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巫女の民俗学 の商品レビュー

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2012/05/20

 この本で主題とされている「巫女」というのは、おおむね死者の霊を呼び寄せ(口寄せ)、自己の身体に憑依させて語りをおこなう一種の霊媒師である。江戸時代のおそらく後期辺りから出現し、この書物が書かれた1991年頃には「まだ東北地方にはたくさんいて、活躍している」状況だったようだ。今で...

 この本で主題とされている「巫女」というのは、おおむね死者の霊を呼び寄せ(口寄せ)、自己の身体に憑依させて語りをおこなう一種の霊媒師である。江戸時代のおそらく後期辺りから出現し、この書物が書かれた1991年頃には「まだ東北地方にはたくさんいて、活躍している」状況だったようだ。今でも少しはいるのだろうか?  なぜかこの職業は女性が多く、しかも盲目の方が多かったようだ。生まれつき見えなかったり、小児期に失明した女性は、按摩か巫女にでもなるしかなかったらしい。  途中、東北の巫女の実際の語りが引用されるが、極度の東北弁はさすがに読解がたいへんで辛かった。  それはさておいても、学問的には、この本はさほどしっかりかかれているという感じはしなかった。たとえば、「巫女」職の女性の比率とか、盲目者の比率などが載っていない。  それでも、訓練を経て憑霊能力をみにつけていく彼女らの生き様を詳しくえがいていて興味深かった。そういえば昔、テレビに宜保愛子さんという霊能力者がよく出ていたが、あの人は東北出身だったのだろうか?それとも、この「巫女」とは違う系譜なのか。その後どうしているのだろう。  現代ではこんな「非科学的なこと」は捨象されてしまいがちだが、著者は最後の方で、なるほど確からしいことを指摘している。 「口寄せでは、巫女は決して語りの主体ではない。語りの主体としては、先祖・ホトケを指定できるが、それは共同の心性によってかたどられてきたホトケというべきなのだ。・・・口寄せの場も、死者/巫女の語りを通じて、死者の体験を生者が共有し継承する装置だといえよう。」(P191)  このような共同体の装置を失ってしまった現在の社会は、死者の世界と隔絶することによって、かえって死そのものに取り憑かれてしまっているように見える。

Posted byブクログ