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女坂 の商品レビュー

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31件のお客様レビュー

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三島由紀夫が賞賛した…

三島由紀夫が賞賛した作品。どろどろした人間模様、男の身勝手、女の悲しみと怨念に近い感情が描かれています。「私が死んでも決してお葬式など出してくだあるな・・・」のくだりに全てが集約されています。

文庫OFF

昔の男の身勝手さと、…

昔の男の身勝手さと、女の怖さがよく表れている作品です。一度読んでみると面白いかも。

文庫OFF

さすが、野間文芸賞受…

さすが、野間文芸賞受賞作だけあって明治時代を舞台に本当の愛を知らなかった悲しい女の生涯と怨念を長編で見事に描いている。

文庫OFF

2024/02/03

今のジェンダー観で言えばあり得ない世界観といえるがどこか身近に感じる作品。円地文子ならではの美しい文体や江戸文化が織り込まれているところもいい。登場する男たちの大半はとんでもなく、酷い男ばかり。倫の夫である、白川にしても何人の女と関係しても満たされず、ただ女を所有することで自分の...

今のジェンダー観で言えばあり得ない世界観といえるがどこか身近に感じる作品。円地文子ならではの美しい文体や江戸文化が織り込まれているところもいい。登場する男たちの大半はとんでもなく、酷い男ばかり。倫の夫である、白川にしても何人の女と関係しても満たされず、ただ女を所有することで自分の男としての価値を確認したいだけに感じた。性別は別として、他人をムダに管理、所有することで自分の集団内での価値や権限を確認したい人間に近いものを感じた。 また、倫と女たちの関係(正妻と妾、姑と嫁)は旧式なものなので仕方がないが加害者である白川ではなく、倫を憎む(しかしながら倫に庇護されているのだが)ことで成り立っている点も変わっていないと感じる部分。意識的にか無意識にか、本来に組まなくて良い筈の関係に対立軸や分断を煽るのはいまでも見られる手法。 わかりやすさ重視の社会の中でどれだけこの作品が受け入れられるか分からないが残ってる欲しい作品。

Posted byブクログ

2022/05/24

明治時代の封建的な社会において、女性の地位も権利もないに等しい中で生きていく女性たちの扱われ方は知ってはいたが、やはり悲惨だった。 正妻が夫の妾を選ぶなんて、一緒に暮らすなんて、夫が関係を持つ女も1人や2人なんてものではないなんて、、今では考えられない。江戸時代から明治になって急...

明治時代の封建的な社会において、女性の地位も権利もないに等しい中で生きていく女性たちの扱われ方は知ってはいたが、やはり悲惨だった。 正妻が夫の妾を選ぶなんて、一緒に暮らすなんて、夫が関係を持つ女も1人や2人なんてものではないなんて、、今では考えられない。江戸時代から明治になって急速に近代化が進み、激動な時代を経て現在があるのだと思うと自由に生きられる事が幸せだと思わなければバチがあたるのでしょう。 自分が選んだ妾に夫の手がかった時、夫を殺す夢まで見るほどの苦悩な様子は胸が痛くなる。 その後孫の代まで苦悩は続くが、倫理から外れた夫に対する愛情は失せ、心理が変化していく様子は辛いものがあったし、妾や嫁などの女性たちそれぞれの立場、気持ちや人生についても描かれており、女性の人権が確立している今に至るまでの女性たちの尽力もまた素晴らしいと思った。 妻の倫が死ぬ間際に『海へ私の身体をざんぶり捨ててください…』と夫に伝えた言葉は、耐え抜いた人生の最期のありったけの思いであり、壮絶な女の一生が描かれた名作でした。

Posted byブクログ

2021/06/17

 1957(昭和32)年の作品だが、描出される時代背景は明治なので、もっと古い小説のような錯覚に囚われる。読んでみると、「まさにザ・日本近代文学」という特長に満たされているのでますますそんな感じがする。  堅牢ですこぶる充実した文体が前面に押し出された、堂々たる近代文学。人物の過...

 1957(昭和32)年の作品だが、描出される時代背景は明治なので、もっと古い小説のような錯覚に囚われる。読んでみると、「まさにザ・日本近代文学」という特長に満たされているのでますますそんな感じがする。  堅牢ですこぶる充実した文体が前面に押し出された、堂々たる近代文学。人物の過去や微妙なニュアンスが個々の文に重厚に込められており、これを十分に味わい尽くすのがこの作品の醍醐味だ。とにかく改行だらけであまり「描写」に重きを置かない今日の小説文化とはまったく異なっていて、読書にもスピード感がひたすら求められる余裕のなさ過ぎる現代人にとっては、こんな濃密な文体はきっと拒絶されることだろう。そう考えると、失われた文学性というものがとても惜しく感じられる。  物語は、日本の近代的な家父長制において虐げられる女性たちの状況や心情を追って進んで行く。地方官吏である夫行友は自由民権運動を弾圧することに喜びを覚えているらしい権力者で、ふんぞり返っている上にやたらと女癖が悪い。妻である倫(とも)が、彼が自宅で囲う妾を見つけるために上京するという場面で小説は始まる。そんないびつな立場と夫に嫌悪をおぼえながらも自ら「殉じている」といった風な女主人公の意識の移ろいが、物語の時制の中でふらふらと浮いている。  この時代の女性たちは反抗を封じられていて、男尊女卑の色濃い社会システムがもたらす女性の内面の軋轢は昭和を通して貫かれ、現在でさえその傾向は生きている。物語としての本作はそのような観点から興味を持たれるものであろう。  最後の方で雪の降る坂を登りつつ、老いた女性主人公が苦渋に満ちた人生を振り返りつつ、絶望せずに坂を登るのだ、闇の果てに明るい世界がきっとあるのだ、と独りごちる場面が唐突な明白さで記述される。しかし彼女は、自身が忍従してきたことに意味がなかったわけではない、と強いて考えている。自ら-隷従するという権力を支えるシステムに人生を費やした人間のアンビバレンツな心情が「問い」として提起されている。  本作は途中で妾となった須賀などの他の女性の心情の微妙さも掘り出されており、作品の重み・深みがいっそう増している。これが映画化されたとしても(映画化されていそうだが、知らない)、それはまあ、別物になるだろう。それは本作がとにかく「文章」の充溢によって成立しているからだ。  そのような「文学」というものの技芸が失われてしまった現代社会の心細さが、何とも痛切に感じられてくる。

