気づきの旅 の商品レビュー

小田島彩子【文・写真】

2018/03/05

中々日本人には出来ない体験ではないかと思います。フランスからスペインに入り、往復7週間かけて歩くのです。
最後に旅を終えた著者がどのような心境になるのか、を知りたい一心で読み進めました。
「カミーノに終わりはなく新しい人生の始まりなのだ」と言うその一言がじんと来ました。終わったあとの感覚も、「初めて気づかされたのではなく、昔から習っていた事を思い出しただけなのだ」…と、それはとてもリアルな感想だと思いました。
読み進めるうちに著者に寄り添い自分も歩いているかのような感覚に陥ります。忙しい職場を離れたばかりの彼女はくたくたで、仕事場の事を考えずにいられなかったのが、次第に美しい景色、過酷な自然、素朴な人々との日々のうちに無心に歩き続けるようになります。その時々に思い浮かんだ言葉を胸にとどめながら。
少し神秘的でもあり、霊的なものに敬虔な雰囲気のある著者は、まるで現代の修行僧のようでした。
装丁も中の写真も美しく、旅行ガイドでは決して知ることのないヨーロッパの原風景が感じられる本でした。
心につまづきを覚え、自分を見つめたくなったことは私にもあります。とても参考になり、読了後は静かで穏やかな気持ちになれました。