女神記 の商品レビュー
イギリスの敏腕編集者の発案により実現した各国の神話を現代小説に蘇らせるプロジェクトで、日本代表は桐野夏生さん。日本最古の書「古事記」に描かれた日本神話の男女の神「イザナキ」と「イザナミ」のストーリーをベースに、男女の心の機微を丁寧に、かつドラマティックに書かれていらっしゃいます。...
イギリスの敏腕編集者の発案により実現した各国の神話を現代小説に蘇らせるプロジェクトで、日本代表は桐野夏生さん。日本最古の書「古事記」に描かれた日本神話の男女の神「イザナキ」と「イザナミ」のストーリーをベースに、男女の心の機微を丁寧に、かつドラマティックに書かれていらっしゃいます。 古代をテーマに、テンポよくまっすぐな視点で男女の情緒を描いたストーリーを読み進めるうちに、昨年、惜しくもこの世を去られた氷室冴子さんの名作の一つ「銀の海金の大地」シリーズを懐かしく思い出しました。ああ、続きが読みたかったなぁ・・・。 意図して購入したわけでは無いのですが、偶然にも先日購入した雑誌「一個人・三月号*2」に桐野夏生さんのインタビュー記事が載っていました。 「私は常に抗いたい女性しか書きたくない。弱い女性は書きたくないんです。ナミマは自らの運命に抗ってあげくに死んでいった。その運命の理不尽さを書きたかった、ナメるんじゃないよと」一個人2009年3月号「桐野夏生『女神記』を語る」より引用 なんとも力強いお言葉の通り、女神記に登場する女性達は、運命の荒波にもまれつつも、やがて強く、しなやかに、自分を棄てた男達を超越していく。その迷いなく前を見てたたずむ姿は、例えようもなく神々しくて、美しいのです。 元々、そういった力強い女性たちに対比させるように、男性達の内面的なものがより脆く、ナイーブに描かれているのだけれど、かの地で男神イザナキが、女神イザナミに残した最後っ屁(下品な例えですみません)だけは、フィクションということを忘れて「イザナキ許すまじっ!」という気持ちになりますね〜(笑) 「最後くらいは素敵な貴方でいてほしかった・・・」とか、トレンディドラマのヒロインような台詞を言いたくなるじゃないかっ^^; まあ、それはともかくとして、インタビューでは「もう一人のヒロインの物語も書きたい」と語っていた桐野夏生さん。個人的にすごく好きな女性(もう一人のヒロイン)なので、続編を楽しみに待ちたいと思います。
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古事記をベースにした神秘的な島の話で面白く読めました。 この設定は好きですね。グイグイ読めます。 ただ、ラストがあっさりで、結局マヒトの気持ちの真相が曖昧だったのが少々残念だったかな。
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神話をもとにした寓話的なストーリーなので、現実的ではないのだが、さすが桐野夏生の筆力、引き込まれ、あとには強い印象を残す。イザナミの造型は筆者ならでは。
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上大岡八重洲ブックセンターで購入 図書館で借りて読みたかったんだけれども、あまりの予約の多さに買ってしまった。 このパターン多いんだよね。
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読み始め、「・・・また島の話だ・・・」と思ってしまいました。 『東京島』のどろっとした印象があったので。 『東京島』は・・・中途半端な感じだったしなぁ。 でも、読後感はぜんぜん違いました。 こっちのがイイ! 『女神記』のあらすじ(帯に書いてある内容紹介)は・・・ 遥か南...
