人でも嫌悪してしまうとふれたくなくなる、というのにはうなずけた。 いくら好きでも、傾倒していても、ふとした瞬間からほころび始めて、嫌悪という感情が浮かんでしまうと、さわられることすら厭う。興味が失せたとか、なにも感じないとかではなく、ただ、嫌悪。 とりあえず、旦那の省吾はモラルハラスメントが過ぎる。ほんとう、自分じゃ正しいと思っているから、たちが悪い。世の中の男性諸君、省吾とおんなじことをだいたい一回はおこなっているって、わかってますかー?w あ、ちなみに四百ページうんたらだったんだけれどもまあ一日で読み終えちゃったよね。
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村山由佳さんの本を読んだのはおいしいコーヒーシリーズ以来だった。 村山さんの作品って、面白い、面白くないに関わらず読み始めると止まらない。文章が読みやすいからかな? 今回の作品は官能の部分が多々、大部分あるんだけどいやらしく感じない。むしろ、女性ってこう思ってるよなーって共感できる部分のほうが多かった。 登場人物は岩井さんが個人的にはいいなと思った。 できれば最後は岩井さんとハッピーになってほしかったけど、やっぱり奈津はそういうタイプの人間ではないんだなと感じた。大林のことがあんまり好きじゃないからかなw 志澤さんも中途半端であまりにも女性に対して無責任だなと思った。でも女性ってこういう男性に惹かれちゃうものだよなと感じた。
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この本。 性描写がたくさん出てくるけど、読んでいてひかれた部分は全てこれ以外の部分だった。 性描写なくしてこの本が書けなかったかなぁと少し残念に思う。 夫に気を遣っている、本当のところ怯えている奈津。 省吾との会話が出てくると読んでいていらついてしまった。 女が好きなことをす...
この本。 性描写がたくさん出てくるけど、読んでいてひかれた部分は全てこれ以外の部分だった。 性描写なくしてこの本が書けなかったかなぁと少し残念に思う。 夫に気を遣っている、本当のところ怯えている奈津。 省吾との会話が出てくると読んでいていらついてしまった。 女が好きなことをすると、女が好きなものを選ぶと、近くにいる男は、それが他の男だろうが、物だろうが、自分に属していないものだと激しく反応するのは、残念ながら、仕方ないのかもね。。と読みながら思った。 女はそのはざまでうまく男をコントロールして、自分のしたいこと、手に入れたいことについてできる限りやっていって、できたら笑顔でいられたらとは思うけど、ここまでやってのけるには相当の能力が必要だと思う。 自分がやりたいことをするっていうのは、何を選択するかによるところが多い。この事実に早く気がついて、いい面を見ていけばいいのかなと思う。 省吾、志崎、先輩(名字忘れ)、大川(だっけ?)と選択していく中、彼女の脚本はきっと、恐ろしいほど素晴らしいものになっていってるはず。 女の生き方的な小説としてとても楽しく読めた。 「気をつけろ。あいつ、あれでも中身は男だから」にはまいりました・・・。
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村山作品の中では、面白くないほうだと思われる。昼ドラマのような内容。衝撃的な作品というふれこみに騙された感あり。
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久しぶりに大作を読みました。494ページというページ数もさることながら、その全編が男女のやり取りと言いますか、営みというか葛藤が描かれているため、読み進めるのにとてもパワーが必要で、そういう意味でも超大作です。 私の場合、恋愛に対してどうしても美しい部分というか、例えば切な...
