おいしい水 の商品レビュー
携帯電話もメールもないあの頃、会いたければ、 待つほかなかった。知りたければ、傷つくほか なかった。私は何ひとつ、あなたのことを 知らなかった…。80年代の神戸を舞台に、若い 恋の決定的瞬間をたどったラブストーリー。
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具体的な地名、具体的な作品名をうまく使う人だ。行ったことのない場所、見たことのない物、会ったことのない人が目に浮かぶようだ。朝露の雫のような、静かでミステリアスで草の香りが立つような小説だった。
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光の最中にいる時はその場所がどんなに明るいか気づかない、そこから遠ざかってみて初めてその輝きを悟る。自分がキラキラの19歳であること、その瞬間を神戸の街で生きている不思議、それでもその輝きにまだ気づかない主人公。短編だが空気感が丁寧に描写されていた話。
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高校生のとき、大学の下見で初めてここにやってきて、この電車に乗った。電車といえばオレンジ色や水色の明るく目立つ色、というのが子供の頃からの概念だった。あずき色の電車を一目見て、なんて野暮ったいんだろう、と思った。 でも、毎週末乗るようになってから、この電車をデザインした人を尊敬するようになった。なぜなら、明るい緑の六甲山を背景に、夙川や芦屋の川辺の桜並木を抜けるとき、あずき色は風景に完全に溶け込んでいるからだ。冬の枯れ木立ちのあいだにも、この色はしっくりくる。三宮のデパートのネオンですら、この電車によく映えていた。(p.9) 芦屋駅を通過する瞬間、反対側のドアを振りかえる。なだらかな街が海に向かって広がり、ずっと向こうの次回水平線が日差しに輝いて見える。やわらかい吐息のよいなジルベルトの歌声と、眠たくなるほど心地よいギターの響きが、ほんの一瞬、遠くの海と交差する。 毎週末、繰り返される密やかな儀式。電車と、街と、海と、ボサノバ。それを一度に味わっている私。 自分がまだ十代であること、その瞬間をあの街で生きている不思議を、それでもやっぱり、私は気づいていなかった。光のさなかにいるときは、その場所がどんなに明るいか気づかない。そこから遠ざかってみて初めて、その輝きを悟るのだ。(p.11)
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80年代の神戸を舞台に、19歳の女子大生<安西>(原田マハの分身)の儚くも淡い恋心を奏でるラブスト-リ-。元町駅近くの喫茶店「エビアン」で知り合った写真家の<べべ>、アルバイト先の「スチ-ル&モ-ション」のオーナ-<ナツコさん>、怖持ての貸しビルオ-ナ-<フクダ>(べべとは因縁の...
80年代の神戸を舞台に、19歳の女子大生<安西>(原田マハの分身)の儚くも淡い恋心を奏でるラブスト-リ-。元町駅近くの喫茶店「エビアン」で知り合った写真家の<べべ>、アルバイト先の「スチ-ル&モ-ション」のオーナ-<ナツコさん>、怖持ての貸しビルオ-ナ-<フクダ>(べべとは因縁の仲)、異国情緒の香る街の片隅で、男女四人のそれぞれの思惑が交差しあう時は流れて・・・。ほろ苦くも甘酸っぱい、あの頃の切ない青春の記憶が甦る。
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安西とべべとナツコさん。神戸で繰り広げられるおしゃれな恋物語、なのか。でも暴力団っぽい男にそれそれが支配されているところや、会話の軽妙な関西弁がリアルで面白い。そういえばナツコさんは、「本日はお日柄も良く」の妙齢のスピーチライターっぽいな。
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あっと言う間に読めました。 少し知っている街の空気感と、全体的にせつな気な、でも若々しい雰囲気はわりと好きです。 ところどころに挿まれる絵がそれを盛り上げるのも好印象。 でもやっぱり原田マハさんは美術作品や画家が真ん中にある作品が好きだなとも思いました。
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若者の青春と神戸の街がほろ苦く交わったシンプルなストーリー。 よく知っている街なだけに、情景がよく浮かびちょっとした違う楽しみも味わえた。
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とても不思議なストーリーだった。 だけど、全編オシャレな雰囲気。 場所が神戸、写真がもたらす関係。 スラっとした美しい男性と女子大生。 たまにダークさも秘め、でもフワッとポエムのような思い出の世界。 それと合わせたイラストが写真のような美しさ。 薄い本だけど上質な世界が広がって...
とても不思議なストーリーだった。 だけど、全編オシャレな雰囲気。 場所が神戸、写真がもたらす関係。 スラっとした美しい男性と女子大生。 たまにダークさも秘め、でもフワッとポエムのような思い出の世界。 それと合わせたイラストが写真のような美しさ。 薄い本だけど上質な世界が広がってました。
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図書館の本 読了 内容(「BOOK」データベースより) あの頃、誰かを好きになると、世界が、変わる。―若い恋の“決定的瞬間”をたどったラブストーリー。 想像していた通りというか、このかたちは他の女性作家さんの方が好きかなぁ。 やっぱりこの作家さんは絵画が絡む方がすてきだと思う。 写真はちょっと違ったかも。
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