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2021/05/26

円地 文子(1905年(明治38年)10月2日 - 1986年(昭和61年)11月14日)は,日本の小説家。江戸末期の頽廃的な耽美文芸の影響を受け,抑圧された女の業や執念を描いて古典的妖艶美に到達。戦後の女流文壇の第一人者として高く評価された。『源氏物語』の翻訳でも知られる。 ...

円地 文子(1905年(明治38年)10月2日 - 1986年(昭和61年)11月14日)は,日本の小説家。江戸末期の頽廃的な耽美文芸の影響を受け,抑圧された女の業や執念を描いて古典的妖艶美に到達。戦後の女流文壇の第一人者として高く評価された。『源氏物語』の翻訳でも知られる。 「女坂」は1957年3月角川書店刊,第10回野間文芸賞受賞作である。"The Waving Years"の題で英訳(1980年)されてもいる。 一般的に,「家」という倫理(制度)に対して耐え忍ぶほかのない女の一生について書かれた作品と解釈される。中にはストイシズムを指摘する感想もあって面白い。 何も女に限らず,男もまた「家」の維持装置に過ぎない。それは「家族」へと変容しつつある現代でも,そう大きくは変わらない。 文学の持つ力というのは厄介で,世代を超える呪詛を実現してしまうことも多々ある。明治という改革の時代より,現代に至り華やかな記憶だけが選別される中で,ひっそりと伝播する怨念が本作の魅力なのだろう。

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2021/04/02

カテゴリ:図書館企画展示 2020年度第3回図書館企画展示 「大学生に読んでほしい本」 第2弾!  本学教員から本学学生の皆さんに「ぜひ学生時代に読んでほしい!」という図書の推薦に係る展示です。  川津誠教授(日本語日本文学科)からのおすすめ図書を展示しています。  展示中の図...

カテゴリ:図書館企画展示 2020年度第3回図書館企画展示 「大学生に読んでほしい本」 第2弾!  本学教員から本学学生の皆さんに「ぜひ学生時代に読んでほしい!」という図書の推薦に係る展示です。  川津誠教授(日本語日本文学科)からのおすすめ図書を展示しています。  展示中の図書は借りることができますので、どうぞお早めにご来館ください。

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2020/09/30

名作小説。 何が名作かというと、著者の流麗かつ知的な語り口が最高。無駄のない完成された文体。しかし著者は出しゃばらない。「人々の口から口へひっそりと話されていた名流一族の内幕」を小説化したという。自動筆記のように流れるがままに描いたようなドライブ感が凄い。 妻妾同居という異常な...

名作小説。 何が名作かというと、著者の流麗かつ知的な語り口が最高。無駄のない完成された文体。しかし著者は出しゃばらない。「人々の口から口へひっそりと話されていた名流一族の内幕」を小説化したという。自動筆記のように流れるがままに描いたようなドライブ感が凄い。 妻妾同居という異常な家庭環境の中での抑圧された女たちの半世紀、異常なのだけれど、一見華やかなライフスタイル。庭園を散歩する娘、妻、妾たちは、あたかも錦絵のようだと端からはため息をつかれるほどの美しさ。 明治〜大正の江戸情緒残る喋りや振る舞い、女たちの装束の描写も板について、美しい映画を見るようで酔いしれてしまう。 奴隷のように女性を扱うおぞましい世界でありながら、美しい。 

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2020/09/24

2020.9 表現が豊かでその世界にどっぷりはまった。少し前の時代。家や男が絶対で女の人には今のような自由はなかった。波乱万丈な人生に翻弄されつつ生きる女の精神的な強さが描かれる。制限のある時代だからこその諦めやしたたかさや温かさ。時代物が読まれる理由がわかった。ドラマティックな...

2020.9 表現が豊かでその世界にどっぷりはまった。少し前の時代。家や男が絶対で女の人には今のような自由はなかった。波乱万丈な人生に翻弄されつつ生きる女の精神的な強さが描かれる。制限のある時代だからこその諦めやしたたかさや温かさ。時代物が読まれる理由がわかった。ドラマティックなんだ。

Posted byブクログ