久しぶりに大作を読みました。494ページというページ数もさることながら、その全編が男女のやり取りと言いますか、営みというか葛藤が描かれているため、読み進めるのにとてもパワーが必要で、そういう意味でも超大作です。 私の場合、恋愛に対してどうしても美しい部分というか、例えば切なかったり、あるいは格好良かったり、そういうものを期待してしまうのですが、この作品では人間の本質、あるいは人を愛することの本質を、裏表も嘘偽りもなくえぐり出そうとしているように感じます。 だから、出てくる男性の格好悪いところも見えてしまいますし、女性だって、うわべだけのきれいごとでは済まされません。お互い本音で、自分の求めているものだけを相手に要求していく、そんなドロドロしたやり取りが、リアルというか、本来の人間の姿、欲望なのかなと考えさせられました。 著者の村山由佳さんは、私の2歳上の女性ですが、読んでいるうちに、女性が書いた作品だということを忘れてしまう瞬間があります。でも、冷静に考えてみると、ここで展開されているのは女性からの見方が強いわけで、男性の本質はどうなのだろうか、本当にここに書かれているとおりなのだろうか、自分でも分からなくなってしまいます。ただ、本のタイトルにもなっているように、男女は根本的に違うわけで、その違いを、もっと意識する必要があるなと。 ダブルファンタジーについて、主人公の奈津が語っているところを引用します。 p.423 そう言えば昔、岩井とほんの一時期つき合っていた頃だ。彼の部屋で、レノンとヨーコが一緒に出したというアルバムを聴かせてもらったことがある。 奇妙なアルバムだった。二人の作った曲が交互に入っているのだが、レノンが息子への愛情をせつせつと歌いあげたかと思えば、そのあとにヨーコが、男に対するあからさまな欲望を喘ぎ声混じりで歌いだすといった具合だ。 当時はあきれて二度と聴く気になれなかったが、今になってみると思う。 どれほど愛し合っていても男と女はじつはまったく別のものを見ているのだという真実を、あんなにもくっきり浮き彫りにしてみせたアルバムはなかったのではないか…。
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他人にひれ伏してしまうところ、すごく私に似てると思った。ただ、私はまだ自由になれていないけど。恋愛に溺れ、突き放され、そしてまた恋愛に溺れる。なんでこんなに激しくて、もろいんだろ。不倫におぼれるというよりは、自分自身におぼれるというか。。。私的には岩井良介の包みこむような愛がいい。
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村山さんの文章のうまさに感嘆し、そして私には刺激が強すぎるくらい官能的な描写も多かったけれど、村山さんの描く女性にはいつも共感させられるところが多く、夫婦の問題など考えさせられるところの多い作品でした。
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官能小説。でもね奈津の気持ち理解できなくなくて、浮気を繰り返す感じ似てるなとか思っちゃって。きっと女のどこかには奈津がいるんやないかな。
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なんか濃いものが読みたいなと思って借りた本。 開いてみればそれは官能小説でした。 セックス描写が多いものは久しぶりに読みました。最初の浮気相手(出張ホスト除く)、志澤はいかにも肉食な男性。相手をひれ伏させるタイプ。 次の岩井はロールキャベツ男子。奈津に対する気配りとかがすごく...
なんか濃いものが読みたいなと思って借りた本。 開いてみればそれは官能小説でした。 セックス描写が多いものは久しぶりに読みました。最初の浮気相手(出張ホスト除く)、志澤はいかにも肉食な男性。相手をひれ伏させるタイプ。 次の岩井はロールキャベツ男子。奈津に対する気配りとかがすごく女性受けがよさそう。私もこの中では岩井が一番好きですね。旦那さんにしたいタイプですね。浮気は困るけど。志澤の次の相手として奈津の心と身体を癒す人でした。 坊さんやらなんやらはおいといて最後の大林。これはまだつかめない。だから奈津も大林にとらわれはじめたのではないでしょうか。 夫の省吾との擦れ違い。省吾にはきっと悪気はないんですね。だからこそ奈津を苦しめもする。好きになれない夫だとは思いましたがだからといって奈津を愛していないわけではない。 別居を始めて、たまに省吾のことを思い出しはするけど私は犬のハヤトも思い出してほしかった。一緒にいるのが環だからって、ハヤトのことを忘れないでほしいなぁ。 志澤を振り切ったと思ってさえやはりどこかで志澤の影があった奈津。 奈津が夫のもとへと去ってゆくきっかけを与えただけに特別な男性だったのでしょうか。それとも彼のあの攻撃的なところに女は惹かれるのでしょうか。 最後に岩井が変わってしまったのが残念だったけど、奈津が変わってしまったから岩井も変わってしまったのだろう。せっかく妻にしか言わない「愛してる」を言ったのに。 花火大会のシーンのラストは美しい情景でした。 この作品を30代の主婦の目線で読んだらどうなんだろうと思いました。また私と感じ方が異なることでしょう。 この奈津が60、70になったらどう過ごしているのか気になります。
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