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暗い旅 の商品レビュー

3.5

24件のお客様レビュー

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2024/07/26
  • ネタバレ

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 毎年夏になると読みたくなる。倉橋由美子は海を書くのがうまい。この小説は二人称で書かれた珍しいもので、作中の文章は『私は足をはやめる』ではなく『あなたは足をはやめる』と、まるで読者の身にそのまま何かが起こったかのように書かれる。  これは『あなた』という一人の若い女性が、少女から一人の人間へ歩き出そうと、自分を縛る軛から自由へ旅立とうと、前に進もうとしている物語にも思える。 ⚠性加害の描写があります。これも主人公である『あなた』が体験した出来事として書かれるので、苦手な方は読むのをおすすめしません。

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2023/11/10

自分には肌の合わない感覚的なロマン作品だった。 二人称呼称と、過去へと断続的に行き来する構成は目新しいが、自己陶酔に満ちた作中人物の言動・想念は共感や理解とは程遠く、完全に閉じられた作品世界だった。

Posted byブクログ

2023/10/24

京都が舞台の本を読んでる。それも時代をさかのぼった作品。これも仏文学の香り濃厚。場面や人物像は理解できるがそのもっと奥に流れるもの、哲学的というか何というか、難しいと感じた。古いもの程奥深いかも。

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2023/06/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

何年かぶりの再読。目の眩む思いがする。半世紀以上前のこの小説は、今も純度の変わらない、甘美な劇薬である。死の影がこんなにも濃かったのかと驚く。 10代のはじめから、あなたは死と、その隣合せの快楽に取り憑かれている。死に憧れ続けるあなたは、かれと知り合い、愛を必死に探しながらも、エクスタシーの欲望から逃れられない。かれとの不思議な契約。かれ以外とあいする関係を持つ自由。あなたは、繰り返し少年を誘って仮死の快楽を手に入れる。常人の私には殺伐として言葉も出ない。 あなたと生きていきたいと希うかれは、あなたとのロマンチックな関係の創造を密かに夢見る。しかし、あなたはかれの希望を見殺しにする。かれは失踪する。私は、かれは死んでいないと思う。あるいはそう願う。かれは生きたいのである。ロマンチシズムを希う人間は、簡単にはそれを捨てられないのだから。 そして、死に魅せられ、愛のない行為に憑かれたあなたは、佐伯をも体良く仮死のレッスンに取り込んでいく。かれから解放され、あなたは、無辺の快楽を味わい尽くす恐ろしい自由を手に入れる。 しかし、である。なぜ、24歳の美しいあなたは、際限なく死に魅せられるのか。なぜ、世界と健全な関係を構築せず、内面を喰いあらそうとするのか。なぜ、あなたはかれをあいし、愛せないのか。それは、倉橋由美子への疑問でもある。1961年、戦後から16年、高度成長期に入った当時、26歳の若き倉橋は、なぜ、死に憑かれた小説を構想したのか。 閃光するフラッシュバックの残像に、絶望と死の影が舞う。バタイユの世界を60年代初期の華やかさで包んだ小説は、私を暗闇に誘い、死のエロティシズムで絡め取る。この本を抱いて快楽の底に落ちてみたいくらいだ。私は死ぬまでこの本を手離さないだろう。

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2022/08/11

突如疾走を遂げた婚約者を探し求めて京都への旅立ちと愛の追憶を描く恋愛叙事詩。二人称で語られる物語の主人公は読者である「あなた」。倉橋氏の作家としての圧倒的文才は強く伝わってくるものの、作品としては好き嫌いが分かれるであろう。当時としては裕福な学生である西洋かぶれの「あなた」と「か...

突如疾走を遂げた婚約者を探し求めて京都への旅立ちと愛の追憶を描く恋愛叙事詩。二人称で語られる物語の主人公は読者である「あなた」。倉橋氏の作家としての圧倒的文才は強く伝わってくるものの、作品としては好き嫌いが分かれるであろう。当時としては裕福な学生である西洋かぶれの「あなた」と「かれ」の鼻につく会話、自己陶酔的な行動の数々。段落が変わるたびに心移ろい相反する言行不一致な主人公。特に佐伯との一幕は意味不明。「かれ」は実在したのか?本当に失踪なのか?も疑わしいほど不安定。今でいう「メンヘラ」の独白と深層心理を読んでいるような感覚。作品としては個人的に好きではないが惹き込まれる文章に☆4つ。

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2017/10/14

主人公はとても繊細な感性の持ち主で、自分でもそう自覚している描写が多いけど、全部読みきってみれば、なんだかんだ言って彼を探して京都に旅だったり、そこから新たな発見をして次の旅に出たりと、案外図太い神経の持ち主だなと思った。死をほのめかしている癖に中々死なない、絶望を抱えながら絶望...

主人公はとても繊細な感性の持ち主で、自分でもそう自覚している描写が多いけど、全部読みきってみれば、なんだかんだ言って彼を探して京都に旅だったり、そこから新たな発見をして次の旅に出たりと、案外図太い神経の持ち主だなと思った。死をほのめかしている癖に中々死なない、絶望を抱えながら絶望と共に生きて行く主人公からはある種の「逞しさ」を感じた。主人公に感情移入できないところは多々あったし好きにはなれなかったけど、感心するところはあった。

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2016/07/13

倉橋由美子氏(1935.10.10~2005.6.10 享年69)の「暗い旅」(1961.10)を一読しました。平松洋子さんと小川洋子さんの対談エッセイ「洋子さんの本棚」で紹介されていて、手に取りました。初読み作家さんです。女性の空虚な愛と性についての物語で、著者の若き日の輝きが...

倉橋由美子氏(1935.10.10~2005.6.10 享年69)の「暗い旅」(1961.10)を一読しました。平松洋子さんと小川洋子さんの対談エッセイ「洋子さんの本棚」で紹介されていて、手に取りました。初読み作家さんです。女性の空虚な愛と性についての物語で、著者の若き日の輝きが示されているとの鹿島田真希さんの解説がありますが、私には観念的すぎるのか、想像力の乏しさからか、難しい内容でした。

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2018/11/07

婚約者が行方不明になった女性が、お互いの家があった鎌倉と、学生時代を過ごした京都をさまよう3日間が描かれている。 その間に回想が挟まれている。 悲観的なムードが漂っていて、とにかく暗い。 二人称で書かれていることにより客観的な印象を与える。 文章はとにかく美しく、内容に勝ってい...

婚約者が行方不明になった女性が、お互いの家があった鎌倉と、学生時代を過ごした京都をさまよう3日間が描かれている。 その間に回想が挟まれている。 悲観的なムードが漂っていて、とにかく暗い。 二人称で書かれていることにより客観的な印象を与える。 文章はとにかく美しく、内容に勝っている。

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2015/08/30

「あなた」と「かれ」の二人称で綴られている。わかったようなわからなかったような。1961年にこの作品が出ていたというのは凄いと思う。

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2015/04/17
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※このレビューにはネタバレを含みます

“あなた”は失踪した“かれ”を探している。濃厚な、もう事実といってもいいようなかれの死のを思いながら。かれとの思い出の地や、かれとの愛の思い出を反芻し、歩き、絶望に慣れていこうとしている。あなたの向かうものが実は“死”ではないと、あなたがそれから逃げていることを察してから、京都への旅は意味を持ち始めていく。再生などしないからこそ、生きていける現実に、あなたは自然の微笑みを浮かべているのだろう。 文章が、初めての形だったけれどものすごく好み。贈られた本だったのだけれど、贈ってくれた彼女にお礼の手紙を書き始めよう。

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