日本近代と戦争(3) の商品レビュー
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1986年刊。 著者略歴として、 工藤美知尋は日本大学法学部専任講師(ワシントン、ロンドン軍縮会議)。 桑田悦は防衛大学校講師(元教授。戦前の陸軍軍縮論)。 飯村繁は元内閣調査室調査官、元波蘭・芬蘭大使館書記官(軍縮の社会的・組織的影響)。 長谷川慶太郎はフリー(経済恐慌)。 板津直孚は駒場東邦高校現代社会・政治経済担当教諭(満州事変)。 高橋久志は防衛庁研究所戦史部教官(支那事変。ママ)。 上記の略歴の括弧内のテーマで各々が検討した書。全4巻中の3巻目。 備忘録。 ① ワシントン・ロンドン各軍縮会議で賑わせた対米7割に根拠なし。むしろ、海軍予算獲得(維持)目的。 ② 西太平洋上に米海軍の基地がなくなったことで、実際は米海軍からは条約反対の声高し。理由は根拠地なしに西太平洋で日本海軍と戦闘状態に入るのは負け戦だから。実際、トラックとサイパン陥落前は米軍の絶対的優位とは言えず(ミッドウェーは日本軍の驕りが招いた可能性高し)。 ③ 陸軍軍縮は下級士官を路頭に迷わす。給与も減る。ただし、これは同時期の海軍予算の必要性に引っ張られ、海陸予算分捕りに陸軍が負けた結果とも。 とはいえ、さらに実際はもっと人員削減し、ⅰ機械化予算へ回す、ⅱ下級士官の技術部門関連教育・転身を促す必要があった。 ④ 満州事変以後の国際収支の悪化(軍事物資の原材料の輸入増大、米その他の経済不況など生糸等主力輸出商品の低迷)と技術者不足。 ⑤ 1939年の国民一人当たりのGNPは日本93ドル。これは米独英の1/5、ソ連の2/3というレベル。 すなわち、波蘭・ユーゴ・エジプト並。 日本は精々、俗にいう中進国。技術者不足は勿論だが、決定的なのは社会資本の欠如。優先すべきは軍事ではなく、道路・水道・鉄道・発電所等であった。
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