読み始め、「・・・また島の話だ・・・」と思ってしまいました。 『東京島』のどろっとした印象があったので。 『東京島』は・・・中途半端な感じだったしなぁ。 でも、読後感はぜんぜん違いました。 こっちのがイイ! 『女神記』のあらすじ(帯に書いてある内容紹介)は・・・ 遥か南の海蛇の島、二人の姉妹。 姉は大巫女を継ぎ、島のために祈った。 妹は運命に逆らい、掟を破った。 16歳で死んだ妹は、地下神殿で黄泉の国の女王イザナミに出逢う。 日本神話なのですよ。 南の島の巫女の姉妹と、イザナキ、イザナミのお話がからみあってすすんでいきます。 いいねぇ。 女神イザナミ。 男神イザナギに裏切られ、黄泉の国の女神となったイザナミの恨みと憎しみと怒りと哀れさと。 人間である闇の巫女「ナミマ」の恨みや哀しさも イザナミの恨みや哀しさも、 「男、憎し」という感情も心に響きますが 人間は、死ぬことができて。 肉体は滅び、無になれる。 だから諦めを知り、赦すこともできるのかもしれない。 神に死はないのですね。 っていうか、一回死んで、でも無にはならず黄泉の国の神となってしまったイザナミ。 女であり、神である。 かわいそうなイザナミ様。 「絶対に、赦さない」 この憎しみの強さが日本の神話の一部を担っている強さなのだと。 女はすごい。 女はつよい。 そして、かわいそうだ。 「かわいそうだ」は、「好き」とつながっているのかもしれない。 と、昔読んだ「ぼのぼの」の絵本に書いてあった。ような気がする。 だから、イザナミに好意を持ってしまうのでしょうか。 男の人は、この本をどんな気持ちで読むんだろう。
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憎しみ、怨みは相手を殺してもなお癒されないものなのでしょうか?死刑制度のことを考えてしまった。私はもし神様がいるのなら、究極の理不尽さを兼ね備えていると思っている。「東京島」から続けて読んだけど、最近の桐野さんは閉ざされた空間における濃厚な人間模様がお気に入りのようですね。
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「東京島」で大満足感を得られなかった桐野ファンとしては、状況設定などで(島、海の程度だが)あららまたもやこの感じ?と不安を持ちながら読み始めました。 しかーし、遅読の私がこんなに集中して早く読み終えたのは、興味ある古事記や神々絡みだけではなく、やはり「桐野夏生・毒感」が、私にとっ...
「東京島」で大満足感を得られなかった桐野ファンとしては、状況設定などで(島、海の程度だが)あららまたもやこの感じ?と不安を持ちながら読み始めました。 しかーし、遅読の私がこんなに集中して早く読み終えたのは、興味ある古事記や神々絡みだけではなく、やはり「桐野夏生・毒感」が、私にとって良い具合に出ていたから。 ちなみにベスト桐野は「グロテスク」です。
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これはとてもよかったです。ただの怨恨の感情しか持たない残忍な女の神様としか認識されていないイザナミさんのことを、本当にそうなのかなって疑って自分なりに再構築したっていう桐野さんらしい書き方。日本代表の名に恥じないです。
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黄泉の国を司る女神、イザナミ。 イザナミの元にやってきたのは、愛した男の子供を産み、幸せの絶頂でその男の手によって命を絶たれたナミマ。 ナミマは自分の過去を語り、イザナミの過去を知り、イザナミの苦悩を、底深い悲しみを知ることで自分の心に巣食うものにも気付いていく。 イザナミが語...
黄泉の国を司る女神、イザナミ。 イザナミの元にやってきたのは、愛した男の子供を産み、幸せの絶頂でその男の手によって命を絶たれたナミマ。 ナミマは自分の過去を語り、イザナミの過去を知り、イザナミの苦悩を、底深い悲しみを知ることで自分の心に巣食うものにも気付いていく。 イザナミが語る世界のはじまりの様子。 「天と地、男と女、生と死。昼と夜。明と暗。陰と陽。なぜふたつに分かれたかと言うと、ひとつだけでは足りない。ふたつがひとつになって初めて、新しいものが生まれることがわかったからだよ。また、ひとつの価値は、対極にある価値によって際立ち、互いがあることで意味が生まれるからなのだ。」 この言葉が物語の根底にある。 陽の当たる場所を歩めないものはどうすればいいのか。 心にあるのは憎しみだけなのか。 なぜ女であることが、これほど辛いのか。 同じ女なのに、光に恵まれるものと絶望の闇の中でしか生きられないものとに分けられるのはなぜ。 なぜ、なぜ、と繰り返す度に哀しみはどんどん深まる。 女だからこそ、私もイザナミの苦しさに気付いてしまう。 切なくてやりきれなくて、涙を流さずにはいられなかった。
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『東京島』から次は神話へという意識の動き方はよく分かる。『古事記』を底本として創作を加えているが、もうひとつこなれていない感じがした。
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