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創造都市・横浜の戦略 の商品レビュー

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2024/09/19

横浜は、377万人の人口で、政令指定都市では一番人口が多い。創造都市は、30万人ほどの人口で成り立つ場合が多いが、これだけの大きな人口で創造都市のリーダーとしての役割を果たしているのは興味深い。  著者は、1951年福岡生まれ。早稲田大学を出て、1978年に横浜市に就職した。その...

横浜は、377万人の人口で、政令指定都市では一番人口が多い。創造都市は、30万人ほどの人口で成り立つ場合が多いが、これだけの大きな人口で創造都市のリーダーとしての役割を果たしているのは興味深い。  著者は、1951年福岡生まれ。早稲田大学を出て、1978年に横浜市に就職した。その時の市長が、革新自治体として牽引した飛鳥田市長(1963ー1978)だった。本書によれば、「でもしか職員」だったという。飛鳥田市長は、1963年に当選して、「子供を大切にする市政」「誰でも住みたくなる都市づくり」の二つのスローガンを掲げ「近代的市民生活優先」「民主的平等」「公共的計画性」「主体的自治」の4原則に沿った市政を開始した。「まちづくり」という言葉を普及させた。市民との直接対話を求め「一万人集会」を行い、ワイワイガヤガヤと論議した。市政をリードする企画調整局があり、市長のブレーン的な存在として、鳴海正泰、田村明がいた。田村は「国際文化都市」をコンセプトにして、事業提案をして、それが横浜市の6大事業(①都心部強化、②金沢地先埋立、③港北ニュータウン、④高速道路、⑤地下鉄、⑥ベイブリッジ)が市の政策となった。タテワリ主義ではなく、字自体が独自の立場で総合的な企画力、プロデュース力を持つことが、強力に横浜市を変えることができた。企画調整局が市のエンジンとなった。(これは、重要だね。結局今の自治体はエンジンが存在しないのが多いのだ)。その中で重要なのは、アーバンデザイン。都市デザインの目標として①安全快適な歩行者空間、②人と人のふれあえる場、コミュニケーションの場を増やす、③街の形態的、視覚的美しさ、④地域の自然特徴を大切にする、⑤緑やオープンスペース、⑥海、川、池などの水辺空間、⑦地域の歴史的、文化的遺産を大切に。このデザインの考え方は、今の時代にも通用する。それが60年前に取り組まれていたことが、今日の横浜のかたちを作ったと言える。先見性がある。  つまり、著者は、創造都市は、飛鳥田市政がその基盤を作ったと考察している。  創造都市をつくっていく場合には、その都市にあったデザインとエンジンがいるのだ。 著者は、成人教育の分野での活躍をするが、尖った講義を組み立てていく。確かに、その講師陣はすごいメンバーだ。参加したくなる。その後、官僚の天下り市長で、ぼちぼちとなるが、2003年中田市長の登場で、大きく横浜市は創造都市に進み、著者がその推進力となる。  中田市長は、「ニューパブリックマネージメント」の手法を取り入れていた。著者はネーミングライツみたいなやり方については賛成していない。アートの担い手を、市民とし、NPOがその中心になることによって、横浜市のアートを広げていくことになった。市役所のやるべきことは、創造の場を確保することで、市民の自発的活動によって支えられることが重要だとしている。行政と市民の役割分担がきちんとできていることが、アートマネージメントできる人たちによって、より進んでいった。  2004年に、「文化芸術創造都市ークリエイティブシティ・ヨコハマの形成に向けて」によって、創造都市の方向性が決まる。①アーティスト・クリエイターが住みたくなる創造環境の実現、②創造的産業クラスター形成による経済の活性化、③魅力ある地域資源の活用、④市民が主導する文化芸術創造都市づくり。が基本目標となった。創造界隈(この言葉が、妖しく、クリエイティブだ)、映像文化とし、アートパークが形成される。  歴史的遺産の建築物を保存するだけでなく、活用する。ハコモノを作らずに、オープンスペースでの劇の演出。とんがった演劇。  でもしか職員が、ワクを外れた職員となり、ワクを外れた文化を作る。  その中で、創造とは、インプロビゼーション(即興)が必要と説く。ふーむ。お役所には、インプロビゼーションは難しいなぁ。その中で、BankArt 1929が生まれる。単機能、鑑賞型でない文化施設、複合機能(コンプレックス)、創造型として作られ、市民の力で担われた。  そこでの成功が、連鎖的に広がっていく。なるほどねぇ。創造都市としての仕掛けができれば、それで広がっていくのだ。  創造都市横浜の挑戦は、都市デザインとエンジン、そして、創造の場を作ることによって、大きく飛躍してく。そして、その創造の場で、クリエイティブな人たちが育成されていくのだ。  創造都市を実践的に取り組んできたがゆえに、説得力のある本だった。

Posted byブクログ

2014/09/21

勢いのある前のめりな都市開発が落ち着き、むしろ荒廃に差し掛かる時からこそ、物理的な無理を必要としない文化による都市の開発が有効だ。と、本書は訴えているような気がした。行政の長や政策などの成功PR的な話はさておき、長期的かつ順を追って文化を都市に浸透させていく手法は、これから老いを...

勢いのある前のめりな都市開発が落ち着き、むしろ荒廃に差し掛かる時からこそ、物理的な無理を必要としない文化による都市の開発が有効だ。と、本書は訴えているような気がした。行政の長や政策などの成功PR的な話はさておき、長期的かつ順を追って文化を都市に浸透させていく手法は、これから老いを経験し始める新興都市に必要なエッセンスだと思う。非常に優れた書籍だとは言い難いが、十分参考になり得る手引書です。

Posted byブクログ

2014/06/23

横浜市の取り組んできた創造都市戦略がよくまとめられている。また、横浜市の政策変遷も分かり、関係者は読むべきではないか?

Posted byブクログ

2011/02/26

創造階級が多く住み、創造産業が集積しており、他の地域に対して、芸術、文化、科学技術といった創造性の分野で比較優位を持つ都市が創造都市。

Posted byブクログ